静岡大と浜松医大の再編混迷 …「猛省を促す」浜松市長が静大学長の非難連発 行政や経済界もまきこんで【静岡発】

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ともに国立の静岡大学と浜松医科大学の再編が、混迷の度合いを深めている。早期の実現をめざす浜松側は行政や経済界が中心になって“応援団”の期成同盟会を立ち上げた。静岡側は、大学も市も期成同盟会に反対だ。再編をめぐり、浜松市長が静岡大の学長を辛辣な言葉でたびたび非難するなど対立が目立つ。
静岡市は人口69万人の県庁所在地で、静岡大学静岡キャンパスには人文社会科学部、教育学部、農学部などがある。一方、浜松市は人口79万人、世界的企業のスズキやヤマハの本社がある産業の街だ。県内唯一の医大の浜松医科大学があるほか、静岡大学浜松キャンパスには工学部や情報学部がある。工学部は、“テレビの父” と言われる高柳健次郎氏がテレビジョンの研究をした伝統の学部だ。
この2つの国立大学の再編の話が持ち上がったのは2019年。連携を深めて地域への貢献力強化や、経営の効率化などが狙いだ。とくに医学と工学の連携による研究成果など、浜松の期待は大きい。
2つの大学は、2019年に「運営法人を統合し大学を再編する」ことで合意したが、静岡大学側が「地元の理解を得られていない」などと難色を示し延期された。
こうした中、2023年3月2日、浜松市と経済界が計画の早期実現を目指し、周辺の自治体や経済団体などに参加を呼びかけて、期成同盟会を立ち上げた。
発足式には12の自治体が参加し、スズキの鈴木修相談役など経済界の重鎮が顔をそろえた。
浜松市・鈴木 康友 市長:すでに昨年この大学は開学をしているはずだった。子供たちの夢を壊し、就学・教育の機会を奪った。これが許せません。これを見過ごしている静大の学長に猛省を促したい
式には浜松医科大学の今野学長や、静岡大学で推進派の川田副学長(浜松キャンパス)も出席し、計画実現への思いを語った。
静岡大学・川田 善正 副学長:浜松キャンパスでは今回の再編を早期に実現し、自立・独立した形で大学運営を行っていくことを多くの人が望んでおります。少しでも早期に皆様のご期待に応えることができますよう、より一層努力してまいりたいと思います
一方、静岡市の田辺信宏市長は発足式に先立つ定例記者会見で浜松側の動きについて質問され、「両大学で決めるべき」と期成同盟会を非難している。
これに対し、浜松市の鈴木市長は「すでに大学同士の意思決定は終わっている。一刻も早く、計画を進めてほしいだけ」と話す。
これまでの経緯を確認しておこう。
静岡大学と浜松医科大学は2019年、「運営法人を1つに統合し、静岡大学静岡キャンパスを中心とする大学と、静岡大学浜松キャンパスと浜松医科大を統合した大学の2校に再編する」ことに合意した。合意では2023年度から新しい大学で新入生を受け入れる予定だった。
しかし、一部の学部が浜松側に移り“学部が減る”形となる静岡大学の一部の教職員から 反対の声があがった。そして2021年1月 静岡大学が「地元の理解が得られていない」などと難色を示し、2つの大学は計画の延期を発表した。
さらに2022年7月、静岡大学の日詰学長が「1法人とともに1大学への統合を目指す」とする私案を示した。2019年に両大学で合意した「1法人2大学」とは異なる内容だ。この学長の私案に対し、浜松市の鈴木市長は「天につばを吐くような話」と痛烈に非難した。
浜松市などは当初の合意内容である「1法人2大学」への再編の早期実現を目指しているが、日詰学長は「1法人1大学」を目指し、「大学の将来を決める重要な問題で、じっくり議論していきたい」と主張している。
期成同盟会の発足で再編の動きに変化が出るのだろうか。県民は、静岡と浜松の垣根を超えて、県全体のためになるような議論を期待している。
(テレビ静岡)

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