東京都日野市の多摩動物公園が臨時休園して1週間後の2023年2月23日。種の保存法の国際希少野生動植物種に指定されているソデグロヅル1羽が死んでいるのが見つかった。国立環境研究所の遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザと判明し、大きな衝撃が走った。
始まりはカモ池の異変 鳥インフルに見舞われた多摩動物公園 ソデグロヅル舎は最初に確認されたカモ池から約160メートル離れており、飼育班や担当者は異なった。飼育施設に立ち入る人を介した感染の広がりは考えにくく、発生の因果関係はつかめなかった。

同園は飼育するソデグロヅル全13羽の簡易検査を実施。すべて陰性だったことから、隔離して経過観察した。 足のタコの治療で動物病院にいた2羽を除き、死んだ個体と同じ場所で飼育していたソデグロヅルは感染を広げない方法で別の場所に移した。死んだ個体と別の場所で飼育していた個体は防護具を着用した職員が抱いて、車で距離の離れた旧アジアゾウ舎の室内に隔離した。隔離後21日以上たっても13羽に異常は見られず、鳥取大の遺伝子検査でもウイルスは検出されなかった。 同園は都の関係機関などに指導を仰ぎ、防疫措置を徹底した。隔離先のない鳥はケージ上部に防鳥ネットや野鳥よけのテープを張って外部からの侵入を防いだ。発生場所のソデグロヅル舎やカモ池は1週間おきに3回消毒。園路や鳥を飼育している周辺に使った消石灰は20トン以上だった。防疫作業時に着用する微粒子防止用のマスクは息苦しく、防護具を身につけた際の閉塞(へいそく)感は精神的ダメージが大きかった。同園動物病院係長の獣医師、山口歩さん(59)は「防護具は脱ぐ時が肝心。作業後、内側の服はすぐ洗濯し、風呂に入って」と注意した。 園内の清浄化が確認され、再開園は4月10日に決まった。前日の9日、誰とはなしに声が上がり、命を落としたソデグロヅルとカモ類計32羽の慰霊式を行った。 同園は高病原性鳥インフルエンザが発生しやすい秋から春に備え、同年11月、感染対策を強化した。野鳥が飛来しないよう「水鳥池」の水を抜いたり、観覧者が鳥の生活空間に入る「ウォークインバードケージ」を閉鎖したりした。観覧者にも入園時、消毒液を含ませたマットを踏んでもらい、靴底のウイルスを持ち込まないよう徹底している。山口さんは「できる限りの対策はしたい」と話した。【斉藤三奈子】
ソデグロヅル舎は最初に確認されたカモ池から約160メートル離れており、飼育班や担当者は異なった。飼育施設に立ち入る人を介した感染の広がりは考えにくく、発生の因果関係はつかめなかった。
同園は飼育するソデグロヅル全13羽の簡易検査を実施。すべて陰性だったことから、隔離して経過観察した。
足のタコの治療で動物病院にいた2羽を除き、死んだ個体と同じ場所で飼育していたソデグロヅルは感染を広げない方法で別の場所に移した。死んだ個体と別の場所で飼育していた個体は防護具を着用した職員が抱いて、車で距離の離れた旧アジアゾウ舎の室内に隔離した。隔離後21日以上たっても13羽に異常は見られず、鳥取大の遺伝子検査でもウイルスは検出されなかった。
同園は都の関係機関などに指導を仰ぎ、防疫措置を徹底した。隔離先のない鳥はケージ上部に防鳥ネットや野鳥よけのテープを張って外部からの侵入を防いだ。発生場所のソデグロヅル舎やカモ池は1週間おきに3回消毒。園路や鳥を飼育している周辺に使った消石灰は20トン以上だった。防疫作業時に着用する微粒子防止用のマスクは息苦しく、防護具を身につけた際の閉塞(へいそく)感は精神的ダメージが大きかった。同園動物病院係長の獣医師、山口歩さん(59)は「防護具は脱ぐ時が肝心。作業後、内側の服はすぐ洗濯し、風呂に入って」と注意した。
園内の清浄化が確認され、再開園は4月10日に決まった。前日の9日、誰とはなしに声が上がり、命を落としたソデグロヅルとカモ類計32羽の慰霊式を行った。
同園は高病原性鳥インフルエンザが発生しやすい秋から春に備え、同年11月、感染対策を強化した。野鳥が飛来しないよう「水鳥池」の水を抜いたり、観覧者が鳥の生活空間に入る「ウォークインバードケージ」を閉鎖したりした。観覧者にも入園時、消毒液を含ませたマットを踏んでもらい、靴底のウイルスを持ち込まないよう徹底している。山口さんは「できる限りの対策はしたい」と話した。【斉藤三奈子】