パパ活を希望する未成年の少女と男たちを交流サイト(SNS)で結びつけ、複数人でのわいせつ行為を主催していた集団が児童買春・ポルノ禁止法違反容疑などで摘発された。
その名も「満月(まんげつ)グループ」。当初は成人女性を対象にしていたものの、味を占めた運営者が数年前から未成年者をターゲットにするようになった。そして、アイドルのライブ代などを手早く稼げる手段として集まった少女たち。実態を取材した。
京都府警によると、満月グループはこんな形で乱交を開催していた。
まずはSNSへの投稿だ。「名古屋でやります。女の子は3~4人です!」。これを見た男たちが個別チャットで参加を申し込むと、詳細な日時が提示される。このとき、満月グループが運営する女性向けの別アカウントも同時並行で動き始める。「#P活紹介します」。こうした投稿とともに数万円単位の謝礼が示される。関心を持った女性からのメッセージを受け取ると、乱交が行われるという流れだ。
約5年前に発足した同グループ。これまでに100回以上の乱交を開催し、そのうち15回以上は未成年者を対象としたものだった。
府警は昨年10月、グループを運営する男を児童買春・ポルノ禁止法違反(買春)容疑で逮捕。起訴された男は今年7月、京都地裁で懲役2年、罰金200万円の判決を受けた。府警は6月までに同法違反容疑などで乱交に参加していた20~60代の男17人を送検し、捜査を終結した。
児童買春グループへと変貌
発足当時、満月グループは成人女性を対象にしていた。変化が起きたのは約2年前。一部メンバーでつくる有料会員制の「青月(あおつき)グループ」が誕生したことがきっかけだった。
青月グループは当初、初参加の女性斡旋(あっせん)などを有料会員の特典としていたが、内容は徐々にエスカレート。令和3年10月ごろ、初めて未成年の少女が参加したことを機に、特典に「18歳未満の少女」の参加を追加するようになった。犯罪行為だとの認識はあったようで、「一度道を踏み外してみた安堵(あんど)感から、怖くないと思った」(運営者の男)。これ以降、18歳未満の参加する有料会員向けイベントが満月グループの主流となり、集団児童買春グループへと変化していった。児童買春による収益は約150万円に上るとされる。
自らパパ活を希望していたとはいえ、未成年者は法的には被害者となる。一連の満月グループ事件では、15~18歳の少女6人が被害を受けた。彼女たちの多くはアイドルのライブチケットやグッズの購入、彼氏へのプレゼント代などの資金を手早く稼ぐ目的で参加していたという。
殺人事件も…パパ活の危険知らせる
事件を受け、府警は児童買春を「する側」と「される側」の両者に対し、対策を強化している。SNSで性被害を誘引する書き込みや、パパ活を募集する書き込みについて人工知能(AI)を活用したサイバーパトロールを実施。書き込みに対しては「性犯罪や誘拐などの事件に巻き込まれる危険があります」などと府警少年課のアカウントから返信することで注意を呼び掛けている。
府警少年課の池野喜彦課長は「児童の心身に有害な影響を及ぼす性的搾取事犯の取り締まりを強化し、被害児童の早期発見と保護対策に努める」と話した。
SNSをきっかけに性犯罪に巻き込まれる未成年者の数は高止まりしている。警察庁の調査によると、令和4年にSNSを通じて児童買春などの犯罪に巻き込まれた未成年者は1732人に上る。
SNSによる性被害などに詳しい神戸親和大の金山健一教授(学校心理学)は未成年者がパパ活を行う背景の一つに、匿名で簡単にやり取りができることをあげる。「ネット上にはパパ活の実体験などの情報があふれており、みんなもやっているという考えから抵抗感が低い」と金山教授。過去にはSNSから発展した殺人事件も起きている。「こうした実際の事件を伝えた上で、SNSで知らない人とつながることの怖さや危険性を学校や地域で教えていくべきだ」とした。