【山村 佳子】「中学受験失敗」した高3娘を追いつめる国立大卒母の言い分。私大卒父との「温度差」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

韓国の大ヒットドラマをリメイクした2024年夏の木曜ドラマ『スカイキャッスル』(テレビ朝日系木曜夜9時)は、超富裕層の住宅街に暮らす医師の妻たちが、自分の子どもを医学部に入れるために「なんでもやる」様子が出てくる。有利にするために高額の超優秀な講師を雇ったり、生徒会に当選するために同級生を脅したり……学ぶとはいったいどういうことなのか、子供の人生とはなにかを考えさせられるほど「ぞっとする」エンターテインメントだ。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん連載「探偵が見た家族の肖像」は、時代を反映した事例も多い。お盆の時期に振り返りたい記事から、ここ最近の時代を象徴しているもの、反響の大きかったものに最新情報を加えて再編集する短期集中連載。その第4回のテーマは「教育虐待」だ。
2022年12月に刊行後、ロングセラーとなっている『母という呪縛 娘という牢獄』は、2018年に母親を殺害して逮捕された事件において、被告の娘と何通もの往復書簡を交わした齋藤彩さんによるノンフィクションだ。この事件は娘が母親を殺害、遺体をバラバラにして遺棄したもので、その背景には壮絶な母親の教育虐待があったことが記されている。
小学校時代から成績優秀だった娘は、「生まれたころから医者にしようと思っていた」という母に、9浪してもなお、医学部の受験を強いられていた。
そこには、小学6年生のときに成績が下回って包丁を持ち出したことや、受験の末に入った中学・高校とずっと壮絶な暴力・暴言にさらされていたことも描かれている。
「教育虐待」は「子どものため」を思ってよりよい学校に入れたいという親の思いから始まることも多いだろう。しかし進学先を選ぶ子供の意思を無視し、自分の理想を押し付けるのは明らかに“虐待”だ。子供の人生は子供のもので、親が指示していいものではないことを忘れてはならないだろう。
こども家庭庁は児童虐待は以下の4種類に分類されると伝えている。
1) 身体的虐待
2) 性的虐待
3) ネグレクト
4) 心理的虐待
言葉による脅しや無視、暴力はすべて「虐待」だ。そしてそのような虐待は「親子関係」にのみあるのではない。2023年も学校を舞台とした多くの性暴力事件が報じられた。教師が生徒を性的対象として扱うことも明らかに虐待だ。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「子供の思春期で夫婦関係が変わり、浮気につながる事例が増えています」と語る。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。時代を反映し、多くの人にとっての問題点もあぶりだすような案件を、個人が特定されないように加工してお伝えする連載「探偵が見た家族の肖像」。今回、山村さんのところに相談に来たのは47歳でバリバリのキャリアウーマンの円香さん。夫の浮気調査の依頼だが、高校生のお嬢さんのことで泣きながら話を始めたという。
山村佳子
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリング経験を持つ探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
「もう、ウチは家族がバラバラなんです」と深夜に泣きながら電話をくださった、依頼者・円香さん(47歳)。話を伺っていると、高校3年生の娘が担任の先生と結婚したいと言っていること、夫との家庭内別居生活について堰を切ったように話していました。30分ほど話を伺い、「明日、落ち着いてから伺います」とおっしゃって、電話を切りました。
朝、11時にパンツスーツ姿で髪を巻いた、エレガントなキャリアウーマンが、カウンセリングルームにやってきました。
円香さんは、猛勉強して国立大学に入ったこと、外資系の金融関連の仕事を続けていることをとうとうと話します。
「本当は私大に行きたかったんですけれど、家が貧乏だから国立しかムリだと。東京大学は無理だったので、安全を狙ってランクを落としたのですが、それだけが私の人生の後悔です」
だからこそ、娘を完璧に育てたかったそう。海外留学、海外ホームステイ、バレエや英会話のレッスンなどを娘にさせて、娘も楽しみながら成長したのだそう。
「でも……あの子が中学受験に失敗した頃から、反抗的な態度を取るようになったんです。教育実習にきた大学生と付き合い始めたのもこの頃。ほかの先生の車に乗って出かけた姿を見て、学校に乗り込ましたが“そんな事実はない”と門前払いされました。娘の生理周期や体の変化が気になってたまらなくなったころ、娘は“ママが作ったものが気持ち悪い”と言いだした。そして夫が作ったものを当てつけのように食べ、英会話教室も勝手に辞めてきたんです」
それに対して、円香さんは激怒。しかし、夫は「なるようになるからいいじゃない。選ばせてあげなよ」と見守っていたそうです。
「夫は私大出のメーカー勤務。私より収入も低くてゆるい。中学受験に失敗した現実をわかっていない。高校はいいところに行かせたくて、塾にも入れていたのに、まったくサボって家で寝ているんです」
当然、円香さんはと娘はぶつかり、娘を抱きかかえてむりやり学校に送ろうとしたこともあったのだそう。そういうときも、夫はのんきで「まあまあ」と言うだけ。お互いが28歳のときに結婚してから、ずっとそうなのだと言います。
夫は居心地が悪い家にあまりいないようになり、それまで毎日22時に帰宅していたのに、日付を超えて帰ることが増えていきます。都心にある自宅の近所に行きつけの飲み屋も増え、そこに娘も出入りするように。
「高校受験を控えた子が、3時や4時に帰ることもたまにあったんですよ。東京都青少年の健全な育成に関する条例 ってあるじゃないですか。あれにも違反しています」
たしかに都の条例では第15条の4に「保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後11時から翌日午前4時までの時間をいう)に青少年(18歳未満)を外出させないように努めなければならない」とあります。
その結果、娘は朝起きられず、高校受験も二次募集で底辺と言われる高校に行くようになったそうです。しかし底辺と言われる高校に行ったからといってそれが悪いとは言い切れません。実際娘さんは生き生きとするようになったそうなのです。
「中学校とは異なり、学校の雰囲気がゆるく楽しいようで、私との関係もよくなっていきました。底辺高とはいえ指定校推薦があり、学年でトップの娘は大学進学も早々に決定。まあ、大学といっても、行く意味がないバカ校ですよ。それなのに、卒業目前になって“高校を出たら先生と結婚したい。大学進学も辞める”って言い出して」
娘は担任教師と将来を誓っているとのこと。しかし、肉体関係の有無は完全になく、付き合っているかどうかの実態もわからなかったそうです。
「娘から“こんな家ではなく、私は先生と温かい家庭が作りたい”と言うんです。もう何なんだと。翌日から九州出張だったので、夫に言うと“俺が見ているから大丈夫だよ”といつになくニコニコして言うんです。いつもなら“了解”としか言わないのに」
そして、帰宅すると家がキレイになっている。洗面台に放置していた、空の歯磨きのチューブの山、トイレットペーパーの芯、バスルームの水垢やかび、キッチンの汚れも一掃されていたのです。
「娘がやったのかと思ったら、娘は何も言わずに部屋に閉じこもる。夫に聞いたら“家政婦さんに来てもらった”という」
以前は、夫は円香さんの出張中に、飲み屋さんの常連仲間とホームパーティをしていました。でもそれとは異なる雰囲気を不審に思い、夫が懇意にしている鰻屋さんに電話をすると、「3人分お届けしましたよ」と即答。
「夫と娘はうなぎが好きですが、私は苦手。私がいないときに食べているのを知っていました。いつも2人前なのに、3人前を頼んでいるということは、誰かが来ているってこと」
そして、デリバリーや高級ホテルの予約サイトの履歴を見ると、円香さんが出張に行くときに限って、2~3人で都内の高級ホテルに泊まったり、デリバリーで何らかの注文がされていたのです。
「それを夫に聞いたら、“うるせえやつだな。気づまりなんだよ”と以降は完全無視。家庭内別居のような状態になってしまったんです」
最近、夫は荷物をまとめたりして、家出の準備もしているそうです。
「夫は私立大学で、友達も多い。仲間がたくさんいるんです。でも国内メーカー勤務なので、私より収入が低い。私の稼ぎがあるから、都心のマンションも買えるし、いい生活もできているのに、今更出ていくなんて許せない。離婚を切り出されたときに、マンションをもらいたい。あいつの親が頭金を出しているけれど、私のモノにしたい。あと、私の貯金はびた一文渡さない。ほかにも、娘の親権など得たいものはたくさんあります。もし、離婚となった時に、優位に進められるように、証拠をつかんでください」
◇深夜に泣きながら電話をしてきた円香さんだが、「良かれと思って」娘の人生をコントロールしようとしてきたことは心配だ。また、娘が本当に先生と結婚したいというのであれば、もしかしたらそこに教師の性暴力がからんでいる可能性もある。円香さんはまず離婚を優位に進めることよりも、娘のことを心配する必要があるのではないだろうか。
果たして夫は本当に浮気をしているのか。そして「先生と結婚したい」という娘の実態は。調査結果とその後は後編「国立大卒女性の夫の浮気調査で判明、母が高3娘を「もう死にたい」と追いつめた過程」にて詳しくお伝えする。
国立大卒女性の夫の浮気調査で判明、母が高3娘を「もう死にたい」と追いつめた過程

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。