「半グレ」専門部署、福岡県警が全国初の新設…「あえて組員にならず」暴対法対象外

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福岡県警は28日、暴力団対策法が適用されない「半グレ」と呼ばれる不良グループについて、取り締まりを専門に行う部署を来年1月に新設すると発表した。
暴力団の資金源を断つため、特殊詐欺などで暴力団と手を組む半グレの摘発を強化する。県警によると、半グレ対策を専門にした取締本部の設置は全国初という。
■230人態勢
発表によると、新設されるのは「準暴力団等集中取締本部」。来年1月18日、県警本部内に設置される。県警本部長をトップとし、暴力団や知能犯の捜査などに携わってきた約230人態勢。複数の特別捜査班が、半グレの実態把握や捜査にあたる。
捜査関係者によると、県警は昨年10月、違法な高金利の利息を受け取ったとして、特定危険指定暴力団「工藤会」(本部・北九州市)系で、福岡地区を拠点とする組が抱えていた半グレを出資法違反容疑で逮捕している。同県大牟田市に本部がある指定暴力団「浪川会」の傘下組織も半グレを抱え、特殊詐欺などで資金を得ているとみている。
県警幹部は「暴力団の壊滅には、配下の半グレの動向を把握して摘発し、資金源を断つ必要がある」と取締本部新設の狙いを語る。
■実態把握
指定暴力団の組員に対しては、暴力団対策法に基づき、飲食店などへのみかじめ料の要求などについて「中止命令」を出すことができる。都道府県の暴力団排除条例や民間契約の暴排条項により、住宅の賃借のほか、車の購入や携帯電話の契約も認められていない。
一方、一般人と組員の中間的な「グレーな存在」とされる半グレは、こうした規制の対象にはなっておらず、2000年代から勢力を伸ばしている。警察の内部資料によると、18年時点で23都府県の47グループに上っている。
東京・六本木や西麻布では、暴走族「関東連合」(解散)のOBグループが、芸能や風俗分野で資金を獲得し勢力を拡大。中国残留孤児2世らでつくる「チャイニーズドラゴン」も、薬物の密売や恐喝などで資金を得ている。大阪・ミナミでは約10年前から、格闘技団体出身の「アビス」のメンバーらが、違法な客引きや、ぼったくりを繰り返す飲食店を経営していた。
半グレによる集団での暴行、傷害なども各地で相次いでおり、ある捜査幹部は「暴対法の規制対象になっていないのに、やっていることは暴力団と同じ」と指摘する。
一方で、暴力団が組長をトップとするピラミッド型の組織であるのに対し、半グレは指揮命令系統が明確ではなく離合集散が繰り返されるため、暴力団よりも実態把握が難しいという。
取締本部はこうした半グレに関する情報を集約、分析して実態を解明し、摘発につなげる。
■摘発強化
捜査関係者によると、関東や関西の半グレは暴力団と手を組まずに活動することが多く、対立も見られるのに対し、福岡では暴力団の力が相対的に強いため、違法薬物の密売や特殊詐欺などで、半グレを配下に従えているという。
反社会勢力に詳しいノンフィクション作家の溝口敦さんは「半グレの若者たちは暴対法や暴排条例で金を得られずに苦しむのが分かっているので、あえて組員にはならない。暴力団も半グレを組員にせずに利用することで、暴対法の網を逃れて資金を得ている」と分析。「取締本部の設置で半グレの情報収集と摘発が進めば、暴力団の弱体化につながる」としている。

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