「DVや経済DV、モラハラの被害は女性に多いですが、男性にも被害者はいます。彼の多くが声を上げられず、自分一人で抱え込み、苦しんでいることが多いです」と語るのは、浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の山村佳子さん。
近年は共働きのワンオペ育児、専業主婦(夫)への経済DVなど、さまざまなケースがあり、離婚をする人も多い。
2022年に内閣府が発表した『男女共同参画白書』によると、「過去の離婚の経験」をした50代女性は19.4%、60代女性は18.4%が過去に離婚経験がある。また、50~60代の独身女性の約半数に離婚経験がある。
一方、男性の離婚経験に着目すると、50代は13.3%、60代は12.9%と女性より少ない。また、50~60代の現在独身の男性の半数以上がこれまでに結婚したことがなかった。
加えて、「離婚可能性あり」と回答した人は、男女ともに約15%。「どちらともいえない」という回答も男女ともに約17%。一般的に「3組に1組が離婚する」と言われているが、それをデータが証明していた。ではなぜ離婚するのか。男性側から離婚する理由を見てみると、令和5年度版司法統計のデータによると、家裁への離婚申し立て理由の1位は男女ともに「性格があわない」(男性9103件、女性1万5838件)。男性側からの申し立て理由の2位は「異性関係」(1817件)、3位は「浪費する」(1748件)、4位「性的不調和」(1592件)、5位「暴力をふるう」(1320件)となっている。
山村佳子さんのもとに相談に来たのは、40歳の地方公務員・太朗さん。22歳のときに最初の結婚をし、現在17歳の息子を授かるも、息子が3歳のときに妻は別の男性と駆け落ちしてしまう。男手一人で育ててきたところ、5年前にいまの妻からの猛アプローチで結婚。妻は現在35歳、専業主婦をしており妊娠中だという。
前編「コロナの息子を放置…地方公務員男性が「妊娠するはずのない妻」の妊娠に涙を流す理由」では、太朗さんが卓抜した美貌ゆえに苦しむことが多かったことも伝えた。太朗さんは幼いころから痴漢などの性被害、恋愛トラブルに巻き込まれてきた。22歳のときに年上の先輩と結婚したが、子供が3歳のときにほかの男性と妻が恋に落ちて出て行ってしまう。傷ついた前の離婚のときに男性避妊のパイプカット(性管切除)手術をうけていた。つまり、妻は明らかに太朗さんとは別の男性の子供を腹に宿しているのだ。
妻とは居酒屋で知り合い彼女からのアプローチで結婚。妻は「ウソを本気で話す」気質がある。出会った当時は「外資系の金融会社に勤務している」と自称していたが、真っ赤な嘘だった。そこから苦しみが多い結婚生活が始まる。本気で離婚を意識したのは、2年前。息子がコロナになり高熱が続いた時に、妻は「ここで死ねば邪魔者がいなくなるね」と笑顔で言ったことだという。果たして妻の浮気の現状は。そして太朗さん父子はどうするのか。
23区郊外にある、太朗さんの自宅一戸建ての前で張り込みを開始。探偵を続けていて、トラブルがある家を何千件も見ているので、「この家は危ないな」という家のオーラがわかるようになってきました。
太朗さんの家は、その中でもかなり危険なレベル。玄関先までゴミがあふれており、傘などが堆積している。ガレージにはバーベキュー台やわけのわからない段ボールが積まれている。ものが多く散らかっている家は、浮気トラブルが起きやすい傾向があると改めて感じました。
朝から張り込みを続けて、妻が出てきたのは12時。太朗さんも人並み外れた美貌の持ち主ですが、妻もかなりすごい。実年齢は35歳ですが、どう見ても20代半ばにしか見えない。小柄で細く、ひと目でハイブランドだとわかるニットのワンピースを着ていました。
妻は駅までゆっくりと歩き、40分かけて六本木で下車。人気のネイルサロンに入っていきます。1時間後に出て来て、ゆっくりとショッピング。その後、都心のはずれにある実家に行き、朝まで出てきませんでした。
この実家もかなり大きな日本家屋で、ネットの地図で確認すると庭に池がありました。たいへんなお嬢様なので、甘やかされて育ったのか、それとも孤独だったのか……妻の問題がある性格が育った背景を想像してしまいました。
翌日の土曜日に、妻は昨日よりも目立たない格好をして、家から出てきました。清楚系のスタイルで、これもまた可愛らしい。
新宿にあるオシャレなカフェに入っていき、待っていた男性と談笑しています。会話を聞くと、この男性とは初対面で、マッチングアプリで知り合っている。
男性は医師をしており、高収入であることや、高級車を持っていることをしきりに妻にアピールしていました。妻は男性に微笑みかけて、男性の隣の席に移動し、体を密着させて手を握っている。
男性はとてもうれしそうにして、かなり興奮しているような状態でした。それから店を出て駐車場へ。そこにあったのは2000万円はくだらないドイツ車でした。私たちは慌ててタクシーを拾い、目立たない場所で待機。最初、タクシーの運転手さんは「探偵って人を不幸にする仕事だろう? 不幸の片棒は担ぎたくない」と言っていたのですが、事情を話すと「そりゃ人助けだ。どこまでも行くよ」と快く協力してくれました。
妻を乗せた車は横浜に新しくできた有名なホテルに入っていきました。ここまでの運転が荒く、ハラハラしてしまいました。おそらく男性は妻にいいところを見せようと、攻めの運転をしているのでしょう。
男性はランチの予約をしていたようで、グリルに入っていきます。ここは高級ホテルなのですが、部外者が入りやすい。レストランも空いており、運よく私たちもカウンターの近くの席に座ることができました。
妻は男性にしなだれかかり、「あーん」と食べさせている。男性はもうメロメロです。メインが出たあたりのところで、妻は「お手洗いに行ってくる」と店の外に出ます。私も追ったら、トイレを素通りしてホテルの外に出ていく。そしてタクシーを拾い、最寄り駅まで行って太朗さんと住む自宅に帰宅。なんと、男性の気持ちをもてあそんで楽しんでいたのです。
ペアの探偵が男性を見ていたのですが、妻がトイレに行った後、スタッフを呼び、デイユースの部屋を予約していたそうです。1時間以上妻を待っていましたが、いつまでも戻って来ないので状況を理解。お金を支払って帰宅していたそうです。
その翌日の日曜日は、自宅からジャージの上下というカジュアルなスタイルで出てきました。当然、ハイブランドのオシャレなジャージです。
最寄り駅の改札口で、キリッとした40歳くらいの男性と待ち合わせし、電車で新宿に移動。高級ホテルのカフェでお茶をしています。男性は妻のお腹を撫でていたので、おそらくこの人が父親なのでしょう。この支払は妻が行い、2人はタクシーで百貨店に移動。エンゲージリングを見ていました。男性もまたイケメンですが、お金がないらしく「僕は10万円くらいしか出せない」などと言っていました。
妻はずっとご機嫌で、繋いだ手を離さず、たまに男性の局部やお尻を触っています。そして歌舞伎町までぶらぶらと歩き、高級ラブホテルに入っていきました。会話から察するに、この男性も結婚しており妻とは別居中。妻とはあまりにも親しく、妻は彼を「先生」と呼んでいる。
名前の断片と、妻の出身学校から検索すると、この男性はITスキルの専門家で、妻が通っていた短大で教鞭を取っていた経歴があることがわかったのです。
夜20時に出てきた妻と男性は新宿駅で別れて、それぞれの自宅に帰宅。男性も実家に住んでいました。この男性の実家は埼玉県内にある西洋風のピカピカな大きな一軒家。実家のサポートで生活している妻の同類ということも分かったのです。
以上を依頼者・太朗さんに報告すると、妻のことよりも先に「ウチはこんなに汚いのですか……業者を入れて掃除します」と語っていました。実際に住んでいると、家の汚さはわからず、私たちの調査レポートを見て、それに気づく人は多いです。
そういう人の夫婦関係はほぼ末期になっていることが多いです。そして、妻は息を吸うように嘘をつき、演技も上手なので、太朗さんは弁護士に依頼。離婚に向かって進むことにしました。
それから1ヵ月後、太朗さんから「なんとか離婚できそうです」と明るい声で連絡がありました。「よかったですね」と言うと、「妻の妊娠もウソだったんです。迫真の演技でだまされていました。でも、なんでそんな無意味なことをするんだろう……」と語っていました。
相手の歓心を買うために、ウソをウソとも思わずに語る人と結婚してしまうと、周囲は翻弄されてしまいます。その見極めは、かなり難しい。ただし、ウソをつかないと自分が愛されないと感じてしまっている可能性もあります。妻がどのように育てられたのかわかりませんが、彼女のままを心から愛された経験はあるのでしょうか。心のケアが必要ではないでしょうか。
息子と太朗さんは再び親子としての絆を強めて、未来に向かって進むでしょう。妻が出て行ってから、自宅も明るくなり、息子の成績も伸びたと言います。家族の不和が子どもに与える影響は計り知れないと感じてしまいました。
コロナの息子を放置…地方公務員男性が「妊娠するはずのない妻」の妊娠に涙を流す理由