9月3日(火)よりNetflixで配信されているコメディシリーズ『トークサバイバー!ラスト・オブ・ラフ』。本格ドラマの最中にトーク合戦が始まり、面白くないと判断された敗者は即刻ドラマ降板となる、新感覚お笑いサバイバル番組です。
豪華キャストの中でもひときわ異彩を放っているのが、お笑いトリオ「ぱーてぃーちゃん」のツッコミ担当・すがちゃん最高No.1。
中学1年生のときに家族全員が家からいなくなり、12歳で一人暮らしをすることになったという、壮絶な半生も注目を集めていますが、“笑えない話”はなるべくマイルドにしていると公言していることもあり、語られたエピソードも実情はさらにリアルな生々しさ溢れる思い出だったのかもしれません。
【第四回】「ありえねーだろ!ずっと親父が家にいねーとか!」借金取りが家の窓ガラスを割り…『トークサバイバー』も出演の若手人気芸人が語る「壮絶すぎる」人生 に引き続き、すがちゃんの初エッセイ『中1、一人暮らし、意外とバレない』(ワニブックス刊)に未収録のスピンオフエピソードから、「カッケぇ」にこだわっていた一人の少年の切なくて笑える話を特別に紹介します。
夏休みの季節がやってきた。クラス中は大喜び! 当然俺も大喜び! ダルい授業を受けなくていい! が……夏休みになって数日たった頃……俺は絶望することとなる。
勉強ができる方じゃなかった俺にとって、授業は苦痛以外の何物でもなかった。が、学校は嫌いじゃなかった。むしろ好きですらあった。友達と遊べるのはもちろんのこと、何よりも学校が好きだったのは、給食があるからだ。
俺は給食をひたすら食った! もう嘘みたいにひたすら食った! 一人暮らしの俺にとって、給食は、ほぼ“節約”と同じだったのだ。
自分で作るよりも遥かにうまい食べ物を無料で、いや正確には無料ではないが給食費はかっちゃんが払ってくれていたから俺にとっては実質無料で食べられて、この給食で腹を満たしに満たしていれば、晩飯も大して食べたいと思わないので、晩飯代の節約にもなる。
だから、給食は食えるだけ食いたい。ちょっとでも米一粒でもスープ一雫でも多く食いたい。
のだが……ここで、大きな大きな問題にぶち当たる。
バカみたいに給食にガッついていたら、変なヤツに思われるんじゃないか問題、だ。
急にガッついて給食を食ってしまったらどうなるか。
菅野が給食を異常に食う→家でちゃんと食べられているのか心配される→一人暮らしがバレる。
これはマズい……! 中1にして一人暮らしをしていることを誰にもバレたくない俺にとって、給食をガッつくことは致命傷を負いかねない行為だった。
が、給食はなんとしても少しでも多く食べたい……! なんとか給食を少しでも多く食う方法はないものか……。
と、そこで一つの妙案を思いついた。その瞬間、俺は、
「フン……」
と、鼻を鳴らし、ニヒルに笑った。
俺カッケぇな! と思いながら。
俺が給食の時間で行ったのは、
“文化”
を、作ることだった。
「めっちゃ食うヤツってまじカッケぇよな!」
と、まず俺は、クラスの男子ども全員に“めっちゃ食うヤツがヒーロー”という意識を植え付けていった。
『TVチャンピオン』でやっている大食いを「すげーカッコよくねぇか!?」と言って回ったり、漫画でも悟空やルフィはめちゃめちゃ食うヤツだしな! と、こじつけたりして、とにかく
“大量に食えるヤツが一番カッケぇ!”
という意識をクラス中に植え付け、俺が給食をめっちゃ食っても変なヤツではないという“下地”を作っていったのだ。
次に行ったのは、ルール作りだ。
全部食い終わるまで、おかわり禁止。おかわりした数が多いヤツが一番カッケぇ、より早く、より多く食えたヤツが、今日のクラスの覇者! と、給食をゲーム化していった。
もう一つは、女子との物々交換だ。
俺には好き嫌いがない。いや、正確には好き嫌いなどしている余裕がない。
とにかく体を動かすためにより多くの栄養素を摂取する必要があった。好き嫌いなど贅沢なことを言っている場合ではないのだ。
そんな俺にとって、アイスやプリンなんかよりも、ひじきなどの副菜の方が遥かに優先順位が高い。だから俺は、自分の席の半径1メートル圏内の女子の好き嫌いを全て調べ上げ、把握し、嫌いなものが給食に出た日は、
「このアイスと、それ交換してくんねーか?」
と女子に申し出る。女子は喜んで俺におかずを差しだす。デザートまでもらえて大喜びの女子。次第に俺は女子の間でもヒーローとなっていく。
こうして俺は、給食めっちゃ食うヤツカッコいいヤツという文化を作ることに成功した。
クックック……! これでもはや、俺が大量に給食を食うことに疑問を持つ者は誰もいまい! 給食を大量に食うことを、食費の節約と思うヤツは誰もいまい! 完璧だ! 完璧な一人暮らし節約術だ!
……と思っていたのだが、問題が起こった。
そう……夏休みだ。
夏休みは当然、給食がない。
そして、そんな時に限って、食料倉庫の備蓄のほとんどが切れてしまった。
うちには、米や缶詰なんかが保管してある食料倉庫があって、そこにかっちゃんが残していってくれた米が大量に保管されていた。しかし、この夏、よりによって夏休みの給食のないタイミングで、米が底をつきた……。
あ、死んだわ。
と、中1にして、死を悟った。のだが、食料倉庫の奥の方からあるものが出てきた。
パスタだ。
なんとなくパスタがあることは知っていたのだが、中1の俺にはパスタをどう扱っていいか全くわからず持て余していた。
しかし、そうも言っていられない。俺はパスタに挑戦すべく、一袋手に取り、キッチンへと向かった。が、乾燥したパスタが茹でるとどのくらいの量になるのか想像もつかない。俺は、とりあえず一袋まるまる鍋にぶち込んでみた。
すると、パスタはバケモノみたいに膨れ上がる!
結果、とんでもない量のパスタが出来上がってしまった。
パスタ、怖ぇ……
と、思いつつ、とりあえずどうしていいかもわからないので、塩と胡椒をかけて食ってみる。当然美味いわけがない。
ミートソースという概念は知っていたものの、そんなものはうちにはない。とにかくそのバカみたいに大量にできてしまった不味いパスタを2日ほどかけて食うしかなかった。
早く夏休み終わってくれ……。
そう呟いた、中1男子の悲哀をわかっていただきたい。
が! 人間は、いや、俺はそんなに弱い生き物ではなかった。その後、食糧倉庫にあった、これまた持て余していたトマト缶をパスタにかけてみたり、それだけではまだ不味いので、トマト缶を皿に出し、レンジで温めてから、かけてみたり、それでもまだ微妙なので、豚こま肉とトマト缶を一緒に炒めたりなんかして、徐々に徐々に一歩ずつ進化を辿り、夏休みが終わる頃には、オリジナルのミートソースを作れるまでに成長していた。
人間は強い。
逆境は人間を強くする。
中1の夏休み、俺の自由研究は、俺を強くしたのだった。
【第一回】「実の父親と一緒に女性をナンパ」して…12歳で1人暮らしの「壮絶人生」をすがちゃん最高No.1が語る では、1人暮らしに至るまでの経緯をお読みいただけます。
「実の父親と一緒に女性をナンパ」して…12歳で1人暮らしの「壮絶人生」をすがちゃん最高No.1が語る