東京・練馬の老舗遊園地『としまえん』が閉園してから2年半。その跡地にいよいよ6月16日、映画『ハリー・ポッター』の世界が体験できるエンターテインメント施設『ワーナー ブラザース スタジオツアー東京』がオープンする。
本誌はそのオープンに先駆け、上空から施設をドローンで撮影した。ジェットコースター「サイクロン」や「フライングパイレーツ」など、かつて遊園地のシンボルだったアトラクションがあった場所には、すべてを覆い尽くす巨大な白い建物が鎮座。建物の外には『ハリー・ポッター』の世界観にあったレンガ造りの小屋や、ハリーたちが物語の中で熱戦を繰り広げたチェス盤のようなものも見える。写真上部、「流れるプール」が有名だったプール跡は、都立公園として整備される予定だ。’21年の工事開始時には生い茂っていた木々も伐採され、きれいに整地されている様子が見て取れる。
『スタジオツアー東京』は3月に予約が開始されるとファンが殺到、サーバーがつながらなくなるなど世界中から注目を集めている。だが、もともとこのあたりは閑静な住宅街。「水と緑の遊園地」と謳い、木々が生い茂っていた『としまえん』は近隣住民の憩いの場として94年間にわたって愛されてきた。そんなのどかな地に突然、世界的エンタメ施設ができるというのだから、地元は混乱している。
「日本だけでなく、海外からも観光客が大勢押し寄せて来るかもしれない。そうなったらこの辺りはパンクしてしまいます。敷地内には大型のバスが50台入る駐車場が作られているそうですが、道幅も狭いので通れるのかどうか……渋滞になってしまうんじゃないかと心配です。最近になって施設の前の道だけ、歩道を狭くして道幅を広げる工事をしています。毎日夜中に工事していてうるさいし、風の強い日はホコリが舞って、苦情が出ていました」(近隣に住む70代の男性)
親の代からこの辺りに住むという40代の女性も、開園後の不安を口にする。
「『としまえん』の閉園後、この辺りは本当にゴーストタウンのようでした。オープンしたら活気が戻って来るんでしょうけど……。『としまえん』の頃とは違って、食事やお土産もこの施設の中だけで完結して、地元には恩恵がなさそうです。毎年楽しみにしていた桜の木も伐採されて少なくなってしまったんですよ。もしハリー・ポッターの運営が失敗したら、そのあとには自然もなくなって大型スーパーなどができるんじゃないかと心配しています」
東京都と練馬区、西武鉄道、『スタジオツアー』運営会社のワーナー、そして伊藤忠商事との間で取り決められた「都市計画練馬城址公園(『としまえん』跡地)の整備にかかる覚書」では、施設の設置期間について以下のように記されている。
「スタジオツアー施設等の設置可能期間は、運営開始日からの30年間とする」
2053年までに、『としまえん』のような地元から愛される施設になれるのだろうか――。

『FRIDAY』2023年4月14日号より