・白ロゼ/5万円・ドンペリ/8万円・オリジナルシャンパン/10万円・アルマンド/15万円・エンジェル/19万円
このメニューを見て、どこぞのキャバクラの料金表か、と思った人も多いだろう。しかし、これはキャバクラではない。とあるメイドカフェのメニューの値段なのである。これらのシャンパンやワインをオーダーすれば、メイドが開栓する動画が撮影できる特典もつくという。
【写真】トラブルが続出 メイドカフェが林立する秋葉原の街並み メイドカフェは、2000年代の『電車男』のブームなどで注目を集めるようになった、メイド服をまとった店員が接客するカフェである。「おかえりなさいませ、ご主人様」といった独特な挨拶をはじめ、メイドがオムライスにケチャップで文字を書いてくれたり、メイドとじゃんけんやゲームができるなど、非日常感とゲーム性を重視した接客は外国人観光客にも人気が高い。

写真はイメージです しかし、2000年代の黎明期から、「カフェ」の枠を超えた際どいサービスを売りにするメイドカフェは存在していた。メイドと個室でおしゃべりができたり、メイドと店外デートができたりといった塩梅である。近年、その傾向に拍車がかかっている。メイドと客の距離が一層接近しつつあり、ほとんどキャバクラとサービス内容が変わらない店が増加しているのだ。 メイドが動画配信をすると1万円、5万円と投げ銭が行われ、店頭では高額なシャンパンのコルクが次々に抜かれる。驚くのは、こうしたシステムを若年層が受け入れ、メイドに貢ぐ例がごくごく普通に見られることだ。それは、“推し活”文化の浸透により、推しに金を積んでこそファン、という空気が醸成されているためかもしれない。一部のメイドカフェはそうした心理を巧みに利用しているといえる。生誕祭に命をかけるメイドたち キャバクラやホストクラブのキャストにとって、誕生日に行われるイベント、すなわち生誕祭は最重要イベントである。生誕祭でいかに集客し、金を使わせるかは、人気を示すバロメーターであるためだ。 前出のメイドカフェのメイドにとっても、生誕祭は重要な機会である。メイドに取材すると、なじみの客とLINEやXでこまめに連絡をとり、「自分がこの店で生き残るために、その日はどうしても売り上げが必要なんです!」などと、来店を促すのだという。店の規約で連絡は禁止されているのでは、と聞くと、「周りもやっているし、生誕祭に私は命を懸けているので、そんなことは言っていられない」と返された。 ちなみに、生誕祭当日のメニューを見ると、高額なシャンパンの横に「特典は要相談」とあった。この“特典”とは何か。メイドに聞くと、躊躇しながらも、「具体的な内容は、お客さんと相談で決まります。例えば、別の日に店外でデートができたりとか……」と話した。性的なサービスはないと言うが、信頼できる客であれば「サービスの内容は弾みます」とのことだ。 やっていることはキャバクラと一緒ではないのか。そうメイドに問うと、「当店のシステムはキャバクラとは違う」と言い張る。しかし、どう考えてもキャバクラと変わらない。メイドは若いため、キャバクラのシステムを知らないのだろう。そして、店側もメイドが無知であることを利用し、こうしたサービスをさせていると思われる。 生誕祭では、メイドの全身をあしらったアクリルスタンドや、顔がプリントされたTシャツなどのグッズを販売する例が目立つ。推しがいる客は、メイドのグッズを大量に買いまくり、愛の深さをアピールする。周りの客を意識して、何本もシャンパンを開けまくる。 新興宗教顔負けの集金システムだが、“推し活”という言葉で括られると若年層は抵抗がなく、その日のために貯めてきた金を惜しげもなく使うのだという。しかし、しつこいようだが、やっていることの実態はほとんどキャバクラと同じなのである。秋葉原で摘発が相次ぐ 筆者は何軒かメイドカフェを訪問したが、ほとんどの店では、基本的にコーヒーを飲んで休憩する分には普通のカフェと変わらない。コーヒーを例に挙げれば、数百円高い程度である。ソフトドリンク飲み放題1800円などの価格設定も、高いとは感じつつも、まだ許容範囲と思う。 だが、一部のメイドカフェでは目の前にメイドが次々とやってきては、言葉巧みに、高額なアルコールをオーダーするように“お願い”してきた。「え~っ、ご主人様、ドリンクだけではさみしいですよぉ~!」といった具合である。言われるがままにオーダーすると、会計は軽く1万円を超えた。しかも、滞在時間が少しでも延びると、その分、追加料金が発生する。なかなかよくできたシステムだと思った。 秋葉原では、メイドカフェを装い、接待営業を行う店が問題視されている。2020年には、違法営業に関する110番通報が1100件に達したという。また、2021年5月には、無許可で接待営業を行ったとして、秋葉原でメイドカフェの経営者が逮捕されている。こうした状況を受け、2021年には千代田区が万世橋警察署や地元商店街などと連携を図り、「AKIBA安全・安心プロジェクト」を発足させた。 しかし、今も秋葉原を歩いていると、メイド服を着た客引きに頻繁に出くわす。そのメイド服はというと、とてもメイドとはいえないような、際どいものばかりだ。しかも、ネット通販で格安で売られているか、もしくは風俗店でレンタルされていそうな、素人目に見ても安っぽくてペラペラな生地である。そんなメイドがいったいどのような接客をするのか。おそらく、想像通りの内容だろう。 2023年3月29日には、秋葉原に店舗を構えるメイドカフェなどのコンセプトカフェでつくる団体「秋葉原コンセプトショップ協会」が集会を開き、警視庁の担当者から客引きのルールや法に触れる営業などについて解説を受けたという。業界でも違法営業を行う店を問題視していることが伺える。コスプレイヤーとデートができる!? こうした傾向はコスプレイヤーにも見られる。一部のコスプレイヤー界隈の生誕祭が、プチ風俗化、パパ活ビジネス化している実態があるのだ。かつてのコスプレイヤーといえば、純粋に自分の好きなキャラになりきり、自己表現をするというイメージだった。これなら健全なファン活動の一環と見ることができる。そのようなニッチな存在だったコスプレイヤーだが、近年、急速に市民権を獲得し、ネットや雑誌をにぎわすようになった。プロのコスプレイヤーという職業も誕生し、芸能人並みの人気を獲得している人もいる。 一方で、問題なのがいわゆるアマチュアでありながら、SNSのフォロワーが数万人規模を誇る一部の人気コスプレイヤーである。彼女たちも、生誕祭というイベントを開催している。その中で行われていることは、メイドカフェ同様になかなか“過激”である。ファン心理を巧みに利用した集金ビジネスが盛んに行われているためだ。 あるコスプレイヤーの生誕祭のメニューを見てみよう。チェキにお絵描き1000円、アクリルスタンド3000円……とある。これならまだ良心的だし、問題ないと思える範囲内だ。ところが、高額な商品には以下のような過激なものが並ぶのである。・ブロマイド/2万円・私物をプレゼント/5万円・一緒にプリクラを撮影に行ける権利/7万円・デート1時間/10万円・デート3時間/15万円 これはコスプレイヤーの活動の範疇を超えているのではないだろうか。ブロマイドの販売はまだわからなくはないが、デートはどう見ても一種の“パパ活”以外の何物でもないとしか思えないのだが。しかし、こういった特典を購入し、推しのコスプレイヤーに貢ぐ人は後を絶たない。露出が多い『Re:ゼロ』と『原神』が大人気 話は逸れるが、過激な特典を売りにするコスプレイヤーは、SNSに胸がはだけたキャラクターの写真をUPすることが多い。胸の大きさや美脚を強調した、かなりきわどい衣装をまとう。あるコスプレイヤーのSNSでは、ほとんど胸の一部しか隠していないような過激な水着の写真が並び、「いいね」が数千件ついていた。 そうしたコスプレイヤーの定番のコスプレは、『Re:ゼロから始まる異世界生活』のレムである。レムは胸が強調されたメイド服を着ている。さらに『原神』や『勝利の女神:NIKKE』のキャラも、露出度が高い衣装ゆえに人気がある。しかも、写真につけられたコメントには、絶対にキャラが言わないような的外れなコメントが散見される。そのコスプレイヤーは、そもそも作品をしっかり見ているのだろうか。疑問を呈さざるを得ない。 一部のコスプレイヤーにとってのコスプレは、キャラへの愛情表現とは違う方向を向いているように思われる。こうした過激な生誕祭を催すコスプレイヤーは、キャラクターではなく、自分への愛情表現のためにコスプレをしているのではないか。ファンから金を巻き上げることで、自己顕示欲を満たしていると言われても仕方ないと思う。コスプレイヤーはトラブルに巻き込まれやすい 過去に生誕祭を行ったコスプレイヤーを取材し、疑問をぶつけたら、こう反論された。「別に男を誘おうと思っているとか、大金を稼ぐつもりでやっているわけではない」「純粋な気持ちでやっているのに、そう思われては迷惑だし心外」なのだという。どうやら、憧れのアイドルが生誕祭をやっているのを見て、自分もやってみたいと思ったらしい。「性的な意図はまったくない」と、繰り返し反論された。 自分の誕生日をファンが祝ってくれて、グッズが売れると嬉しいし、悪い気はしない。ちやほやされたい。かわいいと言われたい。かわいく写真を撮ってもらいたい。一部のコスプレイヤーが承認欲求を満たそうとすると、行き着く先はこういったシステムになるようだ。承認欲求はあらゆる表現において必要なので、否定するつもりはまったくない。しかし、あまりに露出度の高い衣装や、過激なファンサービスはあらぬ誤解を生むことも事実だ。コスプレに対して、よからぬイメージを抱く人も出てくるのではないか。 撮影者を募り、自らのコスプレを撮影させる撮影会を催すコスプレイヤーも多いが、こうした企画はトラブルが多いと聞く。前出のコスプレイヤーの周りには、撮影者から性的な関係を持ち掛けられた人が何人もいるという。おそらく、水面下ではコスプレイヤーを巡るトラブルが続出しているのだろう。 撮影はスタジオで行われ、密室で2人きりになることは普通にある。女性が男性と一対一で密室に籠もるのは、本来であれば、かなり危険なシチュエーションである。事務所に所属しているわけでもないアマチュアは、こうした場で何かあっても自己責任である。自分で身を守るしかないが、脅迫され、泣き寝入りになる例も多いといわれる。 コスプレイヤーがトラブルに巻き込まれることは残念だ。性的な行為に及ぶ側は論外だが、事件をなくすためには、コスプレイヤー側にもある程度のモラルが求められるのではないだろうか。生誕祭で高額な“デート券”を販売することが、果たしてコスプレイヤーとして健全なのだろうか。それがキャラクターへの愛情表現につながるのだろうか。事件に巻き込まれる前に、よく考えていただきたいと思う。元城 健アニメ業界ウォッチャー。漫画やアニメの様々な情報に精通するほか、飲食業界の事情にも詳しい。飛び込み取材を得意とする。デイリー新潮編集部
メイドカフェは、2000年代の『電車男』のブームなどで注目を集めるようになった、メイド服をまとった店員が接客するカフェである。「おかえりなさいませ、ご主人様」といった独特な挨拶をはじめ、メイドがオムライスにケチャップで文字を書いてくれたり、メイドとじゃんけんやゲームができるなど、非日常感とゲーム性を重視した接客は外国人観光客にも人気が高い。
しかし、2000年代の黎明期から、「カフェ」の枠を超えた際どいサービスを売りにするメイドカフェは存在していた。メイドと個室でおしゃべりができたり、メイドと店外デートができたりといった塩梅である。近年、その傾向に拍車がかかっている。メイドと客の距離が一層接近しつつあり、ほとんどキャバクラとサービス内容が変わらない店が増加しているのだ。
メイドが動画配信をすると1万円、5万円と投げ銭が行われ、店頭では高額なシャンパンのコルクが次々に抜かれる。驚くのは、こうしたシステムを若年層が受け入れ、メイドに貢ぐ例がごくごく普通に見られることだ。それは、“推し活”文化の浸透により、推しに金を積んでこそファン、という空気が醸成されているためかもしれない。一部のメイドカフェはそうした心理を巧みに利用しているといえる。
キャバクラやホストクラブのキャストにとって、誕生日に行われるイベント、すなわち生誕祭は最重要イベントである。生誕祭でいかに集客し、金を使わせるかは、人気を示すバロメーターであるためだ。
前出のメイドカフェのメイドにとっても、生誕祭は重要な機会である。メイドに取材すると、なじみの客とLINEやXでこまめに連絡をとり、「自分がこの店で生き残るために、その日はどうしても売り上げが必要なんです!」などと、来店を促すのだという。店の規約で連絡は禁止されているのでは、と聞くと、「周りもやっているし、生誕祭に私は命を懸けているので、そんなことは言っていられない」と返された。
ちなみに、生誕祭当日のメニューを見ると、高額なシャンパンの横に「特典は要相談」とあった。この“特典”とは何か。メイドに聞くと、躊躇しながらも、「具体的な内容は、お客さんと相談で決まります。例えば、別の日に店外でデートができたりとか……」と話した。性的なサービスはないと言うが、信頼できる客であれば「サービスの内容は弾みます」とのことだ。
やっていることはキャバクラと一緒ではないのか。そうメイドに問うと、「当店のシステムはキャバクラとは違う」と言い張る。しかし、どう考えてもキャバクラと変わらない。メイドは若いため、キャバクラのシステムを知らないのだろう。そして、店側もメイドが無知であることを利用し、こうしたサービスをさせていると思われる。
生誕祭では、メイドの全身をあしらったアクリルスタンドや、顔がプリントされたTシャツなどのグッズを販売する例が目立つ。推しがいる客は、メイドのグッズを大量に買いまくり、愛の深さをアピールする。周りの客を意識して、何本もシャンパンを開けまくる。
新興宗教顔負けの集金システムだが、“推し活”という言葉で括られると若年層は抵抗がなく、その日のために貯めてきた金を惜しげもなく使うのだという。しかし、しつこいようだが、やっていることの実態はほとんどキャバクラと同じなのである。
筆者は何軒かメイドカフェを訪問したが、ほとんどの店では、基本的にコーヒーを飲んで休憩する分には普通のカフェと変わらない。コーヒーを例に挙げれば、数百円高い程度である。ソフトドリンク飲み放題1800円などの価格設定も、高いとは感じつつも、まだ許容範囲と思う。
だが、一部のメイドカフェでは目の前にメイドが次々とやってきては、言葉巧みに、高額なアルコールをオーダーするように“お願い”してきた。「え~っ、ご主人様、ドリンクだけではさみしいですよぉ~!」といった具合である。言われるがままにオーダーすると、会計は軽く1万円を超えた。しかも、滞在時間が少しでも延びると、その分、追加料金が発生する。なかなかよくできたシステムだと思った。
秋葉原では、メイドカフェを装い、接待営業を行う店が問題視されている。2020年には、違法営業に関する110番通報が1100件に達したという。また、2021年5月には、無許可で接待営業を行ったとして、秋葉原でメイドカフェの経営者が逮捕されている。こうした状況を受け、2021年には千代田区が万世橋警察署や地元商店街などと連携を図り、「AKIBA安全・安心プロジェクト」を発足させた。
しかし、今も秋葉原を歩いていると、メイド服を着た客引きに頻繁に出くわす。そのメイド服はというと、とてもメイドとはいえないような、際どいものばかりだ。しかも、ネット通販で格安で売られているか、もしくは風俗店でレンタルされていそうな、素人目に見ても安っぽくてペラペラな生地である。そんなメイドがいったいどのような接客をするのか。おそらく、想像通りの内容だろう。
2023年3月29日には、秋葉原に店舗を構えるメイドカフェなどのコンセプトカフェでつくる団体「秋葉原コンセプトショップ協会」が集会を開き、警視庁の担当者から客引きのルールや法に触れる営業などについて解説を受けたという。業界でも違法営業を行う店を問題視していることが伺える。
こうした傾向はコスプレイヤーにも見られる。一部のコスプレイヤー界隈の生誕祭が、プチ風俗化、パパ活ビジネス化している実態があるのだ。かつてのコスプレイヤーといえば、純粋に自分の好きなキャラになりきり、自己表現をするというイメージだった。これなら健全なファン活動の一環と見ることができる。
そのようなニッチな存在だったコスプレイヤーだが、近年、急速に市民権を獲得し、ネットや雑誌をにぎわすようになった。プロのコスプレイヤーという職業も誕生し、芸能人並みの人気を獲得している人もいる。
一方で、問題なのがいわゆるアマチュアでありながら、SNSのフォロワーが数万人規模を誇る一部の人気コスプレイヤーである。彼女たちも、生誕祭というイベントを開催している。その中で行われていることは、メイドカフェ同様になかなか“過激”である。ファン心理を巧みに利用した集金ビジネスが盛んに行われているためだ。
あるコスプレイヤーの生誕祭のメニューを見てみよう。チェキにお絵描き1000円、アクリルスタンド3000円……とある。これならまだ良心的だし、問題ないと思える範囲内だ。ところが、高額な商品には以下のような過激なものが並ぶのである。
・ブロマイド/2万円・私物をプレゼント/5万円・一緒にプリクラを撮影に行ける権利/7万円・デート1時間/10万円・デート3時間/15万円
これはコスプレイヤーの活動の範疇を超えているのではないだろうか。ブロマイドの販売はまだわからなくはないが、デートはどう見ても一種の“パパ活”以外の何物でもないとしか思えないのだが。しかし、こういった特典を購入し、推しのコスプレイヤーに貢ぐ人は後を絶たない。
話は逸れるが、過激な特典を売りにするコスプレイヤーは、SNSに胸がはだけたキャラクターの写真をUPすることが多い。胸の大きさや美脚を強調した、かなりきわどい衣装をまとう。あるコスプレイヤーのSNSでは、ほとんど胸の一部しか隠していないような過激な水着の写真が並び、「いいね」が数千件ついていた。
そうしたコスプレイヤーの定番のコスプレは、『Re:ゼロから始まる異世界生活』のレムである。レムは胸が強調されたメイド服を着ている。さらに『原神』や『勝利の女神:NIKKE』のキャラも、露出度が高い衣装ゆえに人気がある。しかも、写真につけられたコメントには、絶対にキャラが言わないような的外れなコメントが散見される。そのコスプレイヤーは、そもそも作品をしっかり見ているのだろうか。疑問を呈さざるを得ない。
一部のコスプレイヤーにとってのコスプレは、キャラへの愛情表現とは違う方向を向いているように思われる。こうした過激な生誕祭を催すコスプレイヤーは、キャラクターではなく、自分への愛情表現のためにコスプレをしているのではないか。ファンから金を巻き上げることで、自己顕示欲を満たしていると言われても仕方ないと思う。
過去に生誕祭を行ったコスプレイヤーを取材し、疑問をぶつけたら、こう反論された。「別に男を誘おうと思っているとか、大金を稼ぐつもりでやっているわけではない」「純粋な気持ちでやっているのに、そう思われては迷惑だし心外」なのだという。どうやら、憧れのアイドルが生誕祭をやっているのを見て、自分もやってみたいと思ったらしい。「性的な意図はまったくない」と、繰り返し反論された。
自分の誕生日をファンが祝ってくれて、グッズが売れると嬉しいし、悪い気はしない。ちやほやされたい。かわいいと言われたい。かわいく写真を撮ってもらいたい。一部のコスプレイヤーが承認欲求を満たそうとすると、行き着く先はこういったシステムになるようだ。承認欲求はあらゆる表現において必要なので、否定するつもりはまったくない。しかし、あまりに露出度の高い衣装や、過激なファンサービスはあらぬ誤解を生むことも事実だ。コスプレに対して、よからぬイメージを抱く人も出てくるのではないか。
撮影者を募り、自らのコスプレを撮影させる撮影会を催すコスプレイヤーも多いが、こうした企画はトラブルが多いと聞く。前出のコスプレイヤーの周りには、撮影者から性的な関係を持ち掛けられた人が何人もいるという。おそらく、水面下ではコスプレイヤーを巡るトラブルが続出しているのだろう。
撮影はスタジオで行われ、密室で2人きりになることは普通にある。女性が男性と一対一で密室に籠もるのは、本来であれば、かなり危険なシチュエーションである。事務所に所属しているわけでもないアマチュアは、こうした場で何かあっても自己責任である。自分で身を守るしかないが、脅迫され、泣き寝入りになる例も多いといわれる。
コスプレイヤーがトラブルに巻き込まれることは残念だ。性的な行為に及ぶ側は論外だが、事件をなくすためには、コスプレイヤー側にもある程度のモラルが求められるのではないだろうか。生誕祭で高額な“デート券”を販売することが、果たしてコスプレイヤーとして健全なのだろうか。それがキャラクターへの愛情表現につながるのだろうか。事件に巻き込まれる前に、よく考えていただきたいと思う。
元城 健アニメ業界ウォッチャー。漫画やアニメの様々な情報に精通するほか、飲食業界の事情にも詳しい。飛び込み取材を得意とする。
デイリー新潮編集部