日本人は若いほどに良いと思いがちですが、それは思い込みに過ぎません。
「そもそも、いまの日本は年齢差別がひど過ぎるのです。」と語るのは、高齢者専門の精神科医の和田秀樹先生です。
『80歳の壁』や『60歳からはやりたい放題』などのベストセラーを持つ和田先生に、年取ってからこそ、若作りをしたほうがよい理由を教えてもらいました。
(本記事は『60歳からはやりたい放題[実践編]』(和田秀樹著)より抜粋・構成しています)
◆年齢差別は決して気にしないで
「私はこんな年齢だから」
「年がいもないと思われるんじゃないか」
これらの言葉は、今日から禁句にしてほしいと思います。
平均年齢が50歳に近く、世界一の高齢者大国と言われるにもかかわらず、「年がいもない」「高齢者は老害だ」などとやゆする声が決して少なくありません。
「高齢者は邪魔者」として若者世代から反感を抱かれる風潮が、どんどん広がっています。
その最たる例が、高齢者ドライバーの件でしょう。80代、90代が運転して事故を起こした人がいれば、メディアがすぐに取り上げて「高齢者からは免許証を取り上げるべきだ」と騒ぐ。
ただ、日本では交通事故が毎日1600件以上、死亡事故だけでも毎日7件以上起こっているため、高齢者ドライバーが起こしている事件の割合はわずかです。
すべての交通事故をメディア報道すべきなのに、一部の高齢者の事件しか報道しない。これは偏向報道としか言いようがありません。
◆若い世代が、相手の年齢で先入観を持つ傾向にある
その他、子供たちが「親世代の言うことはズレている」「お父さん・お母さんの考え方は古い」などと平気で口にすることがあります。
これも、若い世代が、相手の年齢で先入観を持ち、ものごとを決めつけてしまう傾向があるからでしょう。
本来は、相手の年齢で判断する前に、人の意見に耳を傾けて、きちんとその内容を精査するべきです。
こうした風潮に、「年齢だけで相手を判断してしまう若者世代のほうが、脳が老いているのではないか」という懸念すら覚えてしまいます。
◆「若い人のほうが良い」というおかしな常識
日本では何かと「若いほうが良い」という固定観念があります。
たとえば、政治家を見ても、同じような条件の候補者がいるならば「若いほうが柔軟な考えができて良い」「若い人のほうが熱心に働いてくれるはずだ」などと言って、持ち上げる傾向があります。
ただ、国の政治について、若い人のほうが国民の気持ちが分かるとは限りません。
実際のところ、若くして政治家になる人は、権力者によるバックアップが非常に大きいため、市民よりも権力者の言いなりになってしまうことが多々あります。
でも、大切なのは、人々の気持ちをくみ取って、政策に反映する力なのに、若い政治家に注目しがちです。これに対しても、日本の高齢者への根強い差別を感じざるを得ません。
◆世界と大きくズレる「日本人の感覚」
なお、アメリカは法律によって年齢差別が禁止されており、日本よりも高齢に対する差別意識が低いです。
事実、アメリカの大統領であるバイデン大統領が78歳(4年の任期なので82歳まで大統領を続けることが分かっているわけです)にして当選したことを考えると、日本とアメリカの感覚に大きな差があることが分かるでしょう。
雇用についても同様で、日本は「若い人を採用しよう」とする考えが根強いです。
たしかに若い人のほうが、フットワークが軽くて、覚えも早そうだし、その後も長く働く余地があると思われがちですが、それはあくまでイメージに過ぎません。
本来はその人の能力や中身で判断すべきなのに、年齢だけで精査して、スキルのある人を無視してしまう。
今後、少子高齢化で労働力不足が叫ばれる日本において、大きな課題だと私は感じます。
<和田秀樹 構成/女子SPA!編集部>