ガソリン価格の高騰が続き、運送業や漁業などへの影響が深刻化している。
先月末には、レギュラーガソリンの全国平均価格が15年ぶりに最高値を更新した。生活の足として欠かせない地方の車所有者からも悲鳴が上がる。
■「割に合わない」
個人事業主として大阪府内で配達ドライバーをしていた60歳代男性は、7月末に仕事を辞めた。宅配業務を10年以上請け負ってきたが、「ガソリン代の負担が重く、割に合わなくなった」と語る。報酬は運ぶ量にかかわらず日当制で、ガソリン代を含む経費は自己負担だった。7月は経費がかさみ、報酬のうち手元に残ったのはこれまでより数万円少なかった。「少しでも経費を抑えようと、安い地域で給油してきたが、限界だった」と言う。
資源エネルギー庁が8月30日に発表したレギュラーガソリン価格は15週連続値上がりし、1リットル当たり185・6円(28日時点)と2008年8月の185・1円を上回って過去最高を更新した。円安や原油価格の高騰に加え、政府の補助が6月から段階的に引き下げられたためだ。
全日本トラック協会(東京)の試算では、燃料価格が1円上がると業界全体で約150億円負担が増える。担当者は「労働環境を維持するため人件費を削るわけにもいかず、苦しい」と漏らす。鴻池運輸(大阪市中央区)は、停車時にエンジンを止めるアイドリングストップや、急発進や急停車を避ける省エネ運転を運転手に呼びかけている。
■月4万円超え
価格高騰を受け、岸田首相は30日、補助を延長・拡充し、10月中にレギュラーガソリンの全国平均価格を175円程度になるよう調整すると表明したが、悲観的な見方は強い。 「漁に出ても赤字になりかねない」。こう漏らすのは、1日から底引き網漁が解禁された福井県越前町漁協参事の南直樹さん(58)。漁船の燃料となる重油も補助金の対象だが、価格の高騰が止まらない。同漁協が8月に仕入れた重油価格は1リットル当たり114円で、南さんは「数年前の倍近い」と言う。底引き網漁は漁港から50キロほど沖合で行うこともあり、1回の操業で1万円以上の負担増になるという。 ガソリン平均価格が186・9円と3週連続で最高値を更新した香川県。高松市内のガソリンスタンド(GS)で給油していた同市の医療従事者の女性(44)の家庭では通勤などで利用するマイカー2台のガソリンが負担だ。「月に4万円を超えるようになり、家計が圧迫されている。車のエアコンを我慢したり、食料品をまとめ買いして外出の頻度を減らしたりしてやりくりしている」と話した。 18年春に廃止された旧JR三江(さんこう)線の沿線の島根県美郷町では、車への依存度が高い。同町で子ども2人を育て、通勤で車を使う図書館司書の女性(48)は「安心して子育てができるように価格が落ち着いてほしい」と願った。■観光業も危機感 コロナ禍が収束してインバウンド(訪日外国人客)が戻りつつある中、観光業関係者も「水を差すことにならないか」と危機感を抱く。このため観光客向けの独自キャンペーンに注力するところもある。 奈良市のホテル日航奈良は、指定したGSで給油できる引換券付きの宿泊プランを用意。主に家族連れから月40件ほどの利用がある。指定GSを営む板倉昌弘専務は「一般客だけでやっていくのは厳しいので助けられている」と話す。 石川県輪島市と市観光協会は、市内の宿泊施設35か所の宿泊客を対象に、市内のGSで1リットル当たり30円を割り引く事業を行い、観光客の足が遠のかないよう工夫する。秋の行楽シーズンに続き、11月にはズワイガニ漁も解禁される。同協会の平正秋さん(48)は「影響をどうにか最小限に抑えたい」と祈るように話した
価格高騰を受け、岸田首相は30日、補助を延長・拡充し、10月中にレギュラーガソリンの全国平均価格を175円程度になるよう調整すると表明したが、悲観的な見方は強い。
「漁に出ても赤字になりかねない」。こう漏らすのは、1日から底引き網漁が解禁された福井県越前町漁協参事の南直樹さん(58)。漁船の燃料となる重油も補助金の対象だが、価格の高騰が止まらない。同漁協が8月に仕入れた重油価格は1リットル当たり114円で、南さんは「数年前の倍近い」と言う。底引き網漁は漁港から50キロほど沖合で行うこともあり、1回の操業で1万円以上の負担増になるという。
ガソリン平均価格が186・9円と3週連続で最高値を更新した香川県。高松市内のガソリンスタンド(GS)で給油していた同市の医療従事者の女性(44)の家庭では通勤などで利用するマイカー2台のガソリンが負担だ。「月に4万円を超えるようになり、家計が圧迫されている。車のエアコンを我慢したり、食料品をまとめ買いして外出の頻度を減らしたりしてやりくりしている」と話した。
18年春に廃止された旧JR三江(さんこう)線の沿線の島根県美郷町では、車への依存度が高い。同町で子ども2人を育て、通勤で車を使う図書館司書の女性(48)は「安心して子育てができるように価格が落ち着いてほしい」と願った。
■観光業も危機感
コロナ禍が収束してインバウンド(訪日外国人客)が戻りつつある中、観光業関係者も「水を差すことにならないか」と危機感を抱く。このため観光客向けの独自キャンペーンに注力するところもある。
奈良市のホテル日航奈良は、指定したGSで給油できる引換券付きの宿泊プランを用意。主に家族連れから月40件ほどの利用がある。指定GSを営む板倉昌弘専務は「一般客だけでやっていくのは厳しいので助けられている」と話す。
石川県輪島市と市観光協会は、市内の宿泊施設35か所の宿泊客を対象に、市内のGSで1リットル当たり30円を割り引く事業を行い、観光客の足が遠のかないよう工夫する。秋の行楽シーズンに続き、11月にはズワイガニ漁も解禁される。同協会の平正秋さん(48)は「影響をどうにか最小限に抑えたい」と祈るように話した