都心や人気の観光地では特に、外国人観光客の姿を見ない日はない。JTBの調査によれば、昨年に続き2024も訪日外国人の数が増加すると見られ、なんと過去最高の3310万人になると予測されている。2019年までのコロナ禍前を超える勢いの背景には、1ドル150円を超える歴史的な円安の影響もあるようだ。今日本の飲食業界では、訪日外国人客が多いエリアを中心にインバウンド向けの戦略を立てる飲食店も増えてきた。ラーメンや牛丼はファストフードだが、最近ではインバウンド向けに3000円前後の強気な価格で、食材や見栄えにこだわったメニューを用意する飲食店もある。この流れは、もともと「日本でしか食べられない」「日本ブランド」という付加価値がある高級食材の和牛でも同様のようだ。
止まることのないインバウンドの勢いに飲食業界が沸く中、SNSを中心に人気を集めている日本食YouTubeチャンネルがある。2017年に始動した「Momoka Japan」は、2024年3月現在、チャンネル登録者数85万人を超える人気チャンネルで、視聴したことがある、名前を知っているという人も多いだろう。道行く外国人観光客に声をかけて日本食店に案内し、一緒に食事を楽しむという構成の動画は、「仕込みなし」「台本なし」「一発撮り」の撮影をモットーにしており、外国人観光客の本当のリアクションが見られることが人気の理由のひとつだ。また、英語が堪能なMomokaさんとインタビュイーの外国人観光客とのやりとりは、関西出身のMomokaさんによって関西弁交じりに翻訳され、軽快でおもしろい。コメント欄には根強いファンも多く、「これから海外の観光客も増えるから、Momokaさん出番ですよ!」「食事前のMomokaさんとの会話って、貴重だと思う!日本人として、食を通じて国際的な和を広めてほしいです!」といった、これからもっと活躍を期待する声も多数見られる。
本記事では、和牛を食べてもらう動画を紹介する。現在600本を超える「Momoka Japan」の動画の中でも140万回再生された人気動画「【来日して良かった】生まれて初めての和牛に大感激!」だ。
この動画の中でMomokaさんのインタビューを受けたのは、ドイツから訪れた日本と日本食好きのティナさんと、ノルウェー出身のスティナさんの二人組。日本で1年暮らす予定だという。これまでに日本旅行をしたことはあるが住むのは初めてで、この日は暮らし始めて6日目だそう。
Momokaさんが好きな日本食をたずねると、ティナさんは餃子とカレー、スティナさんはとんかつを挙げた。日本食が好きだという二人にMomokaさんが勧めたのは、和牛のしゃぶしゃぶ。これはまだ二人とも食べたことがないようだ。
しゃぶしゃぶが食べられるお店に向かう道中、Momokaさんは日本の印象についてたずねた。スティナさんは「暑さ以外は完璧!日本は便利すぎる。ノルウェーにないものばかり」と話す。その言葉のとおり、しゃぶしゃぶ店があるビルの50階に到着すると、ここでも「ノルウェーに50階の建物はない」と笑う。Momokaさんが二人を連れて訪れたのは、新宿野村ビルにあるご飯処「土佐料理 祢保希(ねぼけ)」だ。ビル50階からは新宿の街を一望できる。二人はまずこの眺望に喜んでくれた。
料理の前に、スティナさんが好きだという梅酒で乾杯すると、梅酒を初めて飲んだらしいティナさんは「何これ、本当にお酒?飲みすぎちゃう」とうれしい反応。そしてしゃぶしゃぶの鍋や具材が運ばれてくると、A5ランクの黒毛和牛を見て「やっぱり日本食はレベチ」「すごい」と驚きの様子。まずはシンプルに和牛だけをしゃぶしゃぶして食べると、「雲を食べてる感じ」「火を通してるのに全然パサパサじゃない」と目を見張る。
その後は二人ともお肉に野菜に、とほとんど無言で食べ進める。おいしい食べ物に言葉はいらないのだ。二人は和牛のしゃぶしゃぶをとても気に入ってくれたようで、「しゃぶしゃぶに恋しちゃった」と初めてのしゃぶしゃぶに夢中で、シメのうどんまでおいしそうに食べてくれた。「こんなにとろけてジューシーなお肉だとは思わなかった」「星5つです!」と感激した様子の二人に、コメント欄には「美味しそうに喜んで食べてくれるのを見てるだけで、こっちまで幸せになる」「ほんとうにほっこりする」「ただ黙々と食べているのもリアリティがあって美味しさが伝わってくる!」といった感想が並ぶ。
Momokaさんは、二人が日本に住もうと思ったきっかけを聞く。ティナさんは、「子どものころから日本は私にとって夢の国。姉が日本好きで、兄弟で日本を愛している。日本がこの夏に開国すると聞いて、すぐにビザを申請した」と話す。「開国」とは、2022年夏の新型コロナウイルス感染症の水際対策緩和のことだろう。スティナさんも「2年前からずっとこの時を待ってた」「日本に来られない間は日本語を勉強した」という。ただ、せっかく勉強した日本語で日本人と会話したいスティナさんの気持ちに反して、日本人に日本語で話しかけると彼らは英語で返してくるのだという。これは訪日外国人あるあるだろう。
続いての話題は、日本を訪れて驚いたことだ。ティナさんは「全部がきちんと整備されている」ことを挙げた。「整備」されているというのは街や設備のことではなく、人だ。「日本人はきちんと列を作って並んで待つのがすごい」と、整然と並ぶ人の姿が印象的だったようだ。さらに、日本人のおもしろい習慣として「日傘」に注目した。ティナさんは「ドイツで日傘なんて見たことなかった!いい考えだと思うからドイツに持って帰りたい。ドイツの人たちに変な目で見られるかもしれないけど気にしない」と話す。
実は、意外にも日傘をさす習慣があるのは日本だけのようで、訪日外国人客が驚いた日本の暑さ対策として「日傘をさす」ことを挙げる人はかなり多い。日本では女性が使うものという印象が強かった日傘だが、近年では男性が利用する姿もよく目にするようになった。海外での紫外線対策は日焼け止めクリームなどが主流だが、日傘には紫外線だけでなく熱を遮る効果もある。今回スティナが初めに話したように、高温多湿な日本の夏の暑さは特別だ。実は、訪日外国人観光客向けに、日本庭園などの観光地で暑さ対策として日傘を貸し出す取り組みも存在する。また、訪日外国人観光客には和柄傘も人気で、日本でしか買えないという付加価値からお土産に選ぶ人も多いようだ。
今回、日本で暮らし始めて間もないティナさんの言葉から、普段日本で暮らしている私たちには何でもないことに思える習慣に、意外なインバウンド需要があることが見えた。
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