普段の食事よりもちょっと贅沢を味わえ、ハレの日の“ごちそう”にぴったりなのがステーキ肉。美味しい肉の選び方や食べ方を知っておくと、期待以上の満足感を得られること間違いなしだ。 料理の道でキャリアを築き、かつては日本最高峰のステーキ店「皮(あらがわ)」でシェフを務めた鈴木慎也さんにステーキ肉の選び方や焼き方のコツについて伺った。
◆ステーキにはブランド和牛や交雑牛がおすすめ まずは前提知識として、「スーパーに並ぶ肉」と「飲食店が仕入れる肉」の違いを鈴木さんは教えてくれた。 「スーパーや精肉店で売られているものは、雄牛の肉がほとんどです。逆に飲食店が仕入れて、お店で提供するのは出産経験のない雌牛の肉で、これは一般の小売店では出回らない。雌肉は不飽和脂肪酸含量が高いので融点が低く、雄肉よりも旨みや香り、口当たりや味わいなどが優れているんです」
スーパーや精肉店でステーキ肉を選ぶ際は、和牛と表記してあるものを購入するといいという。ちなみに、スーパーのパックシールに記載してある個体識別番号をもとに「牛の個体識別情報検索サービス」を使えば、牛の飼養地や品種、性別などを調べることもできるそうだ。
「産地やブランドにこだわり、ステーキ肉を選んでいくのがベストですが、予算との兼ね合いで手が出しにくい場合は、交雑牛(国産牛と外国の牛種と交わった牛のこと)を購入するといいでしょう。味も遜色なくて、十分に美味しく食べられることでしょう」
◆冷蔵庫から出してすぐに焼くのはNG ステーキ肉を買ってきたら、次は自宅での調理だ。ただし、美味しいステーキに仕立てる焼き方を知らなければ、せっかく良質なお肉をゲットしても無駄になってしまう。 鈴木さんは「絶対にやってはいけないのは、冷蔵庫から出してすぐに焼いてしまう」ことだと言う。 冷蔵庫から出した後にすぐにフライパンで焼くと、ドリップ(旨み成分が含まれた赤い汁)が出やすく、肉が縮みやすいので、品質が低下してしまう。そうならないように、「冷蔵庫から肉を出して、2~3時間ほど放置して常温に戻してから調理に移るのが適切」だと鈴木さんは話す。 「焼くときのポイントは、肉の表面、裏面、横とそれぞれ2~3分ずつ焼くこと。一気に焼こうとせずに、ひとつの箇所が終わったら、一度焼くのを休ませるのがポイントです。下準備ができたら、あとはそれぞれの好みに応じてレアやミディアム、ウェルダンなどの焼き加減を調整していきます」
◆炉窯で焼くステーキが肉本来の美味しさを堪能できる
自宅でステーキを堪能する以外にも、誕生日や結婚記念日などの特別な日には、奮発してステーキ専門店を訪れるのもおすすめだ。 さまざまなジャンルの飲食店に勤務し、自身でも幅広い飲食業態を立ち上げてきた鈴木さんがこう話す。
「ステーキが食べられる飲食店と一口に言っても、グリルや鉄板焼きで食べるところもあれば、皿ごとサーブされる場合やフライパンで焼いて出してくれるお店もあり、好みやシチュエーションに応じて使い分けるのがいいと思います。 個人的には、炉窯で焼くステーキが一番美味しいと感じていますね。直に肉を焼くのではなく、遠赤外線で肉全体を加熱することで、じっくりと肉の中に旨みが凝縮され、肉が膨らんでくる。肉本来の美味しさや味わいを引き立てる炉窯焼きのステーキを、まだ味わったことがなければ、ぜひ一度食べてもらうと他の焼き方との違いがわかると思います」 ブランド牛を買い、自宅でステーキを食べてもよし。絶品の炉窯ステーキを堪能するために専門店へ出向くのもよし。どうせ高いお金を出すなら、美味しいステーキの食べ方やお店の選び方を知っておいて、絶対に損はないだろう。 <取材・文/古田島大介>
―[美味い肉には理由がある]―