回転寿司のスシローを運営するFOOD&LIFE COMPANIESの月次情報によると、7月の既存店の客数は、前年同月比で3.8%のマイナスだった。同業他社のくら寿司の同数値が2.1%増、元気寿司(魚べい運営)は9.5%増、カッパ・クリエイト(かっぱ寿司運営)が9.4%増であることを踏まえれば、スシローだけが“一人負け”の感がある。
【写真を見る】過去に発売されたスシローと“鳥羽シェフ”のコラボ…「しゃり弁当」 このほど公開された第3四半期決算短信(2022年10月1日~2023年6月30日)を見ても「国内スシロー事業」の売り上げは1,497億1,800万円(10.8%減)と奮わない。決算短信には円安やコスト増と共に、今年1月の迷惑動画のSNS拡散についても触れられている。

苦境のスシロー、他社との違いは?復活しない回転レーン スシローがパッとしない理由について、消費経済アナリストの渡辺広明氏は「迷惑動画の問題が尾を引いていますね」と解説する。「客側がいまも衛生面を気にして……ということではなく、スシロー側の対応です。問題が発覚して以降、スシローはいまだに回転レーンでの寿司提供を行わず、タッチパネルで注文した寿司が直接運ばれる仕組みをとっています。ライバルのくら寿司が、早々にAIカメラを導入し『回転』させることにこだわったのを見ると、大きな違いといえます。回転寿司は客が食べる寿司の半分は回転レーンから、といわれています。かっぱ寿司や魚べいなど、問題が起きる前から回転無しでやっていましたが、スシローはそうではありません。回転レーンでの提供を前提とした厨房システムになっていると推察され、効率面でも支障が出ているのではないでしょうか」 今年5月には「今夏をめどに回転レーンを復活する方針」と読売新聞が報じたが、夏も終わる9月1日現在、いまもその様子はない。FOOD&LIFE COMPANIESの広報は、「レーンの活用についてはあらゆる可能性を含めて検討しておりますが、現時点で決定している事項はございません」 と答える。積極的な海外展開がアダに? さらにスシローに追い打ちをかけることになりそうなのが、海外の店舗を取り巻く状況だ。 海外ですでに100店舗以上を展開しているスシローだが、24年9月期の目標として、200店規模を目指すとしている。その要になるのが中国への出店で、この7月にオープンした中国本土25店舗目となる「武漢摩爾城店」は、海外の店舗では最大となる365席の規模だった。 積極的な海外展開の結果、先の第3四半期決算短信には、海外スシロー事業の売上は前年同期比84.9%増の469億5,500万円とある。くら寿司の23年10月期第2四半期(22年11月1日~2023年4月30日)の業績は、海外事業(アジア+北米)の売上が213億1,100万円だったから、スシローは海外事業に注力していることがわかる。 ところが福島第一原発の処理水放出を受け、中国で日本製品不買が起きているのは知られている通り。放出が始まった8月24日には運営会社の“株価暴落”が報じられた。「現在では株価は回復していますし、放水後でも香港のスシローで行列ができていると報じられました。ただ中国本土の店舗でも、引き続き食べられるかどうかは分かりません。少なくとも中国の出店計画には影響するでしょう。回転寿司店が乱立する国内市場の現状を受け、海外に目を向けるのは経営戦略として正しいのですが、国内の客足を取り戻せていないスシローにさらなる痛手であることは間違いないでしょう。取り急ぎの対応策として、一刻も早く回転レーンを復活させるべきだと思います」(渡辺氏)デイリー新潮編集部
このほど公開された第3四半期決算短信(2022年10月1日~2023年6月30日)を見ても「国内スシロー事業」の売り上げは1,497億1,800万円(10.8%減)と奮わない。決算短信には円安やコスト増と共に、今年1月の迷惑動画のSNS拡散についても触れられている。
スシローがパッとしない理由について、消費経済アナリストの渡辺広明氏は「迷惑動画の問題が尾を引いていますね」と解説する。
「客側がいまも衛生面を気にして……ということではなく、スシロー側の対応です。問題が発覚して以降、スシローはいまだに回転レーンでの寿司提供を行わず、タッチパネルで注文した寿司が直接運ばれる仕組みをとっています。ライバルのくら寿司が、早々にAIカメラを導入し『回転』させることにこだわったのを見ると、大きな違いといえます。回転寿司は客が食べる寿司の半分は回転レーンから、といわれています。かっぱ寿司や魚べいなど、問題が起きる前から回転無しでやっていましたが、スシローはそうではありません。回転レーンでの提供を前提とした厨房システムになっていると推察され、効率面でも支障が出ているのではないでしょうか」
今年5月には「今夏をめどに回転レーンを復活する方針」と読売新聞が報じたが、夏も終わる9月1日現在、いまもその様子はない。FOOD&LIFE COMPANIESの広報は、
「レーンの活用についてはあらゆる可能性を含めて検討しておりますが、現時点で決定している事項はございません」
と答える。
さらにスシローに追い打ちをかけることになりそうなのが、海外の店舗を取り巻く状況だ。
海外ですでに100店舗以上を展開しているスシローだが、24年9月期の目標として、200店規模を目指すとしている。その要になるのが中国への出店で、この7月にオープンした中国本土25店舗目となる「武漢摩爾城店」は、海外の店舗では最大となる365席の規模だった。
積極的な海外展開の結果、先の第3四半期決算短信には、海外スシロー事業の売上は前年同期比84.9%増の469億5,500万円とある。くら寿司の23年10月期第2四半期(22年11月1日~2023年4月30日)の業績は、海外事業(アジア+北米)の売上が213億1,100万円だったから、スシローは海外事業に注力していることがわかる。
ところが福島第一原発の処理水放出を受け、中国で日本製品不買が起きているのは知られている通り。放出が始まった8月24日には運営会社の“株価暴落”が報じられた。
「現在では株価は回復していますし、放水後でも香港のスシローで行列ができていると報じられました。ただ中国本土の店舗でも、引き続き食べられるかどうかは分かりません。少なくとも中国の出店計画には影響するでしょう。回転寿司店が乱立する国内市場の現状を受け、海外に目を向けるのは経営戦略として正しいのですが、国内の客足を取り戻せていないスシローにさらなる痛手であることは間違いないでしょう。取り急ぎの対応策として、一刻も早く回転レーンを復活させるべきだと思います」(渡辺氏)
デイリー新潮編集部