バスタイプの第1号モデル(東京)
特徴的なテーマソングを流しながら繁華街を爆走し、もはや日常風景の一部となっている、求人情報サイト「バニラ」の広告宣伝車、通称 「バニラカー」。そのバニラカーが、存亡の危機に立たされそうだ。
4月8日、読売新聞は、東京都がトラックの荷台に大型広告を掲示する「広告宣伝車」の規制を強化する方針を固めた、と報じている。
記事によると、広告宣伝車は、これまで都内ナンバーのもののみ、公益社団法人「東京屋外広告協会」のデザイン審査で承認が必要だったが、今後は審査対象を、都内を走行する全車両に拡大するという。
「風俗店などの宣伝車は都外のナンバーが多かったため、これまではこの条例で規制することができなかったのです。都に認めてもらうために審査に出すことになるでしょうが、審査基準は『公共空間にふさわしい』『人々に不快感を与えない』といったものです。キャバクラやホストなど、いわゆる“お水”関連のド派手な広告が認められる可能性は低いでしょう」(都政担当記者)
もちろん、バニラカーも例外ではない。本誌は2019年、バニラカーの“内部”を取材している。
軽トラから大型バスまで、その種類は豊富だが、じつはバニラカーはすべて、ひとりの職人の手で生まれている。
「中古トラックや路線バスを買い上げてから、バニラカーに仕上げるまで、約2カ月かかります」
匿名を条件に、その秘技を教えてくれたのは、“バニラカー職人” のX氏。
「制作だけでなく、メンテナンスも請け負っています。特殊な加工を施しておりますので、修理工場へ依頼するよりも、私が修理するほうが早いんです。
朝、車庫に出勤すると、塀越しに車両を撮影する人を見かけます。路線バスマニアの方々が、2次利用されるバスを見て、楽しんでいるようです。ラッピングする際に、あえて路線バスの名残りをとどめるなど、遊び心を加えているせいですかね。最近は、マニアの間で『魔改造士』と呼ばれています(笑)」
バニラカーの運転手も、根強いファンに出会うという。
「繁華街を走行中に、よく写メを撮られますよ。『明日はどこ走るの?』と尋ねる方もいます。
湘南の海岸沿いで信号待ちをしていると、テーマソングに合わせて、『バ~ニラ、バニラ』と、歌いながら踊りだす水着ギャルたちと遭遇しました。ほかの宣伝カーも運転しますが、こんな現象はバニラだけです」
そんな、なんともうらやましいエピソードを教えてくれたのは、運転手歴2年のО氏だ。
「苦労もあります。法定速度を守っているので、後ろからあおられることもあります。その都度、道を空けるなど、機敏に対応しています。
また、地域によって音量制限が異なるので、音量の調節や、学校、消防署、病院の前などではスピーカーをオフにするなど、近隣住民の方への配慮も欠かさずにおこなっています」(О氏)
今回の条例強化は、住民から多数の苦情が寄せられているためだという。“配慮”が足りなかったということか……。