シェアリングサービスを利用したことはありますか?カーシェアやブランド品レンタル、民泊など色々なものがあります。その市場規模は2022年度は2兆6158億円でしたが、10年後の2032年度は15兆1165億円になると予測されています。
【写真を見る】腕時計が返ってこない…終了直前にキャンペーン? シェアサービスで16億円相当が未返却か【Nスタ解説】
今後、さらに利用者が増えていくと思われるこのシェアビジネス。今、耳を疑うトラブルが発生しています。
良原安美キャスター:今回、トラブルが発生した「トケマッチ」は2021年にスタートした「高級時計シェアサービス」です。

どんな仕組みになっているかというと、高級時計を借りたい利用者がトケマッチから時計を借ります。代わりにレンタル料を支払う。そして、この時計の持ち主がトケマッチに時計を預けていて、その代わりに預託料を毎月受け取っているというものなんです。
例えば、査定額30万円の時計ですと、(預託料は)毎月4900円。査定額150万円の時計ですと、毎月1万9900円を受け取れるということです。
では今回、なぜここでトラブルが発生してしまったのかみていきます。
近年、高級時計の取引価格が高騰しています。
例えば、ロレックスのオイスターパーペチュアル31というモデルは、定価約81万円のところ、買取価格は約130万円。ロレックスのコスモグラフデイトナというモデルは、定価約218万円のところ、買取価格495万円と、倍以上で取引されているモデルもあります。
なぜここまで価格が高騰しているのかというと、こんな背景があるといいます。人気モデルが品薄になっている。そこで、ブランドショップが高額で取引をします。これを知った転売目的の客がいるということで、価格高騰の連鎖が止まらないということなんです。
さらに、経済ジャーナリストの渋谷和宏さんに話を聞くと、「かつてはステータスの象徴だった高級時計も、現在は投資のアイテムとして考える人が多い」と指摘しています。
トケマッチを利用している会社員は、「子どもの将来のため投資や貯金をする」という目的でトケマッチに高級時計を預けました。10年ほど前に購入した約60万円のロレックスをトケマッチに預けて、月2万4900円の預託金を受け取っていたそうです。ただ、現在も返却はなく、連絡もつかないといいます。
トケマッチを運営している「ネオリバース」は、「返却は6か月を目安に手配している。返却が難しい場合は、損害賠償の金額をお支払いする」としていますが、現状、被害を訴えるグループの調査では、未返却の時計が730本、額にして16億円相当になるということなんです。
では、この返却されていない時計はどこに行ってしまったのか。
ロレックス15本(2000万円相当)を預けていた男性は、「ネットで検索したら、自分の時計と同じシリアル番号のものが売られていると判明した」ということでした。
ホラン千秋キャスター:本当に状況がわからないんですが、サービス終了で時計が返ってこないという状況で、利用者としては、そもそも手に入らない時計を買うよりも安価な料金で借りれるのであれば利用したいなという気持ちはわからなくはないんですが、会社としては、会社がこの時計を所有しているわけではないので、何かあったときに、会社としてはリスクがなく、このサービスを提供できるということがありますよね。
元競泳日本代表松田丈志さん:事業者側から見ればそういうメリットがあると思いますし、逆に、時計を預ける側からすると、むしろそこにリスクがあります。自分の大事な時計が返ってこないという事態になっているわけで、物をシェアするという考え方自体は、この持続可能な社会を作っていく上で大事だと思うんですが、この高級時計に関しては、そこに向いてなかったのかなと思っています。僕だったら高級時計は、一つのオリンピックが終わって、それで結果が出たからいい時計を買おうとか、そういう何か思い出が詰まったものなんですよ。だからこそ、ここに預けた人も売りたくないけれど、お金にできるんだったらと思ってこのサービスを利用したと思います。ただやっぱり、高級時計はビジネスモデルには向いてなかったのかなと感じますね。実際に転売されているとしたら。
ホランキャスター:取材にご協力いただいた方も、もし使わないのであれば、月々2万5000円くらいが手元に入ってくるとなると、1年で20万円以上になりますので、「じゃあ預けようかな」っていう気持ちもわからなくはないんですが、なぜこうなってしまったのか。
良原キャスター:私達も運営会社に取材を申し込みましたが、答えていただけませんでした。
さらに、トケマッチには不可解な点が他にもあるということです。サービスが終了したのが2024年1月31日でしたが、わずか2か月前の2023年11月、「ギフト券を贈呈する預託を募るキャンペーン」を行っていました。ロレックス15本預けていた男性は、「追加購入し預けたが、ギフト券ももらえていない」ということでした。
では、今後の展開はどうなっていくんでしょうか?
エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に話を聞くと、「時計の未返却が確定していない現時点で刑事上の問題が生じるわけではないが、サービスが破綻・レンタルの意図がない。隠して時計の引き渡しを受けていた場合、詐欺罪に。さらに、資金繰りのために時計を売却してしまった場合は、業務上横領罪が成立する可能性も今後出てくる」ということでした。