与野党から「6月衆院解散」を意識した発言が活発化している。
自民党派閥の政治資金規正法違反事件を巡り、関係議員の処分が4日に行われたことで、再発防止策の規正法改正が今国会中に実現すれば、岸田首相が解散に踏み切るための環境が整うとの見方が広がっているためだ。
「与党内の協議は必要になるかもしれないが、できるだけ早く具体案を作り、この国会で改正案の成立を期したい」
自民の茂木幹事長は7日、静岡市内で記者団にこう強調した。首相が規正法改正に強い意欲を持っていることを踏まえたものだ。
解散に関する発言が相次いでいるのは、規正法改正などの政治改革に関し、首相が「国民の判断」に言及したことが大きい。
首相は安倍、二階両派の議員ら39人の処分を決めた4日、首相官邸で自らの処分を見送った理由を記者団から問われ、「私自身については政治改革に向けた取り組みをご覧いただいた上で、最終的には国民、党員に判断してもらう立場にある」と強調した。
自民党の片山さつき参院議員は7日のフジテレビ番組で、「(国民の声を聞く)車座対話を連日やっているが、厳しい声を感じたら、首相は何らかのことをするのではないか。選択肢には当然、解散する権利もある」と述べた。
立憲民主党の泉代表は7日、島根県出雲市で「解散をしないということは、国民にとって不幸なことだ」と記者団に指摘した。安住淳国会対策委員長は6日、宮崎市で「国民に判断してもらうと言ったんだから、解散・総選挙で信を問うてもらうしかない」と記者団に語った。
6月には所得税などの減税が始まることも、「解散説」の根拠となっている。
ただ、岸田内閣の支持率は低迷が続いており、公明党は「信頼回復のトレンドが確認できるまでは解散すべきではない」(山口代表)との立場で、今夏の解散をけん制している。
首相は得意の外交で支持率回復に努めたい考えとみられる。10日に米国でバイデン米大統領と首脳会談を行い、11日には上下両院合同会議で日本の首相として2015年4月の安倍晋三元首相以来、9年ぶりの演説に臨む予定だ。
もっとも外遊の浮揚効果は限定的なことが多く、安倍氏のケースでも15年5月の世論調査で支持率は横ばいだった。帰国後には、衆院東京15区などの3補欠選挙が控えており、その結果次第でさらに支持率は低下する可能性もある。
首相周辺は「外野の臆測とは裏腹に、首相はまず目の前の課題をこなすことに懸命で政局を考える余裕はない」と漏らした。