前編記事はこちら:「「疲れてるのに揚げ物なんて…」モラハラ言動妻に尽くしてきた30代夫が下した決断」
「熟年離婚の割合が増えている」というニュースを耳にしたことのある人は多いはず。厚生労働省によると、2020年に離婚した夫婦のうち、20年以上同居生活をつづけたいわゆる「熟年離婚」の割合は21.5%と過去最高だったことも話題になりました。
だとしたら、熟年世代がもっとも離婚の多い年代かというと、じつはそうではありません。
厚労省が発表している最新の人口動態統計によると、別居時の夫婦の年齢が64歳までの5歳ごとの年齢別離婚率でみると、トップは男女ともに30~34歳とのこと。つまり、30代前半の夫婦がもっとも離婚の危機にさらされているともいえるのではないでしょうか。
では、離婚の危機を迎えた30代前半の男女には、夫婦関係に決定的な亀裂が入る前にどのような兆候があったのでしょうか。実際に筆者のところに夫婦問題の相談に訪れた事例をもとにみていきましょう。
6年前に1歳年下の妻と職場結婚し、子どもがひとりいる山野裕也さん(34歳・仮名・会社員)は「ここまでくると、もう離婚するしかないのでしょうか」と悩みを打ち明けます。
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裕也さん夫婦の離婚の原因は「価値観の違い」とのこと。「以前は、価値観のズレなんてあっても気にならなかった。ところが、夫婦生活が長くなるとお互いの価値観の違いがガマンできないほど夫婦間の大きな溝になりました」
裕也さんいわく、「問題は、好きなことより嫌いなことに対する価値観がズレたことです」。
たとえば、裕也さんと妻は結婚前には「子どもが生まれたら、のびのび育てて本人の才能を伸ばそう。教育パパやママになるのは絶対にやめよう」ということで意見は一致していました。
ところがいざ子どもが誕生し、成長していくにしたがって二人の価値観にはズレが生じていきました。
「子育てに関して、僕の考えは昔と変わらないままでしたが、妻のほうは『なにがなんでも小学校から私立に入れたい。裕也だって学歴が大事だと思うでしょ?』と息子をお受験させることを希望しはじめたんです。あんなに教育ママのことを人一倍嫌っていたのに……。
髪を振り乱して、子どもの塾の送迎やママ友たちとの付き合いに必死になっている妻の姿を見ると、『どうしてこんなに変わってしまったのだろう』と心の距離を感じます」
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住まいに関しても、夫婦の価値観がズレたといいます。
「昔は『いくら都心でも窮屈な生活をするなんて耐えられないよね』と夫婦で話していたのに、いつのまにか妻は『郊外に住むなんて負け組もいいところ。狭くても都内のタワマンに住んで、ママ友や友人たちに自慢したい』と臆面もなく主張するようになりました。
そのせいか、最近は『もっと稼げないの? このままだと一生タワマンになんて住めないわよ』と僕の収入について不満をもらすようになってしまったんです」
裕也さんは「僕の知っている妻とは別人のように変わってしまった今、夫婦で話し合いをしても聞く耳を持ってもらえません。それどころか『昔の私はなにもかも間違っていたわ。息子のことだって、今のうちに一流の教育を受けさせないと。裕也みたいな大人になったら困るのは息子本人だから』
とこれまでのことや僕自身のことを否定され、深く傷つきました。この先、一緒に暮らしていく自信がなくなったのも事実です」
男女ともに、30~34歳という年齢は、まだまだこの先の生き方に迷いが生じる世代。人生経験を重ねていく過程では、価値観が変化していくこともあるでしょう。ただ、その結果、人生の舵を切り直すにしても、40代や50代、それ以上の世代よりハードルが低いことはたしかです。
とはいえ、離婚はしないに越したことはありません。夫婦の危機を迎える予兆を感じた時点で策を講じれば、関係が修復する可能性も多いに残されています。パートナーから発信された小さなサインや違和感を見逃さないことが、その後も円満な夫婦でいられるカギになるでしょう。※登場された方のプライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更、再構成しています。
とはいえ、離婚はしないに越したことはありません。夫婦の危機を迎える予兆を感じた時点で策を講じれば、関係が修復する可能性も多いに残されています。パートナーから発信された小さなサインや違和感を見逃さないことが、その後も円満な夫婦でいられるカギになるでしょう。
※登場された方のプライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更、再構成しています。