ランチの誘いすら頑なに拒否。“コミュニケーション拒絶社員”が辿った顛末

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コロナ禍では多くの企業が感染予防策の一環として自粛や禁止を通達していた社員同士の飲食。なかには飲み会だけでなく昼食も対象としていた会社もあったが、現在ではそれもほぼ解除。オフィス街の飲食店では、職場の同僚や部下などのグループで訪れるコロナ前の光景が戻っている。◆同僚を拒絶するように振舞う後輩
大下佳也さん(仮名・46歳)が勤めるプラスチック部品メーカーには社員食堂がなく、お昼は同僚たちと会社近くの食堂などで済ますことが多いとのこと。ところが、5年前に新卒採用で入社した営業部のNさんは、彼からの昼食のお誘いを辞退。ほかの同僚や同期入社の社員たちが誘っても一貫して断り続けていたという。
「彼が在籍する営業部とは席が隣で、私も何度か誘ったのですが『結構です』って。弁当持参でもないし、コンビニで買って済ましているわけでもない。彼もお昼は外に食べに行くんです。私やほかの社員たちだって1人でランチする日もあるし、それ自体はおかしなことではありません。ただ、断るにしても申し訳そうにする感じは一切なく、むしろ拒絶しているように見えました」
◆店で声をかけるも相席を拒否
会社はオフィス街にあるので飲食店は多いが、時には同じ店で鉢合わせになることも。ある時、近く中華料理屋に行くと2人掛けのテーブルに1人で座っているNさんを発見。大下さんも1人だったので「ここ、いい?」と尋ねたが、このときも「一人で食べたいので」とまさかの拒否。予想外の展開にさすがの彼も驚いたそうだ。
◆勤務態度は真面目なんだけど…
「四半世紀近く会社員をやってきましたが、ああいうタイプは初めて見ました。自分たちと違って若い世代は仕事とプライベートをきっちり分け、仕事終わりの飲みにケーションを嫌がる人も多いですが、そんなレベルじゃないですよいね。なにより彼の場合、営業マンなのに協調性なさすぎだろって(苦笑)」
Nさんは新人ながらデスクワークのスピードは入社3~4年目の社員と遜色なく勤務態度もいたって真面目。周りからは即戦力だと評価されるも打ち解ける様子は見えず、部署の上司から再三にわたってコミュニケーションを取るように言われていたとか。
◆雑談に加わることも皆無
そのたびに本人は「わかりました」と返事はするものの、場を和ますようなちょっとした雑談に加わることも皆無。唯一、新入社員歓迎の飲み会には出席したが、そのときもほとんど喋ることはなかったそうだ。
「あまりしつこくするのは逆効果に思えましたし、一歩間違えばパワハラと受け取られかねません。みんなそこに注意しながら対応したつもりでしたが、入社からしばらく経っても彼は部署内で浮いたまま。営業部の課長は頭を抱えてましたよ」
そんな中、Nさんが問題を起こしてしまう。取引先で打ち合わせを終えた後、先方の担当者から「この後、食事でもどうですか?」と誘われるが、彼はここでも当たり前のように拒否。同行していた先輩社員が「次の予定があるので……」とフォローを入れて事なきを得たが、この件は社内で問題視されてしまう。
◆会食の提案に「行きたくありません」
「直接見ていたわけではないですが、どうも『行きたくありません』とはっきり言っちゃったようです。普通は断るにしても断り方ってありますよね。報告を受けた課長が咎めたそうですが、彼は『取引先だろうと昼食に付き合う義理はない!』って猛反論。部長が間に入って諌めようとしても不服そうな態度を変えませんでした」
以前からのまったくコミュニケーションを取ろうとしなかった点なども含め、会社側は彼の営業マンとしての適性を疑問視。結局、入社2か月で内勤部署への異動の内示を通達されてしまう。
◆試用期間を終える前に退職…
だが、この措置にNさんは納得せずに辞表を提出。結局、試用期間を終える6月末に会社を辞めてしまったそうだ。
「最後は部署の連中も腫れ物に触るような態度で、必要最低限以外のことは一切話しかけない状態。当然、送別会もなかったです。社員の適正をきちんと見極めなかったウチの会社も問題かもしれませんが、そもそも営業部への配属を望んだのは彼。なぜ誰かと昼食を取ることを頑なに拒むのかはわかりませんが、あんな調子ではどの会社でも苦労するかもしれませんね」
会社の上司や同僚、取引先の担当者もあくまで仕事上の付き合いで馴れ合う必要はない。とはいえ、仕事を円滑に進めるためにはコミュニケーションが不可欠。特に営業職ならほかの部署以上にその重要性を理解しているはずなのだが……。
<TEXT/トシタカマサ>

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。