キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん連載「探偵が見た家族の肖像」は、時代を反映した事例も多い。お盆の時期に振り返りたい記事から、ここ最近の時代を象徴しているもの、反響の大きかったものに最新情報を加えて再編集する短期集中連載。最終回のテーマは「お金」だ。
円安に物価高。金銭的な国民への打撃はかなり大きい。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」を見ると、過去10年の「一般労働者の賃金」月平均額の推移は以下のようになっている。
2014年 29万7700円
2015年 30万4000円
2016年 30万4000円
2017年 30万4300円
2018年 30万6200円
2019年 30万7700円
2020年 30万7700円
2021年 30万7400円
2022年 31万1800円
2023年 31万8300円
2001年が30万5800円でそれから2014年まで下がり続け、そこから微増したのち、6年間数千円単位の微増にとどまっていたのが、円安と物価高での平均賃金値上げの施策を受け、2022年の1.4%増に続いて2.1%の増加となっている。とはいえ、2023年の消費者物価指数は前年比3.2%増加であり、物価高に賃金アップがおいついていない状況だ。
高収入な人もいるが、彼らにとっても物価高や円安は深刻だ。むしろそれ相応の生活をしており、出費も多いため、大きな影響を受けることもある。
そんな、高所得者でありながら貯金ができないことを「高所得貧乏」という。
キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「高所得な人ほど、お金の使い方が荒かったり、気分転換目的に浮気をする傾向があります」と語る。彼女は離婚調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。この連載は、調査だけでなく、調査後の依頼者のケアまで行う山村氏が見た、現代家族の肖像でもある。今回相談に来たのは、まさに「高所得」を絵に書いたような弁護士夫婦。経営する弁護士事務所も順調な中、夫のお金の「使い方」で妻が激怒したのだという。それはどういうことなのか。
山村佳子
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリングを持つ女性探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
今回の依頼者は、45歳の英恵さん(仮名)。夫とともに弁護士事務所を経営しています。多くの会社の顧問をしており、たくさんの弁護士が所属。見た目もそれにふさわしく、1着100万円はするスーツをビシッと着こなし、さりげなく持っているバッグは200万円以上する入手困難な名品。それが自然に馴染んでおり、嫌味な雰囲気は全くありません。
「結婚15年になる45歳の夫について調べてほしいのです。ここ半年くらい、夫がとてもよそよそしくなりました。あんなに熱心だった子供たちの教育についても無関心になったのです」
夫は名門私立大学を卒業しています。そこで英恵さんと出会い、結婚しました。英恵さんは地方出身で、付属高校からその大学に進学しないと周囲の反応が異なることを知っていました。そこで中学校から2人の子供を付属校に入学させたそうです。
「家族一丸となって頑張って、お姉ちゃんだけでなく、下の息子も合格した。校友会組織の結束が固く、夫はコロナであろうとなかろうと、飲み会や学校イベントなどに積極的に関わっていました。それが、ここ半年くらいでぱったりと行かなくなってしまったんです」
夫の写真を見せていただくと、見た目が若く、柔らかい雰囲気のイケメンです。高身長でとてもモテそう。写真を拡大してみると、着ているジャージの裾にさりげなくハイブランドのロゴが光っています。それは入手困難なコラボデザインで、夫のセンスがいいことをお伝えしました。
「気付いてくれましたか! 夫がここまでオシャレになったのは、私がプロデュースしているからです。夫は苦労知らずで育ったアッパラパーで、司法試験には合格して弁護士を名乗ってはいますが、仕事が嫌い。あまりにも仕事をしないので、同じく弁護士の私が必死に働き事務所を立ち上げたのです」
英恵さんには経営センスがあり、みるみる事務所を拡大していきました。
「日本は男社会なので、女だとナメられる。私は表には一切出ずに、夫をトップに祭り上げて、経営や人事を仕切っています。だから夫は母校の活動や子供たちの教育に全力を尽くせたんですよ。その活動が営業にもつながっていた。今はそれもやらず遊びほうけているんです」
留守がちな夫にどこに行ったかを聞くと、「まあいいじゃない」とごまかす。争いを避けてやり過ごそうとするんだとか。
「絶対に嘘をついているんです。事務所も私が引き締めており、夫が甘いからうまく回っていたのに、そのスピードも減速し始めている。それでいて、最近金遣いが荒くなったんです。夫は典型的な“少年”で、腕時計と車が大好き。数年に1回は時計とクルマ(それぞれ1千万円以上)を買い替えていたのですが、最近はそこに買い物も加わりました」
もともと、社交にはお金を使っていたといいます。同級生との会合に行くのに、1本5万~10万円のシャンパンを持って行くのはしょっちゅうだったそう。
「収入が多ければ、出費も多い。夫は人にいい顔をする見栄っ張り。だから時計、車、洋服、飲食費とどんどんお金を使ってしまうんです」
英恵さんは自由にお金を使わせていたそうですが、この半年間の明細を見ると、以前よりも出費が爆増していることに気が付きました。
「カードの請求額が、50万円は増えているのです。それに、少ない貯金から100万円が消えていた。これは、子供たちの学費のためにプールしてあるので、ここに手を付けるというのは家族への裏切りを意味します」
英恵さんの口調はだんだん厳しくなっていきます。そして、「私は人間のいざこざを商売にしている弁護士だからわかります。この背景には、女がいる」と断言。
「教育費の使い込みは、本当に許せない。そこで、夫を強く叱ったら、“ごめんなさい”と言って、深ドラ(深夜のドライブ)に出てしまい、朝まで帰ってこなかったんです。そんなことは今までに絶対にありませんでした。夫は自宅(都心のタワマン)を愛しており、高層階から見える朝の風景を観ことが大好きなんです。そのために、実家にも泊まらないんですよ」
そこで、私たちに調査を依頼。英恵さんの事務所でも懇意にしている探偵事務所はあるのですが、私たちに依頼してくださったのは、料金が安いこと。
「事務所で依頼している探偵事務所は、元週刊誌の敏腕カメラマンなどがいて、証拠を撮ってくれるんですが、料金も高い。もともと、山村さんのコラムを読んでいたこともあり、お願いしたいと思いました」
そう言って、英恵さんが私たちの前に出したのは、コンビニと駐車場のレシート、飲食店の領収書のコピーと、夫のスケジュール表。これがあるだけで、調査はグッと楽になります。
「家族の貯金に手をつけたので、夫とは離婚します。山村さんに依頼したいのは、夫を有責配偶者にすることです。夫はラブホテルを使用しないですが、酒が入ると女性をベタベタ触ります。密接なコミュニケーションを押さえてください」
◇弁護士でもある妻の怒りをかってしまった夫。証拠を押さえれば高額の慰謝料をとって離婚することは可能だろう。しかしなぜ夫は浮気をしたのか。そして妻はどうするのか。後編「弁護士夫婦の修羅場…子供の学費まで手をつけた浮気夫へ45歳妻の逆襲とその結末」にて詳しくお届けする。
子供の学費を…弁護士夫婦の修羅場、45歳妻が浮気夫に突きつけた意外な結論