新宿・歌舞伎町と切っても切り離せないのは水商売だ。最近では悪徳ホスト問題など、水商売のあり方をめぐって様々な議論が行われているが、他にも問題は多くある。
それは歌舞伎町の低年齢化だ。夜の街で遊ぶ人の年齢層も下がってきているが、働いている側の年齢も下がり、ホスト、キャバクラで働く人の平均年齢が大きく下がったのだ。
若年化が進む歌舞伎町で働くようになった理由について当事者たちから話を聞くことにした。
20歳の元コンカフェ嬢、現役キャバ嬢Kさん(仮名)は理由をこう話す。
「元々20歳になったらコンカフェはやめてキャバクラに行くと決めていました。コンカフェだと、20歳はそんなに若くなくて、18歳とか普通にいますね。私は、昼は花屋で働いていますが、高校生っていう子もいると思います。昼の仕事の手取りは14万円でこれだけだと生活が苦しいからバイトとして夜の店で働くようになりました」
水商売で働く理由としては第一に金。彼女たちのような立場で、水商売ほどの高給を得られる仕事は多くない。普通のアルバイトを選んでも昼職終わりに数時間働くのであれば、キャバクラのような高時給の仕事は効率がいい。そして彼女が選んだのは時給4500円のキャバ嬢だ。
こうした金以外の理由についても他のキャバ嬢から話を聞いた。
20歳のNさんは現役の大学生。アルバイトとしてキャバクラで働いている。彼女も「どうせ働くなら高時給」を理由にキャバクラで働くことを選んだが他の理由もあるという。
「今しかできないことをやりたいと思ってやっています。年を取るとキャバクラでは働けないですし、TikTokやインスタのストーリーで可愛いドレスを着て楽しそうに働いているのを見るとテンションが上がります。高校生の子がキャバ嬢に憧れてるっていうのもよく聞きますね」
彼女が言うには、働くのであれば可愛い衣装を着られることが条件にあるようで、他のキャバ嬢からも同様の意見が聞けた。
バイトをするのであれば、髪色、服装等を指定されることが多いが、キャバクラといった水商売であれば、好きにできる。可愛いドレス、好きな髪色、派手なネイル、全てが自由にできるため、より若い人たちがこうした場所で働くようになってきている。
ホストの場合はどうだろうか。様々な問題が浮上しているホスト業界であるが、どのような理由で、ホストとして働くようになったのか。
20歳の専門学生Hさんから話を聞いた
「自分は服飾の専門学校へ行きながら働いています。他のバイトは服装や髪型で働けないです。好きな髪型で働けるのがホストクラブ。お金は結構カツカツで、他のホストから闇バイトとかの話を受けたこともあります。でも犯罪はしたくないし、将来の夢を考えると、ちょうどいいのがホストだったんです」
彼もまた、服装などの自由でホストクラブで働くことを選んだ一人だ。売れないホストは金がないのは事実であるが、それでもここで働くことを選ぶのには理由がある。
それはおしゃれができるかどうかだ。
自分が気に入ったアクセサリーを身に着けて出勤し、お客さんにそれについての感想をその場で聞ける。忌憚のない意見を聞けるのはホストクラブならではだろう。自分のファッションについて、意見がすぐに聞ける場所として働きながら勉強ができるのだという。
「他の仕事だと、ここまでファッションに敏感な職業はありません。新しく出たブランドの服なんかは話題になりますが、知っているのは一部の人だけ。でもここに来るお客さんは気にしてくれる。それがうれしいです」
好きなブランドの新しいアイテムが出ると、それを誰かと共有したい。趣味の話を誰かとしたいと考えればわかりやすいだろう。
そうした中、SNSで見かけたのがホストだ。
派手な髪、派手な服装でブランド物を身に着けた動画を見て、ホストになることを決心したという。
取材した人たちに共通して言えるのは、SNSの存在が大きいということだ。SNSで水商売はキラキラしている職業として若い人の目には映るようで、自分の時間をどうすれば最大限に利用できるかを考えて行動をしているのが伺える。
キラキラしている世界には、恐ろしいことも多い。足を踏み入れる若者たちがトラブルに巻き込まれないことを祈るばかりだ。
取材・文・PHOTO:白紙 緑