9月23日の官房長官会見。“迷惑系YouTuber”について記者から見解を求められた松野博一官房長官(61)は、「発信者の自由は確保しなければなりませんが、プライバシーの侵害や迷惑行為は控えていただかなければなりません」と、優等生的コメントでさらりと流した。
ここで話題とされた「迷惑系」は、飲食店やスーパー、コンビニでおかしな行動をする様を撮影してYouTubeにあげる者たちではない。この系統では「へずまりゅう」が有名だ。
また、先日保釈された「ガーシー」のように、真偽不明の情報を暴露するタイプでもない。これらの手法は迷惑系の中では、すでに古いそうで、目下、注目を集めている“私人逮捕系”YouTuberについて、官房長官はコメントしたのである。
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【写真を見る】覚醒剤を持つ男を担ぎ上げる「私人逮捕YouTuber」 一歩間違えれば事件に「私人逮捕」とはあまり聞かない言葉だが、れっきとした法律用語で、簡単に言えばスーパーの店員が万引きの現行犯を捕まえて警察に突き出すようなものである。「逮捕権」自体は警察や検察などが行使するものなのだが、一般人でも時と場合によっては他人を「逮捕」するところまではできるということだ。 ネット事情に詳しい弁護士の浦川祐輔氏が言う。「今年の5月ごろに出てきました。痴漢の現行犯を警察に突き出すシーンが動画配信されたところ、アクセスが急上昇。以降、“同業者”も増えてきたのですが、それに伴い視聴者の要求も高まり、その手法はどんどんエスカレートしています」「監禁罪や逮捕罪、暴行罪にあたる可能性が」 例えばコンサート会場の近くでチケットの転売を図る女性を捕まえては「ダフ屋行為は違反です」と言い募り警察に突き出そうとする。また駅のコンコースで女性をジロジロ見ていた男性を取り囲んでは「迷惑防止条例違反だ」「交番に行きましょう」と迫る。さらにはどこで聞きつけてきたのか、覚醒剤を所持するという男を追い詰めた挙句に担ぎ上げて警察に連れて行く。 正義を振りかざしさえすれば、何でも許されると言わんばかりの行状で、中には相手の顔にモザイクもかけずに配信する者もいる。そして一部の視聴者が称賛を浴びせる。だが、この行為自体は合法なのだろうか。「そもそも私人逮捕は緊急性を要する時にのみ認められる特別なもので、チケット転売がそれに当たるのか。取り囲めば監禁罪や逮捕罪になりますし、接触すれば暴行罪、ケガをさせれば傷害罪です。当然、誤認逮捕もあり得るわけで、名誉毀損の対象にもなります」(同) そのうち「私人逮捕」をしている人を私人逮捕する、といった光景も現れるのだろうか。「週刊新潮」2023年10月5日号 掲載
「私人逮捕」とはあまり聞かない言葉だが、れっきとした法律用語で、簡単に言えばスーパーの店員が万引きの現行犯を捕まえて警察に突き出すようなものである。「逮捕権」自体は警察や検察などが行使するものなのだが、一般人でも時と場合によっては他人を「逮捕」するところまではできるということだ。
ネット事情に詳しい弁護士の浦川祐輔氏が言う。
「今年の5月ごろに出てきました。痴漢の現行犯を警察に突き出すシーンが動画配信されたところ、アクセスが急上昇。以降、“同業者”も増えてきたのですが、それに伴い視聴者の要求も高まり、その手法はどんどんエスカレートしています」
例えばコンサート会場の近くでチケットの転売を図る女性を捕まえては「ダフ屋行為は違反です」と言い募り警察に突き出そうとする。また駅のコンコースで女性をジロジロ見ていた男性を取り囲んでは「迷惑防止条例違反だ」「交番に行きましょう」と迫る。さらにはどこで聞きつけてきたのか、覚醒剤を所持するという男を追い詰めた挙句に担ぎ上げて警察に連れて行く。
正義を振りかざしさえすれば、何でも許されると言わんばかりの行状で、中には相手の顔にモザイクもかけずに配信する者もいる。そして一部の視聴者が称賛を浴びせる。だが、この行為自体は合法なのだろうか。
「そもそも私人逮捕は緊急性を要する時にのみ認められる特別なもので、チケット転売がそれに当たるのか。取り囲めば監禁罪や逮捕罪になりますし、接触すれば暴行罪、ケガをさせれば傷害罪です。当然、誤認逮捕もあり得るわけで、名誉毀損の対象にもなります」(同)
そのうち「私人逮捕」をしている人を私人逮捕する、といった光景も現れるのだろうか。
「週刊新潮」2023年10月5日号 掲載