50歳の男性が30歳の女性と結婚しても、それほど人々は衝撃を受けないだろう。少し前にも、俳優で57歳の香川照之氏が、20代後半の女性と再婚したという報道があったばかり。すでに子どももいるという。30歳近く離れた年の差婚だが、この場合、子どもをもうけることも可能なのだ。
だが、50歳の女性が30歳の男性と結婚しても、よほど特別な環境を作らない限り実子に恵まれるのはほぼ不可能だろう。
結婚という形をとらず、恋人のまま付き合うとしても、男性が年上の場合、経済的にも性格的にも庇護されたい女性とならうまくいきやすい。逆でももちろんうまくいくケースはあるのだろうが、一般的に年下男性が同世代の女性と付き合って羽ばたいていくというイメージが残る。
47歳女性が出会った27歳年下の相手「5年付き合った20歳年下の彼に、『同世代で好きな女性ができた。彼女と付き合いたいんだ』と言われました。覚悟はしていたけど、この5年間が思い出されて涙が止まらないんです」
そう言うのは、ノゾミさん(52歳)だ。47歳のとき、仕事で知り合った27歳の彼から告白され、何度も断ったあげく根負けして付き合うようになった。
「私、29歳のときに一度結婚しているんです。でもうまくいかずに4年後に離婚。子どもはいません。それ以来、あまり男性に期待しなかったせいか、恋愛はしてもさほど長続きはしませんでした」
愛さえあれば、20歳の年の差なんて?仕事があって友だちがいて趣味がある。それだけで人生、十分だと思ったのは40歳のとき。子どもがほしいと思ったこともあったが、40歳の声を聞いてすっぱりとあきらめた。
「だから年下の彼から告白されたときも、最初はとりあいませんでした。年上好きの男性がいるのは知っていたから、『お母さんだと思っていいよ』『ご飯友だちになろう』などとかわしていたんです。でも彼は真剣だった。
『3年付き合ったら私は50歳になっちゃうんだよ』と言っても、彼は『愛しているから大丈夫』と」
お互いの勤務先が近かったから、帰りに待ち合わせて食事に行くことが増えた。彼はアパートの更新があるんだけど、ノゾミさんの近くに住んでもいいかと聞いてきた。近くに住むくらいならどうぞと言うと、徒歩5分のところに越してきたのには驚いたという。
半同棲は楽しかったけれどノゾミさんが根負けして付き合うようにはなったが、彼女はいつ別れてもいいように常に距離を保っていた。
「うちに来たがる彼に、それは週に1度だけと決めたんです。私は彼のママでも妻でもないのだから。私が彼のめんどうをみるのは違うと思った。すると彼は『じゃあ、僕が食事を作るよ』と週末に来て作ってくれたんです。パスタとサラダとスープ。それがものすごくおいしくてびっくりしました。
『ね、僕と一緒にいるとバランスのいい、おいしいものが食べられるんだよ』って。ひとりだとどうしても食事を手抜きしがちですが、彼と一緒にいると本当にいつもおいしいものが食べられた」
彼女は音楽や映画、絵画など芸術に造詣が深い。彼は好奇心が旺盛で、芸術に接したがっていたのであちこちに連れ出した。彼の鋭い感性は、彼女の芸術観も変えた。
「同じ絵を観ても、彼の意見が新鮮でした。何に対しても自分の意見をもっているのがおもしろくて、私も彼にぐんぐん惹(ひ)かれていった」
彼に「結婚したい人」が現れた……そんな時間の積み重ねが5年になった。ここ3年はほぼ同棲といってもいいような状態だ。そんな中で、突然、彼が「好きな人ができた」と言ったのだ。
「いつかこういう日が来るとわかっていた。彼は『僕にとって、あなたは永遠の恋人だと思う』と言うんです。でも若い女性と付き合って結婚したいと思うようになったんでしょう。彼も32歳、当然ですよね。覚悟していたはずなのに体が震えました」
8月31日が彼女の53歳の誕生日だ。この日をもって関係を終わらせようと彼女は決めたという。誕生日を祝ってから友だち関係に戻ろうと言った彼に、彼女はどうせ別れるなら、そんな慰めはいらないと思った。
だが数日考えて、祝ってもらおうと考えを変えた。彼には感謝しかない。せっかくなら、笑顔で別れたいと思ったからだ。
「彼を恨んだり憎んだりする気持ちはまったくないんです。ただ、私の未練は少し尾を引きそう。それだけこの5年間が輝いていたと思うから。でも私は彼を引き止めることなんてできない。彼には幸せになってほしい、彼の意志を尊重するのが私の愛情なんです」
話しているうちに涙ぐむノゾミさん。濃密な5年間は、きっと彼女の今後の人生の宝物になるはずだ。
「友人に言われたんです。『9月になったら、新たな彼を見つけよう』と。そういう考え方もありますね」
彼女は涙目になりつつ、自分を奮い立たせるように笑みを浮かべた。