タワーマンション(以下、タワマン)とは、基本的に地上20階建て以上の居住用高層建物のことを指します。高級感漂うイメージが多いですが、「広さ」という面では割とコンパクトな物件も存在しています。実際のところ、住みやすいものなのでしょうか。本記事では「日本のタワマン」について見ていきます。
――なぜ人はタワマンに住むのか。
「施設が充実しているから」「セキュリティがしっかりしていて安心できるから」「ゴミ出しが楽だから」……一般的な分譲マンションとは異なるその在り様に、憧れを抱く人が多いのも確か。
一見「勝ち組」にも見えるタワマン暮らしだが、住人の声を聞いてみると意外な事実が明らかになった。
新婚の奥様Aさんが暮らしているのは、30平米のタワマン、1DK。賃料は管理費込みで毎月20万円弱。Aさんは一般職で、手取りは月24万円ほど。
「主人の職場が近いエリアを選ぶなかで、タワマンに住んでみたいという思いが捨てられず、この物件を選びました。駅から近いし眺望もいいんですが、シンプルに狭いです。ダイニング6帖なので夫と喧嘩したときは最悪です……。ガッカリされたら嫌なので友達も呼んだことはありません。子どもができたら一人部屋も用意してあげたいし、住んであと1~2年ですかね」
賃料20万円ともなると、毎月の家計の負担になるのは紛れもない事実。お金の不安はないのだろうか。
「車のローンもあるのですごく心配しています。大きな貯金としては、私の両親が結婚資金にくれた300万円がありますね。ただこのお金は結婚式の費用に使いたいんです……。もちろん目途は立ってないんですけど、コロナのことを何も気にしない式を開きたいので、絶対に使いません。あとは……夫の収入(非公開)と私の収入をあわせて、月2万円ぐらい細々と貯金しています。お恥ずかしいですが、合計2ケタ万円ってところです」
ちなみに総務省統計局『家計調査(二人以上の世帯)2023年(令和5年)7月分』によると、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり「28万1,736円」。子育て資金を貯めたいということもあり、なかなか厳しい生活を送っているのが実情のようだ。
およそ10年前、野村不動産ソリューションズはタワマン居住者を対象に「タワーマンションに関する意識調査」(2012年)を発表した。当時の結果が以下だ。
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「タワーマンションに住んで良かったと思いますか。」
→ 良かったと思う 91.8%
→ 良かったと思わない 8.2%
「タワーマンションの資産価値は高いと感じますか。」
→ 高いと感じる 72.4%
→ 高いと感じない 27.6%
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時は流れ、現在。「タワマン」と検索すれば、ネットニュースはもちろんのこと、YouTube、Twitter、TikTokなどでも「タワマン夫婦の暮らし」「超高級タワマン内見してみた!」といった文字が並ぶ。
武蔵小杉のタワマン水没騒動を皮切りに、国民のタワマンへの関心は高まっているが、「大規模修繕」が話題になっていることをご存じだろうか。
実はタワマン、その歴史は1970年代から。建設ラッシュが始まったのは1990年代後半であるため、揃いも揃って大規模修繕工事に追われる……という懸念がまことしやかに囁かれている。
その分、賃貸組は「困ったら引っ越し」の選択肢があるだけよいかもしれない。では、タワマン購入組はどう思っているのだろうか?
都内某タワマン、2LDKをお買い上げしたBさん。証券会社勤務で、妻と子どもの3人暮らし。賃貸だったら毎月50万円~はくだらない。
「築浅なので、大規模修繕工事にはまだ時間があります。まあそれはともかく、ウチは駅から近いし眺めもいいし、値崩れはしないと思いますね。利便性も抜群で、本当に買ってよかったと思います。不動産価格の下落って特に『タワマンだから~』って話じゃないと思いますけど、なんでタワマンばっかりフィーチャーされるんですかね。都心の一等地の建物なら、タワマンであれ戸建てであれ、当分心配することないでしょう」
何かと世間を騒がせがちなタワマン。憧れの裏には、一括りには到底できない、タワマン住人のシビアなお金事情が潜んでいる。今後も要注目だ。