《今年一発目走りに行きたくなったな。
けえへんか》。男子高校生(17)が交流サイト(SNS)でこう呼びかけると、23人の少年らが集結した。バイクなどに分乗して蛇行運転や信号無視を繰り返した少年ら。大阪府警は道交法違反容疑で摘発したが、暴走族のメンバーではなく、同級生や知人。暴走族が減少傾向にある一方で「命にかかわる危険な暴走行為に、安易に加担する少年らが目立つ」と、府警捜査幹部は警鐘を鳴らす。
中には中学生も
《1月7日の土曜に走りに行こう、午後9時半集合やで。ほかに参加したい人もあれば連れてきて》。こうしたSNSによる呼びかけで集まったのは、15~19歳の少年ら23人。投稿を見て、それぞれ地元の同級生や知人に声をかけて膨れ上がったという。
特攻服やバイクの改造もなく、一見してごく普通の少年たちだが、「中には無免許も複数人おり、中学生もいた」(捜査関係者)。
今年1月7日夜から8日にかけ、少年らは大阪府内を南北に走る府道「大阪臨海線」を、爆音を響かせながらバイクなどで走行。大阪府岸和田市や泉大津市で約5・5キロにわたって信号無視などの暴走行為を繰り返した。
「無免許運転をしていて、後ろからパトカーのサイレンが聞こえてきたので、さらにテンションが上がった」。府警によると、少年らは摘発後、あっけらかんとこう話したという。「覆面パトカーを引き連れながら信号無視を繰り返して楽しかった」
暴走族は減少傾向
暴走族のグループや構成員数は減少しているものの、暴走行為は絶えない。
令和4年版の犯罪白書によると、少年少女が暴走行為など道交法違反で摘発された件数は昭和60年に193万8980件に上ったが、令和3年は11万5256件まで減少。暴走族のグループ数も平成10年は1053だったが、令和3年は110まで減っている。
ただ、近年はSNSで簡単にメンバーを集めることができるため、グループに所属せず数人でゲリラ的に暴走行為をする少年らが目立つ。少年らは関係性が希薄なため、一人一人の特定が困難なこともあり、1月に暴走行為をした少年らを府警が摘発したのは11月だった。
これまで摘発した少年らの中には、大阪から神戸市の「メリケンパーク」まで暴走し、モニュメント「BE KOBE」前で記念撮影したグループも。捜査幹部は「暴走行為の危険性を意識できていない」と懸念を示す。
昔のヤンキーに近い?
若者の教育問題に詳しい神田外語大グローバル・リベラルアーツ学部の知念渉(あゆむ)准教授(教育社会学)は、こうした少年らについて「SNSと地縁をミックスしたような関係性。その中でも地元の先輩と後輩のつながりが多く、昔のヤンキーに近い部分もある」と分析する。
さらに「スマートフォンが普及し、誰かとつながらなくても時間をつぶせるようになり暴走行為自体は減ってきたが、集まったことで生まれる『ノリ』が暴走を加速させる一因になっている」と語る。
捜査幹部は「暴走行為は、一歩間違えると、周囲の車にぶつかり、自分自身の命や相手の命を奪うことにもつながる。事故抑止のため、引き続き取り締まりに力を入れたい」としている。(前原彩希)