クレジットカードを利用できる店で、「現金払いに限り、値引きします」「現金払いのみポイントを倍増します」などと宣伝されることがあります。クレジットカード会社などに一定の手数料を支払わなければならないことから、店にとっては現金払いの方が利益を確保できる可能性がありますが、利用者にとっては不公平に感じることが多いのではないでしょうか。
クレジットカードの利用が可能なのにもかかわらず、店側が現金払いの客を優遇した場合、規約上問題はないのか、JCB(東京都港区)と、Visa(ビザ)の日本法人「ビザ・ワールドワイド・ジャパン」(東京都千代田区)に聞きました。
JCBの担当者に聞きました。
Q.クレジットカードの利用が可能な店で、「現金払いに限り、値引きします」「現金払いのみポイントを倍増します」と宣伝されることがあります。加盟店のこうした行為は規約上、問題となるのでしょうか。
担当者「当社は、加盟店規約の『加盟店の義務、禁止行為等』において、クレジットカード利用における『差別的な取り扱い』を禁止しております。例えば、『現金払いとその他の決済手段で異なる金額を請求する』『カード利用の拒否』『他の支払い手段への誘導』などが差別的な取り扱いに該当すると判断しております。
『現金払いに限り、値引き』は、『決済手段で異なる金額を請求』に該当するため、加盟店規約の違反事例と判断することがあります。
一方、『現金払いのみポイント倍増』は、『カード利用における差別的な取り扱い』には該当せず、加盟店規約に違反しないと判断することがあります。なぜなら、加盟店さまは、自社独自の会員組織に加入しているお客さまにポイントサービスなどを提供していますが、このようなサービスは、現金払いを優遇しているわけではなく、その決済方法に応じて顧客にポイントを還元していると考えられるからです。
当社には、加盟店さまの独自サービスの運用方法や販売戦略などに意見をしたり、改善を促したりする権限はないと考えています。今回のようなケースは、状況を踏まえた上でその都度判断する必要があるため、『現金払いに限り、値引き』は規約違反、『現金払いのみポイント倍増』は規約違反ではないとは、一概には言えません」
Q.もし規約上問題となる行為があった場合、加盟店に対してどのように対処をするのでしょうか。場合によっては、契約解除となるケースもあるのでしょうか。
担当者「加盟店さまにおいて、クレジットカードの差別的な取り扱いの事実が判明した場合、当該加盟店さまに対して是正指導を行っています。是正を行った後も、当該加盟店さまによる規約違反が続き、改善されない場合は、当該加盟店さまとの契約を解除することもあります」
Q.店が「現金払いに限り、値引きします」と宣伝するなど、規約違反が疑われるケースに遭遇した場合、クレジットカードの利用者はどのように対処すればよいのでしょうか。
担当者「クレジットカードの利用者さまが加盟店規約の違反が疑われるような行為を確認した場合、カード裏面に記載のカード発行会社までご連絡いただくよう、ご案内をしております。当社が当該加盟店さまに事実確認を行い、違反が確認された場合は是正指導します」
続いて、ビザ・ワールドワイド・ジャパンの担当者に聞きました。
Q.クレジットカードの利用が可能な店で、「現金払いに限り、値引きします」「現金払いのみポイントを倍増します」と宣伝されることがあります。加盟店のこうした行為は規約上、問題となるのでしょうか。
担当者「Visaは、Visaカードを発行するカード発行会社と、Visaの加盟店を管理する加盟店管理会社に対して、『Visa』というブランドを提供し管理しており、カードを発行したり加盟店を獲得したりはしていません。従って、クレジットカード会社ではなく、カードブランドとして回答させていただきます。
Visa自身は、Visa加盟店を直接管理していないため、加盟店におけるサービス提供に関するご質問などについては、お受けすることができません。
Visaとしては、購入代金の支払いにVisaカードが使用された場合、ルール上、Visaカードでの支払いを理由に、加盟店がカード会員に追加料金を請求することを認めていません。ただ、各加盟店が、法令に従って現金利用者に割引を行うことは制限していません」
店側がクレジットカードの利用を拒否した場合は、規約違反の可能性がありますが、現金払いの客に対する値引きやポイント倍増については、ケース・バイ・ケースのようです。