給食事業者の倒産が目立っている。帝国データバンクが11月にまとめた調査で、学校給食や企業向け給食、学生・社員食堂の運営受託などを含む給食事業者の倒産が今年に入り17件(10月時点)にのぼり、1~10月までの累計で、2年連続で増加していることがわかった。物価高などで9月に給食業務を受託するホーユー(広島市)が経営破綻し、給食の提供が突如ストップする事態に陥った。業界で影響が広がっている。
【写真】7割超の生徒が食べ残した「冷たい給食」 帝国データバンクが9月に発表した給食業界の動向調査によると、2022年度の業績について、給食事業者のうち34%が「赤字」と答えた。「減益」も29・1%で、約6割の事業者が「業績が悪化した」としている。 業績悪化の背景には、学校給食で近年、民間への委託が進んでいることがある。入札はほとんどが一般競争入札形式で実施される。参加者も多く、決め手となるのは受注額の安さだ。 しかし、急激な食材の値上がりや人手不足による人件費の高騰、光熱費の上昇が響き、当初に契約した受注額ではまかないきれないケースが出ている。コスト上昇分を価格に反映させたくても、思うようにできないケースが目立つという。 帝国データの調査では、事業者の15%が「全く価格転嫁できていない」と回答した。転嫁できても上昇分の20%未満にとどまった事業者が35%、上昇分すべてを価格に乗せられた事業者はなかった。給食事業者からは「値上げをかたくなに拒否され、取引停止を盾に交渉に応じる様子もない」と取引先との交渉難を訴える声があったという。 その一方で、保護者などが支払う給食費は19年以降、横ばいで推移し、1食200~300円、年間にすると5万~6万円ほどだ。 長期化する物価高対策として自治体が補助金を投入してコスト上昇分を補(ほてん)する動きも一部で出てきたが、予算が確保できない自治体のなかには1割程度の値上げに踏み切り、家庭の負担が増えたところもあるという。 帝国データバンクの担当者は「自治体や消費者は『給食は安くて当然』という考えを改め、その上で低価格によらない入札制度への見直しを進める必要がある」と指摘している。【嶋田夕子】
帝国データバンクが9月に発表した給食業界の動向調査によると、2022年度の業績について、給食事業者のうち34%が「赤字」と答えた。「減益」も29・1%で、約6割の事業者が「業績が悪化した」としている。
業績悪化の背景には、学校給食で近年、民間への委託が進んでいることがある。入札はほとんどが一般競争入札形式で実施される。参加者も多く、決め手となるのは受注額の安さだ。
しかし、急激な食材の値上がりや人手不足による人件費の高騰、光熱費の上昇が響き、当初に契約した受注額ではまかないきれないケースが出ている。コスト上昇分を価格に反映させたくても、思うようにできないケースが目立つという。
帝国データの調査では、事業者の15%が「全く価格転嫁できていない」と回答した。転嫁できても上昇分の20%未満にとどまった事業者が35%、上昇分すべてを価格に乗せられた事業者はなかった。給食事業者からは「値上げをかたくなに拒否され、取引停止を盾に交渉に応じる様子もない」と取引先との交渉難を訴える声があったという。
その一方で、保護者などが支払う給食費は19年以降、横ばいで推移し、1食200~300円、年間にすると5万~6万円ほどだ。
長期化する物価高対策として自治体が補助金を投入してコスト上昇分を補(ほてん)する動きも一部で出てきたが、予算が確保できない自治体のなかには1割程度の値上げに踏み切り、家庭の負担が増えたところもあるという。
帝国データバンクの担当者は「自治体や消費者は『給食は安くて当然』という考えを改め、その上で低価格によらない入札制度への見直しを進める必要がある」と指摘している。【嶋田夕子】