SNSに投稿された、介護現場を映したとみられる動画が、波紋を呼んでいます。
動画に映っていたのは、介護職員とみられる若い女性の顔をたたく、高齢の女性。若い女性は、「なんでたたくの?」と訴え、近くにいる人も「いじめないで」と声をかけますが、高齢女性は「イヤだ、怖いから」とシャワーを拒否します。
今度は部屋から出ようとする高齢女性を、若い女性が慌てて引き止め、「警察に通報しますよ」と告げると、「やれるもんならやってみろ!」と高齢女性が若い女性を突き飛ばしました。
この動画が拡散されると、介護職とみられる人たちから、「介護職員が暴行されるなんて日常茶飯事」「こんなのはまだマシ、噛(か)んでくる人もいる」「腕をずっとつかんでいる介護士も対応が悪いと思う」といった意見が噴出しました。
動画をきっかけに、大きな議論を呼んでいる、介護職員へのハラスメント問題。「めざまし8」は、現役の男性介護職員に取材。見えてきたのは利用者の行動に耐えるしかない“現実”でした。
以前、勤めていた介護施設で、認知症の利用者から暴力を受けたという、介護職の男性。
現役の男性介護職員(40):暴力行為はありました。ご利用者さんの介助をしているときに、ご利用者さんに殴られて前歯を折られたってこともありました。その後、自分が鏡で見るとガッツリ折れていたので、ちょっと泣きそうな心境でしたけど。
現役の男性介護職員(40):歩行していただくのに手引き歩行とかすると、ニコって笑いながらギュってつねる方とかもいらっしゃいましたし、結構生傷とかは絶えなかったですね。 (介護施設内で)対策会議を持たなきゃいけないので、持ってはいましたけど、結局「しょうがないよね、認知症だから」みたいな感じになってしまうことがほとんどだと思います。
また、利用者から“セクハラ”行為を受けたという現役介護職員もいます。
現役の女性介護職員(20):男性の方に胸を触られたことはありました。その方も結構いろんな職員にお尻触ったりとかするような方だったんですけど。介助の流れで触ってくるみたいな。
ほかにも、介護職員が受けたハラスメントとして、以下のような事例がありました。
・ベッドに一緒に横になるよう強要、「前のヘルパーはやってくれた」とサービス外での強要。
・入浴介助の際に体に触れてくる
・排泄(はいせつ)介助も拒否が強く、声掛けするとたたく、つねる、かみつく、リモコンを投げる、水をかけられる。
・認知症寝たきりの利用者のおむつ交換時に、爪でひっかく、「バカ」などの暴言、唾を吐きかけるなど抵抗する。
・ヘルパーが洗米する時、利用者の家族に「米が2粒流れた」と頭をたたかれた。
また、“精神的な暴力”を受けたという事例もあります。
・最初に聞いて作った料理を途中で他の物に変えてほしいと言われる。「もう今からでは時間がありませんから」と言うと「そんなに難しいこと言ってる?」とダメ出し。
・訪問するたびに「なぜ、事前に電話しない?」と責められたり、笑顔で対応しようとすると「バカにして!」と怒鳴られたりした。上司に相談しても、「認知症だから」とガマンを強いられる。また、その利用者の家族も「プロなんだから対応できるだろう」という傲慢(ごうまん)な態度。
介護職がハラスメントにさらされる、大きな要因とは何なのか。自身も介護福祉士の資格を持つ、介護ジャーナリストの小山朝子氏は「要因は複数ある」としながらも、こう話します。
介護ジャーナリスト 小山朝子 氏:やはり認知症の方が増えているということが、大きな理由としてあると思います。認知症の人の症状として、中核症状に伴って起こるBPSDという周辺症状がありまして、興奮や妄想ということが挙げられるんです。また、利用者や家族がしっかりとサービスの範囲を理解していないということもあると思います。
――止める手だてはないのでしょうか?介護ジャーナリスト 小山朝子 氏:組織としてしっかりと声をすくい上げるみたいな仕組みですよね。そういったものは、やはり必要かなと思います。
大空幸星 氏:家族の存在が非常に重要なんですね、介護保険制度って家族機能を社会化するんだ、地域化するんだということで、成り立ってきた部分はあると思うんです。ただ一方で、家族の責任というのも、消えたわけではないと。やはりまず利用者の方に対して、家族の中で「何ができるのか」を話し合っていただくのが大事だと思いますし、認知が進む前に、どういったものがハラスメントにあたるのかとか、そういった会話をぜひ、家族内でしていただきたいと思います。(めざまし8 11月7日放送)