あまりに身勝手な犯行だった。
8月14日、警視庁新宿署は電車内で痴漢をして線路内に逃走したとして、東京都江戸川区のタクシー運転手、岩橋英治容疑者(61)を不同意わいせつと威力業務妨害の容疑で逮捕したと発表した。逮捕容疑は5月27日午前9時半ごろ、JR埼京線内で10代女性の身体を触るなどしたうえに、新宿駅のホームから線路内に降りて逃げ、電車の運行を妨害したというものだ。
「岩橋容疑者は埼京線の池袋~新宿間で10代の女性のスカートの中に手を入れるなどわいせつな行為をして、被害者や乗客らに取り押さえられてホームに降ろされました。その後、駅員に引き渡される際に、線路に飛び降りて逃走、さらに線路から4m下の地上に飛び降りて逃げようとしましたが、追いかけた駅員に身柄を確保され、警察に引き渡されました。この騒動で電車の運行が17分間停止しています。
調べに対して岩橋容疑者はわいせつ行為について『池袋駅と新宿駅の間で、ミニスカートをはいた女性を狙って25歳ぐらいから痴漢を繰り返していた。女性が嫌がる姿を見てスリル、征服感を味わっていた』としながらも『どの程度触ったか覚えていない』と容疑を一部否認しています」(社会部記者)
また、線路内を逃走したことについては「線路は人がいないのでホームより走りやすかった」と供述しているという。岩橋容疑者は7月22日にも別の女性への痴漢を疑われて線路内に立ち入り、威力業務妨害容疑で逮捕されていた。JR新宿駅では6月から7月にかけて、痴漢を疑われた人物が線路に飛び降りて逃走するという事案が3件起こっている。岩橋容疑者のスマホからは女性を盗撮したとみられる画像が100枚以上見つかっており、警察では余罪を追及しているという。
鉄道の線路内に立ち入るとどのような罰則を受けるのか。アトム法律事務所の松井浩一郎弁護士は次のように語る。
「線路内に立ち入った行為に関しては、逮捕容疑通り威力業務妨害罪に問われると思われます。刑法に基づき、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、線路内に立ち入ることによって電車が遅延したり運行が停止した場合、その損害額は非常に大きくなる場合があり、鉄道会社が個人に対して損害賠償請求を行う可能性もあります」
それでも痴漢を疑われた人が、しばしば線路に降りてまで逃げようとする背景には、これまでの痴漢冤罪などの例から「弁解しようとして駅員室について行くと、まったく言い分を聞かれることなく警察を呼ばれて現行犯逮捕されてしまう。だからその場から立ち去るべき」だという意見が一部で広まっているからだと思われる。もし、痴漢を疑われてしまった場合はどうすればいいのか。
「逃げるという選択肢もありますが、逃げることで捜査官からの疑いが強くなる可能性があります。逃げ切れたとしても、後に捕まった場合、情状が悪化することもあります。そのため、私の感覚では、素直に立ち止まり、捜査に協力する姿勢を見せることが重要です。
名刺を置いてその場を去るという方法も考えられますが、基本的には捜査に協力することをお勧めします。確かに現行犯逮捕されるリスクはありますが、逃げることが必ずしも得策とは言えないでしょう。本当に痴漢行為をしていないのであれば、その後の捜査で無実が証明される可能性が高く、無理に逃げるよりも正々堂々と対応する方が良いと考えます」(松井弁護士)
岩橋容疑者の場合は正々堂々と対応できないから逃げたのかもしれない。それどころか騒ぎを大きくして、より多くの人に迷惑をかける結果になってしまったことは許されないものだろう。