金沢市内の英語教室が行う民間の学童保育で、児童を逆さづりにしたり、定規で叩くなどの体罰が日常的に行われていたと保護者らが訴えている問題で、警察は教室の代表を務めていた20代の男性を暴行の疑いで20日に書類送検しました。体罰が判明してから9か月。ここまで時間を要した理由を考えます。

このニュースを配信したインターネットの各サイトでは、様々なコメントが寄せられました。例えば「言語道断。まっとうに事業をしている民間学童業界に対して悪評判を及ぼすだけ。」といった業界関係者の声や、「学童保育へ通う年齢の子たちが大人しく言う事を聞く子ばかりではないことは分かりそうなものでしょう」といった声などがありました。
そもそも、体罰について厚生労働省のガイドラインでは、「身体に何らかの苦痛を引き起こす、又は不快感を意図的にもたらす行為」としています。また、けががなかったとしても、叩いたり逆さ吊りにしたりする行為は、身体的虐待にあたるということです。その上で経緯を振り返ります。
きっかけは去年6月、児童からの体罰の報告でした。
保護者「怖かったと始めは言ってきていました。自分たちも静かにしていないとこうなるって思ったて言ったんです。」
取材を進めると、別の保護者も体罰があったと訴えていることが分かりました。
Q.体罰をしたのは誰ですか? 保護者「経営者です」
英語教室のホームページをたどると、学童保育を運営する男性は英語教室の代表と同一人物で、県内の高校を卒業後、2019年から英語を教えているとあります。子どもらは、この男性から「逆さ吊りにされる」「足や手を掴まれて引きずられる」「定規で叩かれる」「股間を足で踏まれる」…と言った行為を受けたと訴えています。

保護者の被害届を受け、警察は教室の代表を務めていた20代の男性を暴行の疑いで20日に書類送検しました。関係者によりますと、男性は去年7月、保護者に対し体罰があったことを認めた上で、「指導目的だった」などと釈明していましたが、その後、一転し体罰の事実を否定。
男性の弁護士は「頭をポンポン叩いたりはしたが、体罰に当たるような行為はしていない」としています。
今回の問題は、保護者への児童の証言がきっかけでしたが、子どもの証言に頼らざるを得ない状況もあり、立件されたのはわずか1件です。
保護者の一人は、書類送検に至ったものの、「難しさを感じている」と話し、別の保護者は逮捕に至らなかった点をあげて、「物足りない。今でも許せない気持ちでいっぱいです」と憤りを隠せない様子でした。
体罰が判明してから9か月。事実関係に食い違いが生じていますが、国は児童虐待に対応する相談ダイヤルとして近くの児童相談所に繋いでくれる番号189(いちはちきゅう)=「いちはやく」を設けています。しかし、取材に応じてくれた複数の保護者が、児童相談所や学童保育の業界団体、市役所や警察に相談したものの、納得できる対応はされなかったと話しています。

金沢市によりますと、児童相談所は児童虐待防止法に基づき、家庭内と里親施設などの福祉施設での事案を取り扱うため、今回の学童保育のような施設での体罰は対象外です。
さらに学童保育には市が委託する「児童クラブ」と、民間が独自に運営する学童保育の2種類があり、行政は委託した児童クラブ以外に指導監督の権限がないのが現状です。
市は今回の問題を受け、民間学童保育の利用を検討する保護者に対し、保育士や教員など子どもに携わる資格の有無や、料金について確認するようホームページを通じて求めるほか、トラブルがあった時には市への相談を呼び掛けています。
また保護者らは契約の不履行による代金の返還を英会話教室に求める訴訟の準備を進めています。