健康保険証を廃止してマイナカードに統一するマイナンバー法など改正関連法が2日、成立した。
マイナ保険証を巡っては、別の人の情報に紐づけられる誤登録などトラブルが頻発。ミスが起こる背景や課題について、住民基本台帳ネットワークのシステム開発にも携わった行政システム総研顧問で蓼科情報主任研究員の榎並利博氏に話を聞いた。
――健康保険証とマイナンバーカードを紐づける際に登録を誤ったとされる事案が、令和3年10月~4年11月に約7300件あり、別人の医療情報が閲覧されたケースも5件あった
榎並氏 マイナンバーを未提出の被保険者の場合、住民基本台帳ネットワークシステムの情報を参考にデータ入力するとしている。だが、この運用は、マイナンバーの取得は厳格な本人確認が必要との原則に反しているのではないか。
住基ネットには、氏名・住所・生年月日・性別の4情報が揃っているが、誤登録は一部の情報のみで登録したことで起こった。自治体では、これまでも税金滞納者と同姓同名の別人の口座を差し押さえるミスなどが繰り返し起きており、氏名と生年月日など一部の情報だけで紐づけることがいかに危険か、なぜ伝わっていなかったのか、運用の仕方に問題がある。
――誤登録を防ぐには
榎並氏 対面で直接マイナンバーカードを確認するのが一番。マイナンバーの12桁の下1桁は「チェックデジット」と呼ばれる入力や読み取りの誤りを検出するための数字が付与されている。カードの裏面のQRコードを読み取れば、番号入力のミスはない。
――国内の病院を狙ったサイバー攻撃が相次いでおり、情報漏洩への懸念も根強い
榎並氏 住基ネットを作ったときは情報漏洩を理由に反対の声も上がったが、実際に漏洩は起きていない。きちんと運用・管理していれば、問題は起きない。
セキュリティーにお金を出したくない、人を増やしたくない、とデジタル技術を軽視する経営者もいるが、今の時代はデジタル技術が支えているのだという意識で人やお金をかけなければならない。一番重要なのは、組織のガバナンスであり、トップの意識改革が必要だ
――マイナンバーやマイナ保険証については誤解も多く、国民に正しく伝わっていない面もある
榎並氏 マイナカードのICチップ内のシリアル番号は民間利用でき、法規制もないが、マイナンバーと紐づいていると誤解している人も多く、複雑さが信頼を失うことにもつながっている。国民にとって分かりやすくシンプルな仕組みに再構築するなど、見直しの議論も必要ではないか。マイナ保険証についても、申請が困難な高齢者の問題など、課題については丁寧に対応してほしい(聞き手 本江希望)