雑木林の中に現れた、1頭のイノシシ。カメラを警戒したのか、少し立ち止まった。
再び歩き出すと、その後ろには小さなウリ坊の姿が。
ウリ坊は次々と現れ、数えてみると、全部で8頭いた。
映像が撮影されたのは、広島県の生野島。周囲約12.5kmのこの島は、瀬戸内海に浮かぶ、人の住む離島。
20年ほど前まで、島にイノシシはいなかった。
しかし現在は、島民の数よりもイノシシが増え、イノシシに占拠されたような状態だという。
なぜ、そこまで増えたのだろうか。
兵庫県立大学・栗山武夫准教授「瀬戸内海は、割と島と島の距離が近い。本州か四国から入ってきたイノシシがそこで増えて、(より良い環境を求めて)近い隣の島に次々と移ってくる」
橋でつながっていない島に、泳いで渡ってきたというイノシシ。
先週、兵庫県立大学の研究グループが、調査のため島に渡った。
研究グループは、イノシシの生息数を把握するため、2023年6月から島内にセンサーカメラを設置。
すると、そのカメラに警戒した様子で立ち止まるイノシシと、8頭のウリ坊の姿が記録されていた。
イノシシは、畑のフェンスを乗り越え農作物を荒らすほか、急勾配の斜面に築かれた石垣を崩すなど、やりたい放題。
今や、数と力で島民を圧倒している。
島民「島民住んでるの何人だと思ってるの。8人しかおらんのやで。そりゃイノシシは何十匹もおるわな。100頭きかんとちゃう?」
現在、生野島で暮らす8人のうち、最年少58歳の西野道春さんも、ほぼ毎日、野生のイノシシと遭遇するという。
生野島の住民・西野道春さん「抜本的な解決っていうのはもうないし、これがあと10年続くと、もうみんな90歳近くになったら、一緒に出て、(対策を)やりましょうというのも難しくなってきますよね」
生野島では、猟友会による駆除も行っているが、繁殖ペースに追いついておらず、数は増すばかりだという。
兵庫県立大学・栗山武夫准教授「将来の日本の縮図が、たぶん生野島で起きていて、ほかの島でも起きているんじゃないかと危惧しています」