飛散防止用のシートは所々破れ、重機は横転しそうなほど傾斜――。9月4日、自治体から工事を停止するよう指示を受けた解体現場が東京都品川区内にある。
「6階建てのビジネスホテルがあった場所です。解体が始まったのは今年6月。働いていたのは外国人数人で、禁止されている重機の爪の上で作業をしたり無茶苦茶。廃材がはみ出し隣のマンションのフェンスを壊していました」(近隣住民)
この解体現場のように、建設業界で働く外国人が増えている。国土交通省によると’20年に11万人を突破。しかし多くの外国人労働者が言葉や技能不足の問題を抱え、事故を誘発しやすいという。品川区の担当者も戸惑いを隠せない。
「設置が義務付けられている工事標識もなく、道路使用許可さえ取っていない。道路が傷(いた)んでいることも確認しています。すぐに責任者を呼び出し、安全配慮に欠けていることを伝えて工事を止めました」(同区都市環境部)
解体工事の発注者である不動産業者のA社は、9月8日にホームページにお詫びを掲載。安全配慮に欠ける作業を続けるなど施工に不備があったB社との契約を解除し、新たな施工業者を選定したという。B社に問い合わせると、「取材」と伝えた途端に電話を切られてしまった。
「以前の解体業者(B社)が重機を撤去し、新たな業者の責任で廃材などを取り除きました。環境が整えば、工事を再開すると聞いています」(同前)
1960年代の建築ラッシュによるビルは老朽化が進んでいる。「危険な解体工事」は品川区だけの問題ではない。
『FRIDAY』2023年10月6日号より
取材・文・撮影:形山昌由ジャーナリスト