社会人になりたての若手時代は挫折がつきもの。どんなに優秀な人物でも、忘れられない失敗談を1つや2つ持っているはずです。しかし、会社を辞めるほどの強烈な“しくじり経験”は珍しいかもしれません。黒田正人(仮名・26歳)さんが当時の体験を振り返ってくれました。◆大変だと思うことは特になかった
黒田さんは都内の難関大学を卒業後、誰もが知るような大手企業に入社します。
「大学卒業後は、金融業界で働くことになりました。内定倍率が500倍ともいわれるような外資系企業を志望していたため、正直自信はありませんでしたが、無事就職できました。実際に働いてみても、大変だと思うことは特になかったですね。『新卒なのに仕事ができる』『論理的に考える力があって賢い』と褒めてもらったりして」
◆順風満帆だったはずが…
即戦力として、早い段階で会社に貢献していた黒田さん。社会人としての第一歩は、順風満帆な滑り出しと言えるでしょう。しかし、そううまくいかないのが人生というもの。思いもよらぬタイミングでつまずいてしまうことになります。
「いつもは上司と待ち合わせをしてから客先を訪問するのですが、スマホのグーグルマップの調子が悪くて集合時間に遅れそうになってしまい……。道に迷ったことを上司に伝えようと電話したのですが、ずっと通話中で繋がらずで。そうこうしている間にこのやり取りをしている時間が無駄に思えてきて。私がいなくても上司1人で客先回りはできるし……。そして、何を思ったかその時の私はそのまま家に帰ってしまったんです……。今思えば完全にヤバい奴です」
◆帰宅して仮眠していた
集合場所に間に合わなかった挙句、途中帰宅という暴挙に出て、なんと仮眠までとっていたそうです。勤務時間中にもかかわらず、呑気なことこの上ありません。しかし、当の本人はどこ吹く風で……。
「1時間ほど仮眠してから起きると、上司からの不在着信が数十件。そもそも上司が電話に出られなかったことが発端だったので、自分は悪くないと思い込んでいました。集合時間に辿り着けなかったことは棚に上げて……。一体どういうつもりだったのか、自分で自分を問いただしたいですよ……」
折り返した電話口ですぐに帰社する旨を伝え、何食わぬ顔で会社に戻ります。会社に着くと上司は激怒した面持ち。黒田さんから誠意のある謝罪を待っている様子でした。
◆退社して自分のヤバさに気づく
上司の怒りは収まらず、掴みかかられる寸前までいったそうです。周囲のとりなしもあって、なんとかその場は事なきを得ますが、黒田さんに反省の色は見えず、後に何度か同様の事態を招いてしまいます。もちろん、社内の評価はダダ下がりで、ほどなくして居場所がなくなり退職することになります。それにしても、なぜ常識的にアウトな行動を繰り返してしまったんでしょうか。
「むしろ連絡がつかない上司の方がしっかりすべきだと思い、どうして怒られなければいけないのか理解できませんでした。ヤバいですよね……。学生気分が抜けず、お客さん感覚でしたし、それまでの人生で大きな失敗を経験したことがなかったので、プライドが肥大化してとてつもなく扱いづらい存在になっていたんだと思います」
新卒で入社した会社を半ば追い出される形で退社してから、ようやく目が覚めたという黒田さん。不遜な態度を猛省し、生まれ変わることを決意。現在働く会社では問題なく働いています。今でもふとしたタイミングで当時のことを思い出すと、恥ずかしさのあまり赤面してしまうと、苦笑交じりで語っていました。
文/Honoka Yamasaki