23日に起きた、新幹線の停電復旧作業中の感電事故。近くにいた仲間はペットボトルの水で消火を試みるが、更なる感電を避けるため、倒れている作業員とは距離を保っていて必要以上に近づけなかった。感電事故が発生した場合の正しい救助方法について、労働安全コンサルタントの森山哲さんに聞いた。
ーー感電している人がいた場合、どう助けるべき?今回の新幹線の事故では、救助に向かった仲間が、倒れている人に近付かず、手を引っ込めたのは適切な判断です。

倒れている人に接触すると、その人も一緒に大怪我をしたり、最悪の場合は、命を失うことになりかねません。
一般の家庭で感電事故が発生した場合は、まず、ブレーカーを切ってください。もし大元の電気が切れなかった場合は、倒れている人が握っている電線を離させることが大事なので、電気を通さない木やプラスチックなどの棒を使って、体から遠ざけることが大切です。そうしないといつまでも電気が流れ続けて、より重症になります。
ーー新幹線の電圧はどれくらい?新幹線のパンタグラフがついている架線には2万5000ボルトの電気が流れています。これは特別高圧で、我々が関わることのない領域のものです。不用意に接近するだけでスパークが飛ぶようなとんでもないエネルギーを持っています。
一般の家庭や勤務先、工場などは通常100~200ボルトの電圧です。それでも感電すれば命に関わることがあるので十分に注意が必要です。
感電した作業員は全身やけどの重傷、救助にあたっていた作業員1人も軽傷を負ったが、森山氏は、電気作業をする上での大原則が守られていなかった可能性を指摘する。
ーー現場の対応はどうだった?2万5000ボルトの電気に触った場合は、まず必要な箇所に連絡を入れて大元の電気を切らないと救助はできません。そもそも作業を始める前の手順として、特別高圧の電気が十分遮断されているかを確認して、さらに現場に近付いた時も再度確認する必要があります。現場作業員は防護用の絶縁服を着ていると思いますが、対応できるのは6000ボルトまでで、2万5000ボルトを遮断する作業服はありません。
ーー今回は現場の連携不足が大きな要因?そうだと思います。電気作業をする場合は、特別高圧、高圧、低圧に関わらず、しっかり電気を切った上で仕事をすることが大原則です。何らかの理由でこの原則が守られていなかった可能性があります。