「友人から『1ヵ月だけ外国でバイトをしてみない?』と誘われ、フィリピンに行きました」
11月6日に東京地裁で行われた初公判で、窃盗の罪に問われている熊井ひとみ被告(26)は起訴内容を認めこう供述した。熊井被告はフィリピンを拠点にした特殊詐欺グループ内でウソの電話をかけた、いわゆる「かけ子」。’19年11月に警察官を襲おい高齢者を騙し、約414万円を引き出したとされる。
「熊井被告は、学生時代に『ミスキャンパス』に出場したという美しさでフィリピンからの送還当時から注目されていました。ネット上では『かわいい』と評判になっているのです。法廷では共犯者との間に子どもを妊娠し、子育てをしていることも判明しました。
一方で軽い気持ちで詐欺事件に加担し、高齢者からカネを騙しとった犯行は許されるものではありません。熊井被告の反省の度合いが、今後の公判の焦点になるでしょう。検察側は懲役4年を求刑しています」(全国紙司法担当記者)
『FRIDAYデジタル』は今年5月26日配信の記事で、熊井被告が移送される様子や事件にいたる経緯を詳しく報じている。再録して、彼女が特殊詐欺に手を染めた背景を振り返りたい(内容は一部修正しています)ーー。
警視庁渋谷署から移送された白いパーカー姿の女性は、車の後部座席でうつむいていた。隣に座っていた捜査員が、メディアに顔をさらすのを不憫に思ったのだろうか。横から、そっとフードを被せるーー。
5月24日午後3時すぎ、フィリピンで拘束されていた特殊詐欺グループが成田空港に到着した。強制送還されたのは熊井被告ら男女4人だ。前述の白いパーカー姿の女性が熊井被告である。
「帰国後はこわばった表情を見せていた熊井被告ですが、送還中の機内では逮捕されるまで熟睡していたそうです。高齢者からキャッシュカードを盗むなどした強盗事件で、電話をかける『かけ子』だったとみられます」(全国紙社会部記者)
フィリピンで拘束された特殊詐欺の犯行グループは複数いる。中でも異例の経歴を持つのが、「かけ子」だったとみられる熊井被告だ。『週刊現代』(3月25日号)によると、父親は政治家で祖父は勲章をもらった名士。自身も都内の名門美術大学で「ミスキャンパス」に参加した、元女子大生だったという。
「『週刊現代』は、日本一かわいい新入生を決める『フレッシュキャンパスコンテスト』に出場していたと報じています。高校時代は陸上部に所属しスポーツ少女の印象だったとか。しかしコンテストに出場以来、大胆な衣装で夜の街に出かけるようになったと聞いています。
生活が派手になる一方、常におカネに困っていたそうです。高額の報酬目当てに、闇バイト強盗に手を染めてしまったのでしょう。『パパ活』でおカネを稼いでいたという話もあります」(同前)
闇バイト強盗では、SNSを通じ「報酬1000万円」「日当100万円」という好条件を提示し実行犯を募集していたとされる。「ルフィ」や「キム」などと名乗る指示役は、応募者に身分証や実家の住所などを提示するよう要求。こうした手続きを経て、初めて仕事内容が「特殊詐欺」や「強盗」だと明かしていたという。
「一定の時間が経つと情報が消去される機能のある通信アプリ『テレグラム』を使い、実行犯に顔写真や運転免許証などの画像を送るよう求めていたようです。一旦画像を送ると、『逃げたらヒドい目に遭うぞ』という趣旨のメッセージが。
家族構成まで伝えていたため、親族にまで危害が加えられるのを恐れ簡単には抜けられません。実際『いきなり自宅に見知らぬ男が訪ねてきた』『監視されていると思った』と、供述している実行犯もいます。『恐ろしい組織に入ってしまった』と。高額報酬に目がくらみ一旦応募すると、犯罪に手を染め続けるしかなくなってしまうのです」(同前)
良家に生まれ名の知れた芸術大学に入学しながら、闇バイト強盗に加担してしまった熊井被告。判決は12月7日に言い渡される予定だ。