元火葬場・葬儀屋職員の下駄華緒さんが、1万人のご遺体を見送ってきた経験を元に原作をつとめた『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(漫画:蓮古田二郎)が、重版を重ねるヒット作となっている。
2023年10月には『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常(3)』も発売され、衝撃的な内容がたびたびネットを中心に話題沸騰中だ。
3冊目にもなると、一般人がほとんど知らない火葬場のディープな内容まで紹介されている。下駄さんが「多くの人は自身が年老いてから亡くなると漠然と考えているが、この世に生を受ける前に亡くなってしまう命もあると知ってほしかった」と語るのは、「死産児の火葬」についてのエピソードだった。
「その日、朝一番の火葬は死産児で、訪れたのは女子高生とそのご両親でした。そして、なぜかその女子高生はチョコレートの小箱を大事そうに抱えていたのです」(下駄さん)
火葬場に似つかわしくないチョコレートの箱の秘密、それは……。
死産した子の柩だった。
この世に生まれなかった、妊娠4か月目(12週)以降に亡くなった赤ちゃんは死産児として扱われ、死産届を提出し、火葬を行う必要がある。
その場合、葬式はしない場合が多い。だから葬儀屋をはさまずに、直接自身で火葬に来る人も多いという。そのため、自分で柩の代わりになるものをみつけて、ご遺体を納めて火葬場までやってくるのだ。
「死産児の火葬は、基本的に近しい家族だけの場合が殆どです。カップルやご夫婦だけで来られる場合もあります」(下駄さん)
チョコレートの箱なんて粗末なものにどうして?と疑問に思う下駄さんだったが、死産児の柩に決められたルールはない。チョコレート自体は子供が好きなものだから、女子高生なりに亡くなった赤ちゃんのことを思って、一生懸命選んだのかもしれない。
かつて自身も死産を経験した同僚の堀田さんからは「親が子を思う気持ちは理屈ではない。この世に生を受けることが叶わなかった死産児の火葬も、親からすれば長年愛を積み重ねた大切な家族の火葬と同じ」と諭されたのだった。
『「赤ちゃんの骨が見つからない!」妊娠中の女性の火葬で起きた「ある異変」《元火葬場職員が明かす》』に続く…
「赤ちゃんの骨が見つからない!」妊娠中の女性の火葬で起きた「ある異変」《元火葬場職員が明かす》