ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」前後編の一部を公開します。(「文藝春秋 電子版」より)
【写真】この記事の写真を見る(6枚)◆◆◆「日本一予約が取りにくい」ゴルフ場 東京都江東区にある都立のゴルフ場「若洲ゴルフリンクス(GL)」で、利用希望者が集中する歳末の昨年12月29日、自民党東京都連青年部青年局の区議や都議を集めたゴルフコンペが開かれていた。 参加議員が取材に答えた。

「統一地方選に向け地元の会合があって気乗りはしなかったのですが、都連のグループLINEで『人が足りないから』といわれました。朝7時半から4人1組16人で回って、午後の最後はゲストルームで表彰式。もちろん、青年局長の山一輝先生もあいさつをしていました」若洲コルフリンクス 時事通信社. この若洲GLは「日本一予約が取りにくい」といわれる人気のゴルフ場だ。都立若洲海浜公園につくられた公共施設ながら、先着順で行われる予約受け付けは「10分間に80回(予約電話を)かけてもつながらない」と苦情が出るほどのパンク状態が常態化して、愛好者でも年に一度行けるかどうか、だという。 そんな大人気の公共レジャースポットを地元政治家が毎月のように利用していた疑惑が浮上している。詳しくは後述するが、年明けから都庁を揺るがす騒動になりながら、ここに至るまで内実がはっきりしない。事態を複雑にしているのは、その当事者が、統一地方選で5選をうかがうベテラン区長と都議の親子であることだ。 筆者は、その実態を解き明かすカギとなる2つの内部資料を入手した。若洲ゴルフリンクス人気の秘密 第一の資料は、「若洲ゴルフリンクスの利用実績」とタイトル書きされたメモ(以下、「(1)メモ」)だ。若洲GLの運営は、東京都港湾局所管の外郭団体「東京港埠頭株式会社」が行っており、港湾局か会社の職員が作成したと見られる。 右上に「取扱厳重注意」と書かれていて、まず、【実態】として次のように記されている。 R2年度 山崎孝明区長15回、山崎一輝議員10回(計25回) R3年度 山崎孝明区長14回、山崎一輝議員13回(計27回) R4年度 山崎孝明区長0回・山崎一輝議員15回(計15回) さらに【対応】として、「抽選制への移行」「体制見直し 現在予約業務を担っている担当者を異動」など、4項目を列挙している。最後は「※」として「山崎一輝議員への説明(これまでの予約慣行の見直し)については、別途検討」と続く。 この「利用実績」が事実なら、名指しされた2人は、異常なまでの高倍率の中を月に1度はすり抜けたことになる。この点を確かめる前に、若洲GLとはどのようなゴルフ場か、振り返っておきたい。 東京湾に注ぐ荒川右岸の河口先に、2つの人工島が南北に並んで伸びている。陸側(手前)は「夢の島」であり、その先が「若洲」だ。 有楽町線「新木場駅」が夢の島の中央あたりにあり、そこから若洲方面に向かうバスで5つ目が最寄りの停留所になる。「銀座一丁目」駅からなら所要時間は約30分。車なら首都高湾岸線を使って新木場ランプで降りてわずか15分で着く。 1990年に開場した全18ホールのコースは岡本綾子氏らが設計・監修した。島の先端だから3方向を海に囲まれている。東方に目をやると、左手に葛西臨海公園を視野に納めながら正面に東京ディズニーリゾート、南の方角には東京湾アクアラインの「海ほたる」を遠望できる。 なぜ、こんなところにゴルフ場があるのか。江東区ゴルフ連盟の澤井均理事長に話を聞いた。「1960~70年代にかけて埋め立てられたのが『新夢の島』と呼ばれたこの若洲です。23区内のゴミが搬入され、その上に今の都庁舎をつくるのに出た残土がかぶせられた」 迷惑施設受け入れの代替措置だが、当初は快適ではなかった。「オープン当初は悪臭もしたし、芝の下からはメタンガスが吹き出たものです。『禁煙・ライター使用禁止』なんて看板が立っていました。現在はガスを自然に抜く管を設置してあるので感じませんが、グリーンを直す工事をやって掘り返すと、やはり耐えがたい臭いがします」(同前) 若洲GLの公式サイトによれば、平日は10組、土日祝日は6組までコンペ予約が可能だ。予約は「コンペ開催予定月2ヶ月前の1日の午前10時より、予約専用電話で先着順に予定組数に達するまで受付いたします」。またコンペではなく、4人1組でのプレーなら「プレー日一ヶ月前の同日(プレー日と同じ日、同じ日がない場合は末日)の正午から24:00まで、1組ずつ先着順に予定組数に達するまでご予約を承ります」。プレーであれば、予約専用電話またはオンライン予約が可能だ。 3月中旬、筆者もネット予約を試みた。時報が正午を打った瞬間、予約対象日が出ると同時に、「しばらく待ってから再度アクセスしてください」の案内文が出た。クリック可能なリンクが出てくることは一度もないまま、「予約受付は終了しました」の表示に切り替わった。コンマ何秒間に勝負は終わっているようなのだ。 若洲GLを愛好する40代の男性は「希望しても年に1度も予約できない人がほとんどですよ」と口を尖らせた。「あの親子」だけは使っていたんです「実際、過去には、議員の立場を使って予約を取っていた都議は少なからずいました。都議会自民党の人たちですね。が、小池都政がスタートするにあたって襟を正すようになった。というより、取れなくなったんです。自民党に通じていると睨まれたら自分の身が危ないと感じた都の職員が『別枠予約』の手配を控えるようになって、都議側も『不便になったな』と言いつつ受け入れていました。ただ、『あの親子』だけは現在でも同じように使っていたんです。都議会自民党の人は皆、なんとなく知っていたのではないか」(都議会自民党に詳しい都庁関係者) 関係者が「あの親子」と名指しするのは、現在4期目の江東区長、山孝明氏(79)と、その息子、江東区選出の都議会議員、山一輝氏(50)だ。 自身のホームページなどによると、孝明氏は砂町の出身。早稲田大学を卒業したのち、そば店経営や衆議院議員秘書を経て83年に江東区議に当選して2期、都議を5期務めた後、2007年から江東区長に。3年前からは特別区長会会長にも選ばれた。昨秋、今年4月の区長選に5選を目指し出馬することを表明したが、有力な対抗馬は、元自民党衆議院議員の木村弥生氏だ。 都議時代、「都議会のドン」こと内田茂氏(昨年12月に死去)に近づいて頭角を現した孝明氏は、4期目で都議会自民党幹事長を任されたが、都政ではそこまで。「五輪招致議連の旗を振るなど石原知事に頼りにされた反面、議長や都連幹部への道は開かれず、区政に活路を見出したようです」(当時の都庁担当記者) 今回の区長選(4月23日投開票)でも、告示5日前の4月11日には、若洲GLを会場に「第2回山会長杯」が予定されている。 主催するのは、孝明区長が会長を務める江東区ゴルフ連盟である。 息子の一輝氏は野球の名門、東海大付属浦安高校野球部で2軍まで昇格するほどの高校球児だった。東海大学体育学部体育学科に進学するが、のちに中退。民間企業、父の秘書を経て2009年に都議に初当選した。 父子の地盤は強固で、小池旋風を前に自民党が歴史的大敗を喫した17年の都議選でも議席を死守。3年前には、3期目で都議会自民党幹事長、現在は自民党都連青年局長を任されている。「ゴルフはちゃんとやっていない」 この山親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。 ――メモの利用実績は事実ですか。 一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」 ――かなり頻繁に利用されているのでは? 一輝都議「利用実績は全く違います」 ――何回されているんですか。 一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」 ――それはプレーした回数ですね。 一輝都議「もちろんそうです」 ――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。 一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」 ――膀胱がんを患われた。 一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」 当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」 2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。◆ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(広野 真嗣/文藝春秋 電子版オリジナル)
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東京都江東区にある都立のゴルフ場「若洲ゴルフリンクス(GL)」で、利用希望者が集中する歳末の昨年12月29日、自民党東京都連青年部青年局の区議や都議を集めたゴルフコンペが開かれていた。
参加議員が取材に答えた。
「統一地方選に向け地元の会合があって気乗りはしなかったのですが、都連のグループLINEで『人が足りないから』といわれました。朝7時半から4人1組16人で回って、午後の最後はゲストルームで表彰式。もちろん、青年局長の山一輝先生もあいさつをしていました」
若洲コルフリンクス 時事通信社.
この若洲GLは「日本一予約が取りにくい」といわれる人気のゴルフ場だ。都立若洲海浜公園につくられた公共施設ながら、先着順で行われる予約受け付けは「10分間に80回(予約電話を)かけてもつながらない」と苦情が出るほどのパンク状態が常態化して、愛好者でも年に一度行けるかどうか、だという。
そんな大人気の公共レジャースポットを地元政治家が毎月のように利用していた疑惑が浮上している。詳しくは後述するが、年明けから都庁を揺るがす騒動になりながら、ここに至るまで内実がはっきりしない。事態を複雑にしているのは、その当事者が、統一地方選で5選をうかがうベテラン区長と都議の親子であることだ。
筆者は、その実態を解き明かすカギとなる2つの内部資料を入手した。
第一の資料は、「若洲ゴルフリンクスの利用実績」とタイトル書きされたメモ(以下、「(1)メモ」)だ。若洲GLの運営は、東京都港湾局所管の外郭団体「東京港埠頭株式会社」が行っており、港湾局か会社の職員が作成したと見られる。
右上に「取扱厳重注意」と書かれていて、まず、【実態】として次のように記されている。 R2年度 山崎孝明区長15回、山崎一輝議員10回(計25回) R3年度 山崎孝明区長14回、山崎一輝議員13回(計27回) R4年度 山崎孝明区長0回・山崎一輝議員15回(計15回) さらに【対応】として、「抽選制への移行」「体制見直し 現在予約業務を担っている担当者を異動」など、4項目を列挙している。最後は「※」として「山崎一輝議員への説明(これまでの予約慣行の見直し)については、別途検討」と続く。 この「利用実績」が事実なら、名指しされた2人は、異常なまでの高倍率の中を月に1度はすり抜けたことになる。この点を確かめる前に、若洲GLとはどのようなゴルフ場か、振り返っておきたい。 東京湾に注ぐ荒川右岸の河口先に、2つの人工島が南北に並んで伸びている。陸側(手前)は「夢の島」であり、その先が「若洲」だ。 有楽町線「新木場駅」が夢の島の中央あたりにあり、そこから若洲方面に向かうバスで5つ目が最寄りの停留所になる。「銀座一丁目」駅からなら所要時間は約30分。車なら首都高湾岸線を使って新木場ランプで降りてわずか15分で着く。 1990年に開場した全18ホールのコースは岡本綾子氏らが設計・監修した。島の先端だから3方向を海に囲まれている。東方に目をやると、左手に葛西臨海公園を視野に納めながら正面に東京ディズニーリゾート、南の方角には東京湾アクアラインの「海ほたる」を遠望できる。 なぜ、こんなところにゴルフ場があるのか。江東区ゴルフ連盟の澤井均理事長に話を聞いた。「1960~70年代にかけて埋め立てられたのが『新夢の島』と呼ばれたこの若洲です。23区内のゴミが搬入され、その上に今の都庁舎をつくるのに出た残土がかぶせられた」 迷惑施設受け入れの代替措置だが、当初は快適ではなかった。「オープン当初は悪臭もしたし、芝の下からはメタンガスが吹き出たものです。『禁煙・ライター使用禁止』なんて看板が立っていました。現在はガスを自然に抜く管を設置してあるので感じませんが、グリーンを直す工事をやって掘り返すと、やはり耐えがたい臭いがします」(同前) 若洲GLの公式サイトによれば、平日は10組、土日祝日は6組までコンペ予約が可能だ。予約は「コンペ開催予定月2ヶ月前の1日の午前10時より、予約専用電話で先着順に予定組数に達するまで受付いたします」。またコンペではなく、4人1組でのプレーなら「プレー日一ヶ月前の同日(プレー日と同じ日、同じ日がない場合は末日)の正午から24:00まで、1組ずつ先着順に予定組数に達するまでご予約を承ります」。プレーであれば、予約専用電話またはオンライン予約が可能だ。 3月中旬、筆者もネット予約を試みた。時報が正午を打った瞬間、予約対象日が出ると同時に、「しばらく待ってから再度アクセスしてください」の案内文が出た。クリック可能なリンクが出てくることは一度もないまま、「予約受付は終了しました」の表示に切り替わった。コンマ何秒間に勝負は終わっているようなのだ。 若洲GLを愛好する40代の男性は「希望しても年に1度も予約できない人がほとんどですよ」と口を尖らせた。「あの親子」だけは使っていたんです「実際、過去には、議員の立場を使って予約を取っていた都議は少なからずいました。都議会自民党の人たちですね。が、小池都政がスタートするにあたって襟を正すようになった。というより、取れなくなったんです。自民党に通じていると睨まれたら自分の身が危ないと感じた都の職員が『別枠予約』の手配を控えるようになって、都議側も『不便になったな』と言いつつ受け入れていました。ただ、『あの親子』だけは現在でも同じように使っていたんです。都議会自民党の人は皆、なんとなく知っていたのではないか」(都議会自民党に詳しい都庁関係者) 関係者が「あの親子」と名指しするのは、現在4期目の江東区長、山孝明氏(79)と、その息子、江東区選出の都議会議員、山一輝氏(50)だ。 自身のホームページなどによると、孝明氏は砂町の出身。早稲田大学を卒業したのち、そば店経営や衆議院議員秘書を経て83年に江東区議に当選して2期、都議を5期務めた後、2007年から江東区長に。3年前からは特別区長会会長にも選ばれた。昨秋、今年4月の区長選に5選を目指し出馬することを表明したが、有力な対抗馬は、元自民党衆議院議員の木村弥生氏だ。 都議時代、「都議会のドン」こと内田茂氏(昨年12月に死去)に近づいて頭角を現した孝明氏は、4期目で都議会自民党幹事長を任されたが、都政ではそこまで。「五輪招致議連の旗を振るなど石原知事に頼りにされた反面、議長や都連幹部への道は開かれず、区政に活路を見出したようです」(当時の都庁担当記者) 今回の区長選(4月23日投開票)でも、告示5日前の4月11日には、若洲GLを会場に「第2回山会長杯」が予定されている。 主催するのは、孝明区長が会長を務める江東区ゴルフ連盟である。 息子の一輝氏は野球の名門、東海大付属浦安高校野球部で2軍まで昇格するほどの高校球児だった。東海大学体育学部体育学科に進学するが、のちに中退。民間企業、父の秘書を経て2009年に都議に初当選した。 父子の地盤は強固で、小池旋風を前に自民党が歴史的大敗を喫した17年の都議選でも議席を死守。3年前には、3期目で都議会自民党幹事長、現在は自民党都連青年局長を任されている。「ゴルフはちゃんとやっていない」 この山親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。 ――メモの利用実績は事実ですか。 一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」 ――かなり頻繁に利用されているのでは? 一輝都議「利用実績は全く違います」 ――何回されているんですか。 一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」 ――それはプレーした回数ですね。 一輝都議「もちろんそうです」 ――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。 一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」 ――膀胱がんを患われた。 一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」 当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」 2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。◆ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(広野 真嗣/文藝春秋 電子版オリジナル)
右上に「取扱厳重注意」と書かれていて、まず、【実態】として次のように記されている。
R2年度 山崎孝明区長15回、山崎一輝議員10回(計25回) R3年度 山崎孝明区長14回、山崎一輝議員13回(計27回) R4年度 山崎孝明区長0回・山崎一輝議員15回(計15回)
さらに【対応】として、「抽選制への移行」「体制見直し 現在予約業務を担っている担当者を異動」など、4項目を列挙している。最後は「※」として「山崎一輝議員への説明(これまでの予約慣行の見直し)については、別途検討」と続く。 この「利用実績」が事実なら、名指しされた2人は、異常なまでの高倍率の中を月に1度はすり抜けたことになる。この点を確かめる前に、若洲GLとはどのようなゴルフ場か、振り返っておきたい。 東京湾に注ぐ荒川右岸の河口先に、2つの人工島が南北に並んで伸びている。陸側(手前)は「夢の島」であり、その先が「若洲」だ。 有楽町線「新木場駅」が夢の島の中央あたりにあり、そこから若洲方面に向かうバスで5つ目が最寄りの停留所になる。「銀座一丁目」駅からなら所要時間は約30分。車なら首都高湾岸線を使って新木場ランプで降りてわずか15分で着く。 1990年に開場した全18ホールのコースは岡本綾子氏らが設計・監修した。島の先端だから3方向を海に囲まれている。東方に目をやると、左手に葛西臨海公園を視野に納めながら正面に東京ディズニーリゾート、南の方角には東京湾アクアラインの「海ほたる」を遠望できる。 なぜ、こんなところにゴルフ場があるのか。江東区ゴルフ連盟の澤井均理事長に話を聞いた。「1960~70年代にかけて埋め立てられたのが『新夢の島』と呼ばれたこの若洲です。23区内のゴミが搬入され、その上に今の都庁舎をつくるのに出た残土がかぶせられた」 迷惑施設受け入れの代替措置だが、当初は快適ではなかった。「オープン当初は悪臭もしたし、芝の下からはメタンガスが吹き出たものです。『禁煙・ライター使用禁止』なんて看板が立っていました。現在はガスを自然に抜く管を設置してあるので感じませんが、グリーンを直す工事をやって掘り返すと、やはり耐えがたい臭いがします」(同前) 若洲GLの公式サイトによれば、平日は10組、土日祝日は6組までコンペ予約が可能だ。予約は「コンペ開催予定月2ヶ月前の1日の午前10時より、予約専用電話で先着順に予定組数に達するまで受付いたします」。またコンペではなく、4人1組でのプレーなら「プレー日一ヶ月前の同日(プレー日と同じ日、同じ日がない場合は末日)の正午から24:00まで、1組ずつ先着順に予定組数に達するまでご予約を承ります」。プレーであれば、予約専用電話またはオンライン予約が可能だ。 3月中旬、筆者もネット予約を試みた。時報が正午を打った瞬間、予約対象日が出ると同時に、「しばらく待ってから再度アクセスしてください」の案内文が出た。クリック可能なリンクが出てくることは一度もないまま、「予約受付は終了しました」の表示に切り替わった。コンマ何秒間に勝負は終わっているようなのだ。 若洲GLを愛好する40代の男性は「希望しても年に1度も予約できない人がほとんどですよ」と口を尖らせた。「あの親子」だけは使っていたんです「実際、過去には、議員の立場を使って予約を取っていた都議は少なからずいました。都議会自民党の人たちですね。が、小池都政がスタートするにあたって襟を正すようになった。というより、取れなくなったんです。自民党に通じていると睨まれたら自分の身が危ないと感じた都の職員が『別枠予約』の手配を控えるようになって、都議側も『不便になったな』と言いつつ受け入れていました。ただ、『あの親子』だけは現在でも同じように使っていたんです。都議会自民党の人は皆、なんとなく知っていたのではないか」(都議会自民党に詳しい都庁関係者) 関係者が「あの親子」と名指しするのは、現在4期目の江東区長、山孝明氏(79)と、その息子、江東区選出の都議会議員、山一輝氏(50)だ。 自身のホームページなどによると、孝明氏は砂町の出身。早稲田大学を卒業したのち、そば店経営や衆議院議員秘書を経て83年に江東区議に当選して2期、都議を5期務めた後、2007年から江東区長に。3年前からは特別区長会会長にも選ばれた。昨秋、今年4月の区長選に5選を目指し出馬することを表明したが、有力な対抗馬は、元自民党衆議院議員の木村弥生氏だ。 都議時代、「都議会のドン」こと内田茂氏(昨年12月に死去)に近づいて頭角を現した孝明氏は、4期目で都議会自民党幹事長を任されたが、都政ではそこまで。「五輪招致議連の旗を振るなど石原知事に頼りにされた反面、議長や都連幹部への道は開かれず、区政に活路を見出したようです」(当時の都庁担当記者) 今回の区長選(4月23日投開票)でも、告示5日前の4月11日には、若洲GLを会場に「第2回山会長杯」が予定されている。 主催するのは、孝明区長が会長を務める江東区ゴルフ連盟である。 息子の一輝氏は野球の名門、東海大付属浦安高校野球部で2軍まで昇格するほどの高校球児だった。東海大学体育学部体育学科に進学するが、のちに中退。民間企業、父の秘書を経て2009年に都議に初当選した。 父子の地盤は強固で、小池旋風を前に自民党が歴史的大敗を喫した17年の都議選でも議席を死守。3年前には、3期目で都議会自民党幹事長、現在は自民党都連青年局長を任されている。「ゴルフはちゃんとやっていない」 この山親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。 ――メモの利用実績は事実ですか。 一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」 ――かなり頻繁に利用されているのでは? 一輝都議「利用実績は全く違います」 ――何回されているんですか。 一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」 ――それはプレーした回数ですね。 一輝都議「もちろんそうです」 ――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。 一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」 ――膀胱がんを患われた。 一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」 当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」 2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。◆ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(広野 真嗣/文藝春秋 電子版オリジナル)
さらに【対応】として、「抽選制への移行」「体制見直し 現在予約業務を担っている担当者を異動」など、4項目を列挙している。最後は「※」として「山崎一輝議員への説明(これまでの予約慣行の見直し)については、別途検討」と続く。
この「利用実績」が事実なら、名指しされた2人は、異常なまでの高倍率の中を月に1度はすり抜けたことになる。この点を確かめる前に、若洲GLとはどのようなゴルフ場か、振り返っておきたい。
東京湾に注ぐ荒川右岸の河口先に、2つの人工島が南北に並んで伸びている。陸側(手前)は「夢の島」であり、その先が「若洲」だ。
有楽町線「新木場駅」が夢の島の中央あたりにあり、そこから若洲方面に向かうバスで5つ目が最寄りの停留所になる。「銀座一丁目」駅からなら所要時間は約30分。車なら首都高湾岸線を使って新木場ランプで降りてわずか15分で着く。
1990年に開場した全18ホールのコースは岡本綾子氏らが設計・監修した。島の先端だから3方向を海に囲まれている。東方に目をやると、左手に葛西臨海公園を視野に納めながら正面に東京ディズニーリゾート、南の方角には東京湾アクアラインの「海ほたる」を遠望できる。
なぜ、こんなところにゴルフ場があるのか。江東区ゴルフ連盟の澤井均理事長に話を聞いた。
「1960~70年代にかけて埋め立てられたのが『新夢の島』と呼ばれたこの若洲です。23区内のゴミが搬入され、その上に今の都庁舎をつくるのに出た残土がかぶせられた」 迷惑施設受け入れの代替措置だが、当初は快適ではなかった。「オープン当初は悪臭もしたし、芝の下からはメタンガスが吹き出たものです。『禁煙・ライター使用禁止』なんて看板が立っていました。現在はガスを自然に抜く管を設置してあるので感じませんが、グリーンを直す工事をやって掘り返すと、やはり耐えがたい臭いがします」(同前) 若洲GLの公式サイトによれば、平日は10組、土日祝日は6組までコンペ予約が可能だ。予約は「コンペ開催予定月2ヶ月前の1日の午前10時より、予約専用電話で先着順に予定組数に達するまで受付いたします」。またコンペではなく、4人1組でのプレーなら「プレー日一ヶ月前の同日(プレー日と同じ日、同じ日がない場合は末日)の正午から24:00まで、1組ずつ先着順に予定組数に達するまでご予約を承ります」。プレーであれば、予約専用電話またはオンライン予約が可能だ。 3月中旬、筆者もネット予約を試みた。時報が正午を打った瞬間、予約対象日が出ると同時に、「しばらく待ってから再度アクセスしてください」の案内文が出た。クリック可能なリンクが出てくることは一度もないまま、「予約受付は終了しました」の表示に切り替わった。コンマ何秒間に勝負は終わっているようなのだ。 若洲GLを愛好する40代の男性は「希望しても年に1度も予約できない人がほとんどですよ」と口を尖らせた。「あの親子」だけは使っていたんです「実際、過去には、議員の立場を使って予約を取っていた都議は少なからずいました。都議会自民党の人たちですね。が、小池都政がスタートするにあたって襟を正すようになった。というより、取れなくなったんです。自民党に通じていると睨まれたら自分の身が危ないと感じた都の職員が『別枠予約』の手配を控えるようになって、都議側も『不便になったな』と言いつつ受け入れていました。ただ、『あの親子』だけは現在でも同じように使っていたんです。都議会自民党の人は皆、なんとなく知っていたのではないか」(都議会自民党に詳しい都庁関係者) 関係者が「あの親子」と名指しするのは、現在4期目の江東区長、山孝明氏(79)と、その息子、江東区選出の都議会議員、山一輝氏(50)だ。 自身のホームページなどによると、孝明氏は砂町の出身。早稲田大学を卒業したのち、そば店経営や衆議院議員秘書を経て83年に江東区議に当選して2期、都議を5期務めた後、2007年から江東区長に。3年前からは特別区長会会長にも選ばれた。昨秋、今年4月の区長選に5選を目指し出馬することを表明したが、有力な対抗馬は、元自民党衆議院議員の木村弥生氏だ。 都議時代、「都議会のドン」こと内田茂氏(昨年12月に死去)に近づいて頭角を現した孝明氏は、4期目で都議会自民党幹事長を任されたが、都政ではそこまで。「五輪招致議連の旗を振るなど石原知事に頼りにされた反面、議長や都連幹部への道は開かれず、区政に活路を見出したようです」(当時の都庁担当記者) 今回の区長選(4月23日投開票)でも、告示5日前の4月11日には、若洲GLを会場に「第2回山会長杯」が予定されている。 主催するのは、孝明区長が会長を務める江東区ゴルフ連盟である。 息子の一輝氏は野球の名門、東海大付属浦安高校野球部で2軍まで昇格するほどの高校球児だった。東海大学体育学部体育学科に進学するが、のちに中退。民間企業、父の秘書を経て2009年に都議に初当選した。 父子の地盤は強固で、小池旋風を前に自民党が歴史的大敗を喫した17年の都議選でも議席を死守。3年前には、3期目で都議会自民党幹事長、現在は自民党都連青年局長を任されている。「ゴルフはちゃんとやっていない」 この山親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。 ――メモの利用実績は事実ですか。 一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」 ――かなり頻繁に利用されているのでは? 一輝都議「利用実績は全く違います」 ――何回されているんですか。 一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」 ――それはプレーした回数ですね。 一輝都議「もちろんそうです」 ――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。 一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」 ――膀胱がんを患われた。 一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」 当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」 2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。◆ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(広野 真嗣/文藝春秋 電子版オリジナル)
「1960~70年代にかけて埋め立てられたのが『新夢の島』と呼ばれたこの若洲です。23区内のゴミが搬入され、その上に今の都庁舎をつくるのに出た残土がかぶせられた」
迷惑施設受け入れの代替措置だが、当初は快適ではなかった。
「オープン当初は悪臭もしたし、芝の下からはメタンガスが吹き出たものです。『禁煙・ライター使用禁止』なんて看板が立っていました。現在はガスを自然に抜く管を設置してあるので感じませんが、グリーンを直す工事をやって掘り返すと、やはり耐えがたい臭いがします」(同前)
若洲GLの公式サイトによれば、平日は10組、土日祝日は6組までコンペ予約が可能だ。予約は「コンペ開催予定月2ヶ月前の1日の午前10時より、予約専用電話で先着順に予定組数に達するまで受付いたします」。またコンペではなく、4人1組でのプレーなら「プレー日一ヶ月前の同日(プレー日と同じ日、同じ日がない場合は末日)の正午から24:00まで、1組ずつ先着順に予定組数に達するまでご予約を承ります」。プレーであれば、予約専用電話またはオンライン予約が可能だ。
3月中旬、筆者もネット予約を試みた。時報が正午を打った瞬間、予約対象日が出ると同時に、「しばらく待ってから再度アクセスしてください」の案内文が出た。クリック可能なリンクが出てくることは一度もないまま、「予約受付は終了しました」の表示に切り替わった。コンマ何秒間に勝負は終わっているようなのだ。
若洲GLを愛好する40代の男性は「希望しても年に1度も予約できない人がほとんどですよ」と口を尖らせた。
「実際、過去には、議員の立場を使って予約を取っていた都議は少なからずいました。都議会自民党の人たちですね。が、小池都政がスタートするにあたって襟を正すようになった。というより、取れなくなったんです。自民党に通じていると睨まれたら自分の身が危ないと感じた都の職員が『別枠予約』の手配を控えるようになって、都議側も『不便になったな』と言いつつ受け入れていました。ただ、『あの親子』だけは現在でも同じように使っていたんです。都議会自民党の人は皆、なんとなく知っていたのではないか」(都議会自民党に詳しい都庁関係者)
関係者が「あの親子」と名指しするのは、現在4期目の江東区長、山孝明氏(79)と、その息子、江東区選出の都議会議員、山一輝氏(50)だ。
自身のホームページなどによると、孝明氏は砂町の出身。早稲田大学を卒業したのち、そば店経営や衆議院議員秘書を経て83年に江東区議に当選して2期、都議を5期務めた後、2007年から江東区長に。3年前からは特別区長会会長にも選ばれた。昨秋、今年4月の区長選に5選を目指し出馬することを表明したが、有力な対抗馬は、元自民党衆議院議員の木村弥生氏だ。
都議時代、「都議会のドン」こと内田茂氏(昨年12月に死去)に近づいて頭角を現した孝明氏は、4期目で都議会自民党幹事長を任されたが、都政ではそこまで。
「五輪招致議連の旗を振るなど石原知事に頼りにされた反面、議長や都連幹部への道は開かれず、区政に活路を見出したようです」(当時の都庁担当記者)
今回の区長選(4月23日投開票)でも、告示5日前の4月11日には、若洲GLを会場に「第2回山会長杯」が予定されている。
主催するのは、孝明区長が会長を務める江東区ゴルフ連盟である。
息子の一輝氏は野球の名門、東海大付属浦安高校野球部で2軍まで昇格するほどの高校球児だった。東海大学体育学部体育学科に進学するが、のちに中退。民間企業、父の秘書を経て2009年に都議に初当選した。 父子の地盤は強固で、小池旋風を前に自民党が歴史的大敗を喫した17年の都議選でも議席を死守。3年前には、3期目で都議会自民党幹事長、現在は自民党都連青年局長を任されている。「ゴルフはちゃんとやっていない」 この山親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。 ――メモの利用実績は事実ですか。 一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」 ――かなり頻繁に利用されているのでは? 一輝都議「利用実績は全く違います」 ――何回されているんですか。 一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」 ――それはプレーした回数ですね。 一輝都議「もちろんそうです」 ――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。 一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」 ――膀胱がんを患われた。 一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」 当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」 2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。◆ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(広野 真嗣/文藝春秋 電子版オリジナル)
息子の一輝氏は野球の名門、東海大付属浦安高校野球部で2軍まで昇格するほどの高校球児だった。東海大学体育学部体育学科に進学するが、のちに中退。民間企業、父の秘書を経て2009年に都議に初当選した。
父子の地盤は強固で、小池旋風を前に自民党が歴史的大敗を喫した17年の都議選でも議席を死守。3年前には、3期目で都議会自民党幹事長、現在は自民党都連青年局長を任されている。
「ゴルフはちゃんとやっていない」 この山親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。 ――メモの利用実績は事実ですか。 一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」 ――かなり頻繁に利用されているのでは? 一輝都議「利用実績は全く違います」 ――何回されているんですか。 一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」 ――それはプレーした回数ですね。 一輝都議「もちろんそうです」 ――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。 一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」 ――膀胱がんを患われた。 一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」 当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」 2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。◆ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(広野 真嗣/文藝春秋 電子版オリジナル)
この山親子は、(1)メモが記すように年に10回以上も若洲GLでゴルフをしていたのだろうか。事実確認のため、3月15日午前に質問状を送ると、2時間後、一輝都議と電話がつながった。
――メモの利用実績は事実ですか。
一輝都議「事実ではありません。別枠で予約? そうしたことは全くございません」
――かなり頻繁に利用されているのでは?
一輝都議「利用実績は全く違います」
――何回されているんですか。
一輝都議「えー、私としては、まあ、令和2年度は年に7回とか。その次の年が9回。その次の年は……何回だったかな。そこまで多くなかったと思いますが……」
――それはプレーした回数ですね。
一輝都議「もちろんそうです」
――先程、メモの数字は違うとお答えでしたが、口添えして(別の人の)予約を取った回数が含まれて取りまとめられたのではないですか。
一輝都議「いや、そういったものはないです。全然、全く、全く! ちなみに親父、区長は、若洲にかぎらずゴルフのプレー自体をがんになって以来、やっていませんので」
――膀胱がんを患われた。
一輝都議「それは3年前ですかね(筆者注・初期の膀胱がんで入院したのは5年前)。それからゴルフはやっていませんので。これは身内として、ゴルフは、ちゃんとやっていないという事実は伝えたいと思います」
当の孝明区長からは翌3月16日、書面で次の回答があった。
「(メモの数値について)そのような事実はありません。別枠で予約したという事実もありません。(山会長杯について)ゴルフ連盟の行事で、私の知るところではありません」
2人とも、(1)メモに書いてある利用実績は否定したが、一輝都議は、少なくとも年7回、9回のプレーをしていることを自ら認めた。それだけでも、一般の予約に苦しんでいる都民からすれば、不公平感をもよおす高い頻度である。

ノンフィクション作家・広野真嗣氏による「江東区長・東京都議親子の『都立ゴルフ場・若洲リンクス』“私物化”疑惑」全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
(広野 真嗣/文藝春秋 電子版オリジナル)