船底に15cmの亀裂、損傷は10カ所超 巡視船「えちご」座礁事故

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18日朝に新潟県柏崎市の椎谷鼻灯台沖で新潟海上保安部所属の巡視船「えちご」(3100トン、全長約105メートル)が座礁した事故で、第9管区海上保安本部は27日、船底と左舷を中心に10カ所以上の損傷が確認されたことを明らかにした。船体はすでに応急修理を終え、早ければ今月末に県外の造船所の修理ドックにえい航されるという。【露木陽介】
巡視船座礁、過失往来危険疑いで調査 海保長官 「損傷の状況から主に左舷側が岩礁に乗り上げ、波などの影響で揺さぶられて岩礁に何度もぶつかったのではないかと推測する」。9管の長谷川真琴総務部長は同日、記者会見でこう述べた。

9管によると、船外の損傷は、左舷側船底に広範囲の擦過痕▽船底中央部にある船速計測装置(音波ログ)の格納部の亀裂▽左舷のフィンスタビライザー(横揺れ防止装置)の脱落▽船体後部の舵のへこみ▽スクリュープロペラの破損または切断――などを確認。船内はエンジン室と発電機・ポンプ室の間にある隔壁にゆがみが生じていた。 浸水の原因については、船底中央部で見つかった長さ約15センチの亀裂と推定。船速計測装置が船底に飛び出す形になっている部分で、座礁の衝撃で周囲より強い力がかかったとみられる。亀裂をセメントなどで埋める応急修理をしたという。 フィンスタビライザーは長さ約3メートル、幅約1・5メートル、厚さ0・5メートルほどの鉄板で、板の角度を波に合わせて上下に動かし横揺れを軽減させる装置。船外の左右両舷に前後2枚ずつ計4枚が設置され、このうち左舷の2枚が脱落した。船体後部に2基あるスクリュープロペラは、4枚ずつある羽のうち左側は2枚が切断されており、右側は4枚全てが曲がっていた。 えちごは柏崎沖の海上を巡回中だった18日朝、椎谷鼻灯台の灯火が消えているのを発見し、調べるため接近したところ岩礁に乗り上げた。航行不能となり、民間のサルベージ会社のタグボートにえい航され、20日、新潟西港に着岸。21日に修理業者の潜水調査、24日からは応急修理が行われた。修理する造船会社が決まり次第、ドックにえい航される予定となっている。 座礁事故は船体と岩礁の位置関係の確認を怠ったことや、風速11メートルのやや強い風に押し流されたことが原因の可能性があるとされ、9管は事故原因の究明を進めるとともに、業務上過失往来危険容疑で捜査している。前田直喜船長ら33人の乗組員は現在は船上の業務を離れているという。仙台海難審判所が調査 「重要案件」申し立ても視野に 海保巡視船「えちご」の座礁事故について、国土交通省の特別の機関である仙台地方海難審判所が調査に着手した。「重要な案件」と捉え、担当理事官を県内へ派遣するなどし、乗組員の過失の有無、程度などを調べる。最終的に行政処分が必要と判断すれば海難審判の申し立てを行う。 今後、業務上過失往来危険容疑で捜査をしている第9管区海上保安本部と並行して調査を進め、9管から資料の提出を受けるほか、乗組員への聞き取りなども行う。 調査の結果、理事官が処分が必要と判断した場合は、海難審判を開始するよう海難審判所に申し立てる。その際、事故当事者で船長や航海士など海技免許保有者は受審人として出廷することになり、裁判官に当たる審判官による審理で業務停止や戒告などの行政処分が裁決される。 一方、再発防止に向けて勧告などを行う国交省の運輸安全委員会の仙台事務所も、事故調査官を今後派遣し、座礁事故について調査を開始する方針。【露木陽介】
「損傷の状況から主に左舷側が岩礁に乗り上げ、波などの影響で揺さぶられて岩礁に何度もぶつかったのではないかと推測する」。9管の長谷川真琴総務部長は同日、記者会見でこう述べた。
9管によると、船外の損傷は、左舷側船底に広範囲の擦過痕▽船底中央部にある船速計測装置(音波ログ)の格納部の亀裂▽左舷のフィンスタビライザー(横揺れ防止装置)の脱落▽船体後部の舵のへこみ▽スクリュープロペラの破損または切断――などを確認。船内はエンジン室と発電機・ポンプ室の間にある隔壁にゆがみが生じていた。
浸水の原因については、船底中央部で見つかった長さ約15センチの亀裂と推定。船速計測装置が船底に飛び出す形になっている部分で、座礁の衝撃で周囲より強い力がかかったとみられる。亀裂をセメントなどで埋める応急修理をしたという。
フィンスタビライザーは長さ約3メートル、幅約1・5メートル、厚さ0・5メートルほどの鉄板で、板の角度を波に合わせて上下に動かし横揺れを軽減させる装置。船外の左右両舷に前後2枚ずつ計4枚が設置され、このうち左舷の2枚が脱落した。船体後部に2基あるスクリュープロペラは、4枚ずつある羽のうち左側は2枚が切断されており、右側は4枚全てが曲がっていた。
えちごは柏崎沖の海上を巡回中だった18日朝、椎谷鼻灯台の灯火が消えているのを発見し、調べるため接近したところ岩礁に乗り上げた。航行不能となり、民間のサルベージ会社のタグボートにえい航され、20日、新潟西港に着岸。21日に修理業者の潜水調査、24日からは応急修理が行われた。修理する造船会社が決まり次第、ドックにえい航される予定となっている。
座礁事故は船体と岩礁の位置関係の確認を怠ったことや、風速11メートルのやや強い風に押し流されたことが原因の可能性があるとされ、9管は事故原因の究明を進めるとともに、業務上過失往来危険容疑で捜査している。前田直喜船長ら33人の乗組員は現在は船上の業務を離れているという。
仙台海難審判所が調査 「重要案件」申し立ても視野に
海保巡視船「えちご」の座礁事故について、国土交通省の特別の機関である仙台地方海難審判所が調査に着手した。「重要な案件」と捉え、担当理事官を県内へ派遣するなどし、乗組員の過失の有無、程度などを調べる。最終的に行政処分が必要と判断すれば海難審判の申し立てを行う。
今後、業務上過失往来危険容疑で捜査をしている第9管区海上保安本部と並行して調査を進め、9管から資料の提出を受けるほか、乗組員への聞き取りなども行う。
調査の結果、理事官が処分が必要と判断した場合は、海難審判を開始するよう海難審判所に申し立てる。その際、事故当事者で船長や航海士など海技免許保有者は受審人として出廷することになり、裁判官に当たる審判官による審理で業務停止や戒告などの行政処分が裁決される。
一方、再発防止に向けて勧告などを行う国交省の運輸安全委員会の仙台事務所も、事故調査官を今後派遣し、座礁事故について調査を開始する方針。【露木陽介】

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