「東急歌舞伎町タワー」が4月にオープンしたばかりの歌舞伎町。この向かいの「シネシティ広場」が、いわゆる「トー横」と呼ばれる場所だ。近年、ここに集まる若者は「トー横キッズ」と言われていた。その「トー横キッズ」の中で、かつて“トー横四天王”の異名を持った八重樫海渡容疑者(22)が、5月17日までに都の青少年健全育成条例違反容疑で逮捕された。八重樫容疑者は昨年7月、当時17歳の高校生だった少女に対して歌舞伎町のホテルで淫らな行為をした疑いが持たれている。
八重樫容疑者には同種の前科があり、今回の逮捕は4度目だ。昨年3月には東京地裁で懲役2年6か月、執行猶予4年の判決が言い渡され、執行猶予期間中だった。この裁判のとき八重樫容疑者は「もうしません」と語り、「両親とともに暮らしたい」と実家のある岩手で暮らすことを約束していた。
前回の裁判で八重樫容疑者は、東京都青少年健全育成条例違反のほか、傷害、児童買春・児童ポルノ法違反で起訴されていた。18歳未満の少女らと性交し、一部はその様子を撮影。ひとりの女性に対して暴力を振るい、加療138日の多発骨折という怪我を負わせていた。
「自分が関係持つ人……ファッションスタイルは、量産型とか……歌舞伎町で流行ってる格好している人が好きでした、そういう人が年齢的には……」
2022年2月の被告人質問で、少女との淫行について問われ、こう答えた八重樫容疑者の声は小さく、語尾は全く聞こえなかったが、好みの外見の女性が、たまたま18歳以下だっただけで、少女を狙ったわけではないと言いたいようだ。黒のロンTにグレーのスウェット、伸びた髪で顔は隠れ、表情は見えない。証言はぼそぼそと聞き取りづらい。
傷害の被害女性に対しては、交際相手をめぐるトラブルのため、足が出たと証言していた。そこで弁護人は、八重樫容疑者がサッカー経験者だったことを持ち出し、こう語ったのだった。
弁護人「どうもあなた、しゃがんでる相手を蹴ってる。あなたサッカーやってたんですよね。しかも女性を本気で蹴った。大ごとになるとは思わなかった?」
八重樫容疑者「頭の中、考えることできなかった……」
裁判では、今後の更生のための行動も問われていた八重樫容疑者。トー横に近寄らないよう、実家の岩手に帰り、両親の監督のもとで暮らすことや、トー横で出会った人たちと連絡を断つためにSNSのアカウントを削除するとも述べていた。
しかし、それ以前に起こした事件の舞台も、やはりトー横だった。約束が守られるのかと、検察官は厳しく確認した。
検察官「前回の事件もトー横で、罰金刑の判決を受けましたね。今回もトー横。普通ね、トラブルになるとその場所に近づかないのが普通だと思うんですけど、なぜ今回も?」
八重樫容疑者「行かないという発想はそのときなかった。悪いという認識乏しかった……。あ、ほんとに、自分に対して甘かったなと」
検察官「罰金刑の判決受けたのに、悪いことじゃないと思ってたんですか?」
八重樫容疑者「当時はそう思ってました。交際相手を誘拐したことで罰金刑になって腹が立ってました」
検察官「処罰に納得してなかったんですね」
八重樫容疑者「はい」
検察官からは論告で「2021年5月には淫行で罰金刑の判決を受けたにもかかわらず性欲の赴くままに本件犯行に及んだ。酌量の余地はない。繰り返し淫行、児童ポルノの製造を行なっており常習性が高い。処罰に懲りない被告人は再犯の可能性が高い」と指摘されている。翌3月には懲役2年6月執行猶予4年の判決が言い渡されていた。
「未成年を対象にすること、間違っている。未成年との繋がり、関わり、避けていくつもりです」とも述べていた八重樫容疑者だったが、執行猶予判決後、両親のいる岩手から東京に舞い戻り、再び未成年と関わって、今回の逮捕となった。現時点で「女の子のことは知らない」と容疑を否認しており、起訴されるかどうかは不明だが、少なくとも、昨年の裁判で八重樫容疑者が掲げた約束は、守られていなかったようだ。
◆取材・文/高橋ユキ(フリーライター)