口は災いの元”でもあり、”万病の元”でもあります。「落ち舌」という、舌が落ちた状態になると、様々な病気にかかる可能性が…すずらん歯科矯正歯科理事長の照山裕子歯学博士に、舌の位置の重要性と、舌を鍛えるトレーニングについて教わります。
【写真を見る】実はこわい『落ち舌』 2人に1人傾向が…“正しい舌の位置”を保つ「グミ」を使ったトレーニングを歯科医が伝授【ひるおび】
「落ち舌」の正式名称は「低位舌(ていいぜつ)」。舌先が通常の人より下にある状態を指し、コロナ禍をきっかけに増加しています。
口を閉じているときに、舌の先はどこにありますか?正常な舌の位置は、舌が上あごについている状態です。逆に「落ち舌」は、舌が上あごから落ちている状態を指します。
すずらん歯科矯正歯科理事長 照山裕子歯科医:まず意識したことがないという方が多い。調べてみると半分ぐらいの方が舌がだらんと下がってるというデータもあります。まずはどの位置に舌を置いたらいいかを気にしてもらうことがスタートですね。
「ひるおび」でLINEアンケート(有効回答数:5407人)を行なったところ、Q.口を閉じた時の舌の位置は?という問いに対し「上あご・上前歯の裏」・・・51%「どこにもついていない」・・・15%「下あご・舌前歯の裏」・・・34%
「どこにもついていない」と「下あご・舌前歯の裏」を合わせると、49%。2人に1人が“落ち舌”気味という結果となりました。また、自分の舌を意識してないという人は7割に上り、「これが良いのか悪いのかわからない」といった回答もありました。
「落ち舌」による健康リスクは多岐にわたります。まず、舌の重みで口が開くことで、病気を呼び寄せる「口呼吸」の原因となります。いびき、睡眠時無呼吸症候群につながったり、風邪やインフルエンザ、アレルギー疾患のリスクが増えます。
照山裕子歯科医:鼻で吸って呼吸するという機能が損なわれてしまうので、いろいろなものを吸い込んでしまう。鼻呼吸だと鼻毛でいろいろな汚れやウイルス、ばい菌がカットできるんですけれども、口でダイレクトに呼吸することで病気の原因になります。
また「落ち舌」により、食べ物を飲み込んで胃へと送りこむまでの過程に障害がでるため誤嚥や低栄養にもつながります。他にも滑舌の悪さや二重あごの原因にもなります。
恵俊彰:「落ち舌」になってるってことは、舌の重みで口が開いちゃうってことなんだ。
照山裕子歯科医:しっかり閉じるということができなくなります。ポカーンとあいちゃう。舌を上に上げると自然と口が閉じてきます。舌を上につけたまま口を開けるのは結構難しいと思います。
「落ち舌」の原因としては以下の要因が挙げられます。◆幼少期からの口周りの筋肉の発達不足◆硬いものより柔らかいものを食べる頻度が多い◆マスクでの息苦しさで口を開けることが習慣になってしまった
照山裕子歯科医:よく最近言われているのが、小さい頃から柔らかい食べ物を食べて育っている方が多いので、口周りの筋肉がそもそも発達してないということです。また、体の中で老化が一番早いのが口だと言われています。早い人だと40代から口の機能が落ちていると言われていますので、口周りのケアが長生きの秘訣です。
舌の力があるかどうか、簡単にチェックする方法があります。用意するものは「グミ」。
グミを1粒口の中にふくみ、舌を使って力を入れずに、上前歯の歯茎の裏側に押しつけます。その状態を10秒キープできればOK。※のどに詰まらせないようご注意ください
照山裕子歯科医:上あごのところにつけることによって、舌がしっかりキープできているか、まず立ち上げる力があるかどうかを見るので、弱っている方だとこれでも結構しんどいという方もいます。
続いては、「落ち舌」にならないためのトレーニングをご紹介します。それが「かみかみリズム体操」。
ステップ1:舌のポジションをリセット〈1〉好みの硬さのグミ1粒を口に含み舌の上に乗せる〈2〉舌を使って、グミを上の歯茎の裏側にぐっと押しつけて10秒キープ
ステップ2:3・3・7拍子がみ〈1〉ステップ1のグミを左側の歯に持っていき3・3・7拍子のリズムで噛む〈2〉舌でグミを右側に持っていき、同様に3・3・7拍子のリズムで噛む飲み込める大きさになるまで〈1〉〈2〉を繰り返す※ゆっくり行なってください※のどに詰まらせないようご注意ください
照山裕子歯科医:「一口で30回噛みましょう」ってよく耳にすると思うんですね。やはりそのぐらい細かくすることで、体に負担をかけずに消化することができるというのも一つの目安なんです。途中で飲み込んでしまう方は「早飲み」の可能性があるので、頑張ってちっちゃくなるまで噛んでください。これが練習になります。こういうトレーニングを普段のおやつタイムなどに取り入れていただければと思います。
もう1粒用意して、今度は右側から噛み始めるようにすると、左右バランスよくトレーニングすることができます。
弁護士 八代英輝:2粒で同時にはできないんですか?
照山裕子歯科医:逆に誤嚥が起きてしまう可能性があるので1粒の方がいいです。グミもいろいろな硬さがあるので、自分の口の力に合わせて弾力を変えてみるのもいいですね。ただグミには糖質が含まれていますので、虫歯の心配もありますから、最後は必ずゆすいでいただくことも大事です。
ステップ3:毒出しうがいコップ一杯(120ml)の水を用意し、〈1〉水を口に含み上の歯に向けてクチュクチュと音が出るくらい、強く早くぶつける。10回ぶつけたら水を吐き出す〈2〉水を口に含み下の歯に向けて唇の下が膨らむくらい強くぶつける。10回ぶつけたら水を吐き出す〈3〉〈4〉同じように左奥歯・右奥歯にも頬が膨らむくらい水を強く10回ずつぶつける。
水は吐き出しても飲み込んでもOK。一日2回が目安で、お茶で行なっても大丈夫です。
照山裕子歯科医:これはちょっとあわててやっていただくぐらいでちょうどいいです。しっかりうがいするには、実は舌の力をキープしないとゆすげないんですよ。「洗い流す」+「口の機能を鍛える」いいトレーニングになりますので、ここまでセットでやっていただいて、お口の健康をキープしていただきたい。
照山医師によると、体操をする前と2週間後で計測したところ、8割の人の「噛む力」が増加したといいます。
口の周りにはいろいろな筋肉があるので、口全体のトレーニングをすることで血行が良くなり顔の老化防止にも繋がります。
照山裕子歯科医:皆さん気になる顔のたるみなども、口を鍛えることでしっかりお顔のハリが出ると言われています。口の機能はトレーニングでどんどん鍛えられる。これが大事なポイントです。虫歯や歯周病の予防も大事ですけれど、健康キープのためには口の体操も取り入れていただければと思います。
(ひるおび 2024年6月13日放送より)==========<プロフィール>照山裕子医師すずらん歯科矯正歯科理事長歯学博士「口の教科書」など著書多数