「生理的に無理」と感じる心理、その正体は? 心理カウンセラーに聞いてみた

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はっきりとした理由や原因を説明するのは難しいけれど、相手に対して何となく「無理だ…」「受け付けない」と感じ、遠ざけた経験があるという人、実は多いのではないでしょうか。「理由がうまく言えないけど、苦手意識は自覚できる感じ」「一度、そう感じてしまうと交流するのが苦痛になる」「説明できないのに苦手というのが、ちょっと申し訳ない気もするけど…」など、さまざまな本音が聞かれますが、その心理についてつかみきれていない人も少なくないようです。
「生理的に無理」と感じる心理とは、どのようなものなのでしょうか。その正体について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。
Q.ずばり、「生理的に無理」とは、どういう心理から来るものなのでしょうか。
小日向さん「この心理は、大まかに『衛生面』『文化・道徳概念』『出産リスク』の3つに大分できます。
まず、不潔な人に生理的嫌悪を感じる人は多いと思いますが、これは『衛生面』からの理由です。病気や感染症をもらってしまうと自身の命を脅かす要因になるため、嫌悪を感じます。
次に『文化・道徳概念』とは、その人が生きてきた文化や道徳観念から外れた人を嫌悪するというものです。全く異なる文化や道徳概念を持つ人とは、コミュニケーションが困難なことが多いため、対人衝突や不快を避ける意識が働きます。
最後の『出産リスク』は、女性が生涯で出産できる可能性が限られていることに起因します。限りがあるからこそ、より有利な遺伝子を選択したいと女性は本能的に感じ、そうでない人と選別するという意識が働くのです」
Q.「生理的に無理」と感じたとき、その理由や原因を“うまく説明できない”人も少なくないようですが、これはなぜだと思われますか。
小日向さん「『生理的に無理』という感覚を掘り下げていくと、自身が抱えているトラウマに向き合ったり、対人許容度などを認識する、変化させることに心理的苦痛を伴ったりする場合があるからではないかと考えます。例えば、性嫌悪を感じている人がその原因を突き詰めていくと、幼少期の傷つき体験と向き合うことになる、といったことがあります。全てがそうではありませんが、『理由を説明できない』ケースには、『誰かに説明するほど自身の内面を掘り下げたくない』という心理が働いている場合があると思います」
Q.心理において、「生理的に無理」と「嫌い」は同じものでしょうか。それとも、異なるものでしょうか。
小日向さん「異なるものではなく、『嫌い』というざっくりとした概念の中に『生理的に無理』という感覚が包括されていると考えます。『嫌い』という理由の中には、明確な理由があるものとないものがあり、ないものの方について『生理的に無理』という表現をしているのではないでしょうか。
ただし、実態としては嫌いになる理由はあるのに、『ないもの』として自分に認識させていることもあります。そのケースは、先述した『誰かに説明するほど自身の内面を掘り下げたくない』という心理の働きによるものと思います」
Q.対人コミュニケーションにおいて、相手に対し「生理的に無理」と感じやすい、また感じさせやすい人の特徴はあるのでしょうか。
小日向さん「先述の『不潔な人』は、最も『生理的に無理』という感情を抱かせやすいといえます。不潔な状態は感染症や疾病リスクが高いため、そうした人の近くにいることは、自分自身の命のリスクも高くなるからです。
また、男性より女性の方が生理的嫌悪を感じることが多いといわれていますが、こちらも先述したように、女性は出産に伴うリスクがあるからです。人を含め、生命体には生存本能があります。そのため、『生命をよりよい状態で維持できないリスクはなるべく排除しよう』と行動するのは、一種の防衛だといえます。そういった意味では、反社会的な言動をする人も生理的嫌悪を抱かせやすいといえるでしょう」
Q.相手に対して「生理的に無理」と感じてしまった場合、どうするのがよいですか。
小日向さん「最も適切な対処方法は、その相手から距離を置くということです。本能的にリスクを感じている対象に、無理やり認知を変えて近づくことは、リスク管理の観点からもお勧めできません。
ただし、先述したように、生理的嫌悪感は自身のトラウマやなじんできた慣習に起因していることもあり、その場合は相手に原因はありません。露骨に嫌悪感を示すことは、当人に対して失礼にあたることがあるので、そこは十分に配慮した言動を心掛けることが大切です」

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