5月5日昼ごろ、規制線が張られた東京都台東区内の事件現場(写真・酒井よし彦)
5月5日午前、東京都台東区千束にあるソープランド「Y」の個室内で、女性従業員が30代の客に刺殺されるというショッキングな事件が起きた。警視庁浅草署の発表によると、女性は左首と右腹の計2カ所を刺され、腹部の刺し傷は内臓まで達しており、凶器とみられるサバイバルナイフはベッドの横に残されていたという。
風俗での「個室接客」の危険性があらためて浮き彫りになった形だが、このニュースに、都内の派遣型風俗(デリバリーヘルス)で働く女性(27)は「私もホテルの部屋で、お客さんとふたりきりになりますから、他人ごとではありません。これまでも、何度か恐怖を感じる体験をしました」と表情をくもらせる。
「私が働いているお店は、プレイ前にお客さんと男性従業員が対面でやり取りをする『受付型』ではなく、電話やメールで派遣依頼を受けるだけです。ホテルやお客さんの自宅で会うまでは、どんな方なのかまったく分かりません。
あきらかに薬物をキメていて、目の焦点が合っていないような人であれば、すぐに引き返します。こちらから『プレイに入ります』と電話をするまでは、(女性を運ぶ)ドライバーさんが近くにいますから。
怖いのは、プレイ中、知らない間に薬物を体に仕込まれてしまうことです。私の場合、男性自身に塗られたドラッグみたいなものを、知らずに舐めてしまったことがあります。すぐに顔と体がほてってしまい『あれ、なんか変だな』と思いましたが、明らかに薬物だとはわからなかったので、プレイは続けました。もっと異変を感じていたら、すぐに店から持たされている緊急ボタンを押したと思います。それを押すと、近くに待機しているドライバーさんの親機が鳴るんです。その件は警察には届けていませんが、店には報告して、(客の)電話番号をブラックリストにのせてもらいました。知り合いの女の子は、指で性器に薬物を入れられてしまったことがあるそうです」
この女性は幸い、刃物などで脅された経験はないというが、客に金銭を盗まれるケースもあるという。別のデリヘルに在籍する女性(25)が証言する。
「シャワー中が危険です。忙しくなると、事務所に戻る暇がないので、売上金を持ったまま、次のお客さんのところに行くこともあります。そのけっこうな額のお金を、シャワーを浴びている間にバッグから抜かれてしまうんです。
私は10万円を取られましたが、事務所に帰るまで気がつきませんでした。お店からは『念のため、お客さんと一緒にシャワーを浴びるように』と言われています」
さらにこの女性は「カメラや録音機で盗撮、盗聴されるのは日常茶飯事です。盗撮された映像がネットにさらされた女の子もいます」という。
店側は、どのように対処をしているのだろうか。
「店の近くで利用するお客さんには、指定のホテルを使ってもらうようにしています。そうすれば、フロントの方も気をつけてくれますから。以前は、お客さんか女性のどちらか一方が先にホテルを出ると、フロントから部屋に確認の電話がありましたが、最近は、何もなかったときお客さんにいやがられる、ということで、確認しないホテルも多くなっています」(デリヘル男子従業員)
密室で2人きりになるという行為は、想像以上に危険だ。