史上最年少の26歳で芦屋市長に当選した高島崚輔氏。エリート街道をまい進した経歴と爽やかなルックスで話題を集めたが、選挙戦では知られざる「もう一つの顔」を見せていた。
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【写真を見る】地元で苦情が噴出した「覆面ポスター」 高島氏は日本屈指の難関校・灘中高から東京大学文科一類に入学するも中退し、米ハーバード大学に進学。在学中にNPO法人の代表理事に就任し若者の留学支援を行っていたが、2019年の休学中に芦屋市役所でインターンシップを3カ月間経験した際、街の魅力や問題点似気付いた。昨年5月に大学を卒業し、満を持して選挙戦に挑んだわけである。

当選後、各メディアは一様に清廉潔白で頭脳明晰、しがらみのない新市長だと言わんばかりに報じてきた。そうした点に市民が期待したのは言うまでもないが、実は選挙戦で、高島氏が“戦略家”として「もう一つの顔」をのぞかせていたことはほとんど知られていないようだ。好感度は抜群?「それこそ一軒家の塀とか喫茶店の入口とか、芦屋のいたるところにポスターが張られていましたよ」 そう振り返るのは、さる市政関係者だ。「選挙管理委員会に定められたポスター掲示板は、市内に152カ所あったんですが、それを超える勢いで張ってありましたから、対立陣営の支持者から選管に“選挙違反じゃないか”との訴えが相次ぎました。担当者は“芦屋の市長選では過去に例がなく、違反かどうか分からない。調べます”という反応だったそうです」隠されたメッセージ 公職選挙法を熟知しているはずの選管が当惑したのもうなずける。なぜなら、市内に多数張られた高島氏のポスターは、掲示板に張られた選挙用のモノとは大きく異なっていたのだ。 さる地元市議によれば、「件のポスターは2種類で、一つは高島氏の弟さんの顔写真と名前がデザインされたもの。もう一つは、高島氏と思しき人物のシルエットとQRコードがデザインされていた。この二つは大概セットで目立つように張られていたね」 一つめのポスターをよく見ると、〈ワンチーム芦屋 代表 高島しゅうすけ〉という表記があるが、ここに隠されたメッセージがあるという。「候補者本人の名前は『りょうすけ』で、弟さんは『しゅうすけ』と2文字違い。有権者に『高島』の名前を印象付ける狙いがあったのでは。もう一つのシルエットが描かれたポスターはもっと露骨で、QRコードをスマホで読み取れば、高島氏の公式サイトに誘導される仕組みでした」(同)兵庫県選管に確認すると… 公職選挙法では、候補者本人を類推させる文書図画は、指定場所の公設掲示板以外に掲示してはならないと定められている。こうした規制が無ければ、豊富な資金力やマンパワーを誇る候補が掲示物を乱立させ知名度の面で有利となり、選挙の公平性が保てなくなるからだ。 兵庫県選管に確認すると、「ポスターから特定の候補者氏名が類推されるかどうかという観点で考えれば、今回のケースは2種類セットで張られていても、あくまで〈ワンチーム芦屋〉の代表者の名前やシルエットが印刷されているだけで、候補者本人の名前が書かれているわけではありません。QRコードについても、それだけでは候補者本人を類推できないとした前例がありますので……」 選管の用意した掲示板以外の場所への張り出しについても尋ねたところ、「弟さんが代表を務める〈ワンチーム芦屋〉は、地元選管で確認団体としての申請が認められているので、選挙期間中でも千枚までなど、公選法上で定められた条件の下で掲示することが可能です」(同) 他の候補者や有権者の度肝を抜いたポスター作戦は、明確に公選法違反とはいえないというわけなのだ。これをルールの間隙を縫った高度な戦略と捉えるべきかどうかは、見方が分かれるところかもしれない。 政治資金オンブズマン共同代表で、神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏が言う。「選挙プランナーが助言した可能性が高いと思います。大量のポスターを作製し張り出すなど、通常の選挙戦では相当な費用がかかるのでやりません。公選法に基づき選挙運動費用の上限は決まっていますから、規定以上に使う場合は政治団体が行ったことにします。バックに相当な資金を持った組織があると考えていいのでは」 5月10日発売の「週刊新潮」では、実は自民党員であることを隠していた巧みな選挙戦略、記事録をつけているという「高学歴3兄弟」の家族会議などについて詳報する。「週刊新潮」2023年5月18日号 掲載
高島氏は日本屈指の難関校・灘中高から東京大学文科一類に入学するも中退し、米ハーバード大学に進学。在学中にNPO法人の代表理事に就任し若者の留学支援を行っていたが、2019年の休学中に芦屋市役所でインターンシップを3カ月間経験した際、街の魅力や問題点似気付いた。昨年5月に大学を卒業し、満を持して選挙戦に挑んだわけである。
当選後、各メディアは一様に清廉潔白で頭脳明晰、しがらみのない新市長だと言わんばかりに報じてきた。そうした点に市民が期待したのは言うまでもないが、実は選挙戦で、高島氏が“戦略家”として「もう一つの顔」をのぞかせていたことはほとんど知られていないようだ。
「それこそ一軒家の塀とか喫茶店の入口とか、芦屋のいたるところにポスターが張られていましたよ」
そう振り返るのは、さる市政関係者だ。
「選挙管理委員会に定められたポスター掲示板は、市内に152カ所あったんですが、それを超える勢いで張ってありましたから、対立陣営の支持者から選管に“選挙違反じゃないか”との訴えが相次ぎました。担当者は“芦屋の市長選では過去に例がなく、違反かどうか分からない。調べます”という反応だったそうです」
公職選挙法を熟知しているはずの選管が当惑したのもうなずける。なぜなら、市内に多数張られた高島氏のポスターは、掲示板に張られた選挙用のモノとは大きく異なっていたのだ。
さる地元市議によれば、
「件のポスターは2種類で、一つは高島氏の弟さんの顔写真と名前がデザインされたもの。もう一つは、高島氏と思しき人物のシルエットとQRコードがデザインされていた。この二つは大概セットで目立つように張られていたね」
一つめのポスターをよく見ると、〈ワンチーム芦屋 代表 高島しゅうすけ〉という表記があるが、ここに隠されたメッセージがあるという。
「候補者本人の名前は『りょうすけ』で、弟さんは『しゅうすけ』と2文字違い。有権者に『高島』の名前を印象付ける狙いがあったのでは。もう一つのシルエットが描かれたポスターはもっと露骨で、QRコードをスマホで読み取れば、高島氏の公式サイトに誘導される仕組みでした」(同)
公職選挙法では、候補者本人を類推させる文書図画は、指定場所の公設掲示板以外に掲示してはならないと定められている。こうした規制が無ければ、豊富な資金力やマンパワーを誇る候補が掲示物を乱立させ知名度の面で有利となり、選挙の公平性が保てなくなるからだ。
兵庫県選管に確認すると、
「ポスターから特定の候補者氏名が類推されるかどうかという観点で考えれば、今回のケースは2種類セットで張られていても、あくまで〈ワンチーム芦屋〉の代表者の名前やシルエットが印刷されているだけで、候補者本人の名前が書かれているわけではありません。QRコードについても、それだけでは候補者本人を類推できないとした前例がありますので……」
選管の用意した掲示板以外の場所への張り出しについても尋ねたところ、
「弟さんが代表を務める〈ワンチーム芦屋〉は、地元選管で確認団体としての申請が認められているので、選挙期間中でも千枚までなど、公選法上で定められた条件の下で掲示することが可能です」(同)
他の候補者や有権者の度肝を抜いたポスター作戦は、明確に公選法違反とはいえないというわけなのだ。これをルールの間隙を縫った高度な戦略と捉えるべきかどうかは、見方が分かれるところかもしれない。
政治資金オンブズマン共同代表で、神戸学院大学法学部教授の上脇博之氏が言う。
「選挙プランナーが助言した可能性が高いと思います。大量のポスターを作製し張り出すなど、通常の選挙戦では相当な費用がかかるのでやりません。公選法に基づき選挙運動費用の上限は決まっていますから、規定以上に使う場合は政治団体が行ったことにします。バックに相当な資金を持った組織があると考えていいのでは」
5月10日発売の「週刊新潮」では、実は自民党員であることを隠していた巧みな選挙戦略、記事録をつけているという「高学歴3兄弟」の家族会議などについて詳報する。
「週刊新潮」2023年5月18日号 掲載