発達障害の認知度が年々高まっている。従来は子供の問題だと思われてきたが、実は一定数の割合で「大人にも発達障害の人がいる」という事実が知られるようになった。それによって「自分もそうかもしれない」と疑う人が増え、職場では混乱も起きているという。あなたの同僚や部下にもいるかもしれない、「大人の発達障害」の最前線を追った。◆発達障害の自称カウンセラーに要注意
発達障害の認知度上昇とともに、それに便乗した「発達障害ビジネス」とも呼べるような存在が増えている。消費者庁ではすでに「障がい者の消費行動と消費トラブルに関する調査」(平成29年)というリポートを公開。SNS上で起こる、金銭トラブルに警鐘を鳴らしている。
そんななか、近年目立ってきたのが、「発達障害カウンセラー」や「発達障害改善コーチ」を名乗る、自称専門家の存在だ。例えば、スキルシェア系のサービスには「1分数百円から悩み相談を受けます」といった募集が多く見られる。
◆カウンセラーには特別な資格が必要ない
もちろん「純粋に悩みを聞いてあげたい」という思いから募集している人が多いのだろうが、なかには「数千円で発達障害の親子に遠隔ヒーリングをします」といった募集もあり、実際に買い手がついているようだ。
「カウンセラーには特別な資格も必要ないので、誰でも名乗れる。そういった肩書を利用して発達障害の当事者や親御さんにつけ込もうとする人も多いので注意が必要です」
そう話すのは自身も自閉症の子供を持つ親であり、障害児教育に詳しい著述家の立石美津子氏だ。国家資格の公認心理師などの肩書がない時点で、疑問符がつくという。
◆数万人のファンを持つ専門家風アカウントも
「なかには勝手に『〇〇協会カウンセラー』と名称をつくって宣伝している人も見かけます。今ではSNSを使ってそれっぽく見せれば、誰でも専門家を装える。実際に私のフェイスブックにも、いかにも怪しい自称カウンセラーから、しつこく友達リクエストが届いています」
彼らの目的は、立石氏のような著名人から「お墨付き」を得ることだという。
「資格を持っていない方が『有料でセッションやカウンセリングをやりたいから、あなたのSNSでシェアしてください』と、リンク先をDMで送ってくるんです。しかもご丁寧に、私が書いたような紹介文まで添えて、『これをそのままシェアしてほしい』と。
なかには当事者の方や、発達障害を持っている家族がいる方からも連絡をいただきますが、個人の信用にもかかわるので、基本的にすべてお断りをしています」
◆まるでねずみ講のようなケースも…
SNSで「発達障害カウンセラー」と検索すれば相当数がヒットし、なかには数千~数万人のフォロワーを抱える人も多い。立石氏は「最初に無料カウンセリングを受けさせ、その後に高額のコーチングなど本命商品を購入させるケースも多い」と続ける。
「さらにひどいものだと、勝手に協会をつくり門下生を募るケースもあります。『私の認定を受けたら、あなたも私と同じ活動ができます』と勧誘する、まるでねずみ講ですよ。
そんな人に相談せず、まずは自治体の障害福祉課などに問い合わせたほうがいいです。信頼のおけるクリニックや福祉施設など、地域の相談窓口を紹介してくれます」
ネットで相談相手を探す前に、きちんとした専門医や自治体を頼るべきだろう。
【著述家・立石美津子氏】これまで20年間学習塾を経営。『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』(すばる舎)など著書多数
取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/菊竹 規 モデル/黒木俊穂