2年以上にわたって地震が頻発していた石川県珠洲(すず)市で5日昼に震度6強、夜に震度5強の強い地震が相次いだ。
午後10時時点で男性1人が死亡したほか、家屋の倒壊も相次ぎ、23人が負傷した。避難所に身を寄せた住民らは不安な夜を過ごし、大型連休を楽しんでいた観光客らからも動揺する声が上がった。
■公民館10か所開放
珠洲市は同日、市内全10か所の公民館を避難所として開放し、被災した住民らを受け入れた。同市正院町正院の正院公民館には、近隣住民ら約10人が避難した。小町康夫館長(68)によると、段ボール製の簡易ベッドや毛布のほか、水やアルファ米が用意され、住民らはテレビで最新の情報を確認しながら身を寄せ合っていた。
両親が避難し、家の片付けなどのため金沢市から駆けつけた男性(41)は「心配でいてもたってもいられずに車で来た。両親が無事でよかったが、実家は窓ガラスが割れ、部屋の中もめちゃくちゃだった」と表情を曇らせた。
■道の駅で車中泊も
突然の揺れは大型連休を能登半島で過ごしていた観光客も襲った。
珠洲市野々江町の道の駅「すずなり」は地震発生当時、40~50人ほどの客で混雑していた。揺れで商品が散乱したが、客は店外に避難し、けが人はいなかった。店で働く男性は、昨年6月に震度6弱を観測した地震と比較し、「今回は地割れが目立つ。昨年の地震とは被害の大きさが違った」と話した。
この道の駅の駐車場には、観光中に地震に巻き込まれて帰宅できなくなった観光客らが車中泊のために車を並べた。大阪府から家族と訪れた自営業の女性(65)は、現地で雨の予報が出ていることを踏まえて「移動は危ないと思ってとどまった。まさかこんなことになるとは」と途方に暮れた様子で話した。
■宿泊事業者、不安の声
大型連休中の地震に、周辺の宿泊事業者からも影響を不安視する声が相次いだ。
輪島市の輪島温泉宿泊業協同組合では地震発生直後、市内の民宿やホテルなど約20施設に安否確認を行い、被害は確認されなかった。
能登半島有数の温泉地、七尾市の和倉温泉では観光客の入り込みがピークに達していた。和倉温泉旅館協同組合の宮西直樹事務局長(49)は「今後の状況次第だが、地震の発生が相次げば、宿泊予約のキャンセルが増える可能性はある」と不安視する。
和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」では、6日以降のキャンセルが数件出始めているという。担当者は「日がたたないと分からないが、予約への影響を注視していく必要がある」と心配していた。