東京電力福島第1原発の処理水が海洋放出されて24日で4カ月がたつ。
中国による日本産水産物の全面輸入停止による出荷停滞で水産物価格は低下した。特に大きな影響を受けたホタテ(冷凍)の取引価格は約2割下落している。大手百貨店などの量販店や学校給食でも日本産水産物を買い支えようと消費拡大を支援する動きが広がった。
令和4年度の水産白書によるとホタテは水産物輸出額の約4分の1を占める最大の品目で、中国向けが過半を占める。北海道が全国の約9割のシェアを持つ主産地となっており、日本産は品質が良く高値が付いてきた。
だが、農林水産省が発表した10月の中国向けホタテ輸出額は2カ月連続でゼロ。国内供給が増えたことで、東京都中央卸売市場が集計したホタテの取引価格は、足元(10月時点)で輸出に適した冷凍品が前年同月比19%減、生鮮品は5%減と値崩れが続いている。アワビや鮮魚といった他の品目も打撃を受けている。
一方、中国に多くのホタテを輸出してきた日本最北の村、北海道猿払(さるふつ)村で飲食店などを営む「小松水産」の小松孝喜社長(61)は「今後どうなるのかと不安もあったが、多くの人が買ってくれた。感謝の気持ちでいっぱいだ」と振り返る。
猿払村では9月以降、中国向けに準備をしたホタテの出荷が停滞。必死の思いで参加したのが高島屋大阪店(大阪市中央区)で9、10月に開かれた北海道物産展だった。「猿払のものでは2トンは納品した。かなりの反響があった」(小松氏)。
高島屋大阪店では禁輸で北海道産水産物が行き場を失う中、応援ムードを高める販売戦略を展開した。「食べて応援」と書かれたステッカーを関連ブースやレストラン街に掲示し、水産物を扱わない店の商品にもホタテをトッピングするなど2週間にわたり消費喚起に努めた。担当者によると売り上げは前年比約13%増え、連日長蛇の列ができる店もあったという。
こうした物産展では中華圏から訪日した観光客の姿も目立ち、街の飲食店では日本産水産物を爆食いする姿もみられた。大手外食チェーン幹部は「そもそもいま日本を訪れている中国人は原発処理水の放出を気にしていない」と指摘している。