人気の「ムサコ」や湾岸エリアでも続々と…いま急増している「タワマン売春」とは何か?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

マンションの価格高騰が続いている昨今、人気エリアのタワーマンションともなれば1億円を超える物件もザラである。しかしいま、そんな成功者の証たるタワマンで、売春が横行しているという。情報の真偽を確かめるべく、筆者は客に扮して潜入を試みた。
タワマンの一室で売春を行っている業者の多くは、表向きは「店舗型メンズエステ」を名乗っている。そのうちの一軒のホームページを見てみると、肝心の住所が書かれていない。予約を入れると、都内一等地にあるタワマン高層階の部屋番号がメールで送られてきた。
1階エントランスのインターフォンで、指定された部屋番号を押す。「はーい、どうぞ」という女性の声とともに、重厚な自動扉が開いた。さらに2回オートロックをくぐり、エレベーターで指定の階へ。ドアフォンを押すと、裾の短いワンピースを着た30代半ばの女性が扉を開けた。モデルの長谷川潤を思わせる美女だ。
靴を脱いで部屋の中へ。1LDKの間取りにベッドやソファ、観葉植物が置かれているが、他に家具やテレビはなく、生活感は皆無だ。タワマンが誇る眺望も、閉め切られた厚いカーテンによって見ることができない。
彼女に「じゃあ、先にお金」と促され、1万5000円を手渡す。それを受け取りながら、彼女はこう言った。
「オプションどうします? 2万円で最後まで。1万円で手ね」
流暢な日本語だが、明らかに中国系と思われるアクセントだ。
「最後っていうのは何?」と水を向けると、「それは言えないよ」と濁したが、もはや言わずもがなだった。
こちらにその気がないとみるや、彼女は「ここに来てオプションしない人初めて」と急に顔を曇らせ、おざなりなマッサージを無言で60分続けたのだった。
「首都圏のタワマンの部屋で、性的サービスを提供している違法風俗業者は少なくとも10軒以上ある」
そう明かすのは、違法風俗専門の広告代理店経営者だ。そこには合理的な理由があるという。
「高級感や非日常感の演出ということもあるが、何重ものオートロックと防犯カメラ完備というタワマンのセキュリティの高さは、業者側にとっても安心。というのも、最近、被害にあっても警察に届けることのない違法風俗店を狙ったタタキ(強盗)が増えているから。また、警察の突然のガサ(家宅捜索)も、タワマンなら踏み込まれるまでに時間が稼げる」
さらに、違法風俗業者に部屋を貸すマンションオーナーにも事情がある。
「少し前にタワマンの部屋を購入して民泊として運用することが流行ったが、’18年の民泊新法による規制強化やコロナ禍で、闇民泊の営業がほぼ不可能になった。そうした元闇民泊のオーナーが、違法風俗業者に部屋を貸すことが多い。両者をマッチングする仲介業者もいる」(同前)
結果、武蔵小杉の「ムサコ」や、豊洲・有明などの湾岸エリアのタワマンでも、売春が横行しているというのだ。
数千万円のローンで買ったタワマンの隣の部屋で売春が行われているとしたら、たまったものではない。加藤・浅川法律事務所の加藤博太郎弁護士が言う。
「性的サービスのないメンズエステの開業には許可や届け出は不要です。しかし、多くの集合住宅ではマンション内でその手の営業を禁止する規約があるので、契約違反ということになる。また、売春や性的サービスを行っていた場合には、売春防止法違反や風営法違反に問われます」
それでも彼らを追い出すのは簡単ではない。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が話す。
「マンションが違法風俗の巣窟になっているなどという事実は、資産価値の低下につながるので、所有者は警察沙汰などにはしたがらない。違法風俗業者はそのことも計算に入れているのでしょう」
知らぬ間に入り込む違法風俗業者は、シロアリより厄介だ。
『FRIDAY』2022年12月30日号より
取材・文:奥窪優木(ライター)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。