時速約35キロで自転車をこぎ、歩道の男性をはねて死なせた事故が昨年11月に発生した。
重過失致死罪で略式起訴された自転車の男性には先月、罰金70万円の略式命令が出された。山形県警は「自転車は自動車と同じく『車両』で、人身事故の加害者にもなりうる」と注意を呼びかける。(渡辺ひなの、岩峪諒)
■直前にブレーキ
事故は昨年11月7日未明、米沢市花沢町の県道で発生した。雨の中、会社の帰りに自転車に乗っていた男性(32)は、県道の橋の歩道部分を時速約35キロで走行し、歩いていた同市内の男性(当時59歳)を正面からはねた。はねられた男性は数メートル飛ばされ、頭を強く打ち死亡したという。
自転車の男性は重過失致死容疑で逮捕された。県内で自転車による人身事故での逮捕は初めてだった。
県警交通指導課や山形地検などによると、自転車はスポーツタイプの「クロスバイク」で、坂を下りながら橋を渡り終えるところだった。歩道の幅は広いところで約3・5メートルで、次第に狭くなっていた。
現場の歩道は自転車も通行可能な場所だった。その場合でも道路交通法では、歩道は歩行者優先であり、自転車には歩行者にぶつからないようにすぐに止まれる速度で走ることを求めている。だが、男性の自転車は猛スピードで走行し、ぶつかる直前にブレーキをかけたが間に合わなかったという。
■時速20キロで死亡も
日本自動車連盟(JAF)の実験によると、時速20キロの自転車と歩行者がぶつかると、歩行者は地面に頭を強く打ち、頭蓋骨骨折のけがを負う可能性が高いという。死に至る恐れもある。自転車に乗っている人も同様のけがをする危険があるという。
JAF山形支部の担当者は、昨年11月の事故は、実験をはるかに上回るスピードが出ていた上に、坂道で受け身も取りづらかったため、頭部に強い衝撃が加わったと分析する。
県警交通企画課によると、自転車が原因となった人身事故は昨年24件あった。近年は年間22~38件で推移しており、毎年、誰かが負傷している。同課の渡部真次管理官は「自転車による事故でも死亡につながる。基本的な交通ルールを守ってほしい」と注意を呼びかける。