令和元年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の初公判で、検察側は証拠調べの中で、京アニ第1スタジオの消火活動を指揮したベテラン消防隊員が「ここまで凄惨(せいさん)な現場は経験がない」などと語る供述調書を朗読した。
「普通の火事ではなかった。窓という窓から火と黒煙があがっていた」
この消防隊員が現場に到着したとき、すでに消火活動は始まっていたが、「真昼間の火災にしてはあまりにも早く全面に炎が回った」。逃げ遅れた社員が多数いるとの情報が指揮所にもたらされていた。
現場周辺では、服や体が焼けただれた負傷者が座り込み、近隣住民や消防隊員が声をかけても、「火災のショックで目を閉じたまま応えない人もいた」という。
懸命の消火活動が続けられたが、火の勢いから、「生存救出は不可能」と直感。火の勢いが弱まり、ようやく建物内をはいつくばって要救護者を捜したが、すでに亡くなっていた。遺体の数が多くスタジオ前にテントを設置して搬出したといい、「これほど無念なことはない。35年間(消防隊員として)勤務し、犠牲者が多い現場を経験したが、ここまで人的被害が出た現場は初めて」と振り返った。